A-26 (航空機)

A-26 インベーダー：多用途双発攻撃機の詳細

A-26 インベーダー（Douglas A-26 Invader）は、アメリカ合衆国のダグラス社が開発した双発攻撃機です。アメリカ陸軍航空軍や空軍で運用され、その多用途性から様々な役割を担いました。愛称は「インベーダー (Invader)」、つまり侵略者を意味します。アメリカ海軍でもJD インベーダーとして運用されました。空軍では攻撃機枠の廃止に伴い軽爆撃機B-26 インベーダーに機種変更されましたが、その後再びA-26に戻されるという経緯を持っています。

設計と開発

A-26は、ダグラス社の前作であるA-20ハボック攻撃機の後継機として、1940年に設計が開始されました。A-20のバージョンアップ版として、2,000馬力級の大出力エンジンを搭載し、機体構造を見直すことで高性能化が図られました。また、DB-7（フランスに輸出されたA-20の制式名）がヨーロッパ戦線で得た戦訓も設計に反映されています。1941年4月にはモックアップが完成しましたが、実機製作に手間取り、試作機が工場をロールアウトしたのは1942年6月、生産開始は1943年9月、実戦部隊への配備は1944年春頃となりました。

アメリカ陸軍航空隊では、伝統的に攻撃機は副操縦士も操縦を行いますが、A-26は操縦士1名で運用される設計となりました。これは、イギリス空軍における同種の中型爆撃機が単操縦士式であり、長距離飛行や主操縦士が負傷した場合にしか活躍しない副操縦士は不要であるという戦訓を取り入れたためです。胴体後方には動力旋回機銃塔を操作する銃手席がありましたが、第二次世界大戦後には効果的ではないと判断され、上下の旋回機銃塔が外され、銃手席も撤去されて複座となりました。

当初、軍から要求されたA型は、機首をソリッドノーズとし、75mm砲を搭載した地上攻撃型でした。しかし、ダグラス社はこれに難色を示し、透明機首型の開発を継続するとともに、75mm砲と12.7mm機銃2挺、75mm砲と37mm砲、37mm砲2門、37mm砲と12.7mm機銃2〜4挺など、様々な武装が選択可能なプランを提示しました。これが後のB型となります。透明機首型はC型として完成し、ガラス張りの機首にノルデン爆撃照準器を装備し、中高度精密爆撃を可能としました。機首には前方固定の12.7mm機銃2挺が装備されましたが、ほとんどのC型はこれを取り外すか、あるいは未装備の状態で前線へ送られました。

防御火器はA、B、C各型共通で、胴体背面と爆弾倉後方の腹部に遠隔式の12.7mm連装動力機銃塔が設置されました。これは別個の目標をそれぞれ狙うことが可能で、背面の機銃塔はパイロットが操作する前方固定機銃としても使用可能でした。爆弾倉には1,000lbs (455kg) 爆弾4発、または魚雷2本、主翼下の左右二箇所ずつに500lbs (227kg) 爆弾を搭載可能でした。

B型は機首に前方固定の12.7mm機銃を6または8挺搭載し、一部の機体は翼内にも左右各3挺ずつ12.7mm機銃を増設し、最大合計14挺もの前方固定機銃を装備して地上攻撃に猛威を振るいました。後期型は翼下の[爆弾]]に替えて、左右7発ずつの5in航空機高速[[ロケット弾]が搭載可能になり、腹部銃塔を廃止し、空いた場所に473リットルの燃料タンクを増設して航続力増加を図りました。これらの改修はC型にも行われました。

運用

第二次世界大戦中に初飛行したA-26は、大戦後半の連合軍優勢の中、戦術爆撃に投入されました。日本本土空襲にも参加し、沖縄から南九州の爆撃に出撃しました。大戦終結後は余剰機がフランスなどの同盟国に供与されましたが、アメリカ軍も引き続き使用を継続しました。1948年には軍の機種区分の変更からB-26へ改名されましたが、1967年にA-26へ復名しました。アメリカ海軍でも標的曳航機など汎用目的に少数の飛行隊が運用され、1962年までJD-1やJD-1Dと呼称し、JD-1をUB-26J、JD-1DをDB-26Jに呼称を変えました。

A-26は第二次世界大戦だけでなく、第一次インドシナ戦争や朝鮮戦争にも攻撃機として投入されました。その後、B-26B、B-26Kがベトナム戦争に投入されました。ベトナム戦争に投入された機体は、COIN機としてエンジンの換装、電子装備の追加、旋回機銃塔の廃止、主翼の再設計と構造強化、翼下に兵装懸架用ハードポイントの新設、翼端に燃料槽の増設などの改修が施されました。全面改修を受けた機体は新たにB-26K型と呼ばれましたが、1967年にA-26Aと改称されました。

1960年代には、インターマウンテン・エアラインに所属するA-26がキューバの亡命者で編成された部隊によるピッグス湾上陸で使用されました。1964年にはコンゴ動乱の際に、CIAの傭兵が空輸にA-26を使用しました。

少数の改良機は1969年まで戦闘任務で使用され、最後のA-26は州兵局で1972年に退役し、国立航空宇宙博物館に贈与されました。A-26は、アメリカ軍の戦闘航空機で唯一、第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争の三つの戦争に参加した機体です。

各型

A-26には、様々な派生型が存在します。地上攻撃機型、爆撃機型、偵察機型、練習機型など、用途に応じた改修が施されました。また、アメリカ海軍でも標的曳航機や標的操作機として運用されました。各型の詳細については、以下の通りです。

XA-26：試作昼間爆撃機型
XA-26A：試作夜間戦闘機型
XA-26B：試作対地攻撃機型
A-26B / B-26B：対地攻撃機型
TA-26B / TB-26B：練習機型
VB-26B：要人輸送機型
A-26C / B-26C：軽爆撃機型
DB-26C：無人標的機母機型
FA-26C / RB-26C：写真偵察機型
TB-26C：練習機型
XA-26D：試作攻撃機型
XA-26E：試作攻撃機型
XA-26F：高速化試作機型
A-26Z：戦後生産型の仮称
TB-26H：練習機・飛行特性試験機型
XJD-1：米海軍へ移管された試験機
JD-1 / UB-26J：陸上多用途機
JD-1D / DB-26J：陸上標的操作機
YB-26K：軽攻撃機型
B-26K / A-26A：軽攻撃機型
RB-26L：夜間写真偵察機型
B-26N：フランス空軍の夜間戦闘機型

民間型

戦後、300機を超えるA-26が民間航空局に登録されました。要人輸送機、エアタンカー（消防機）、高速輸送機など、様々な用途に転用されました。また、タービンエンジンのテストベッドとしても使用されました。

スペック (A-26B-50)

乗員: 3名
全長: 15.24m
全高: 5.64m
翼幅: 21.34m
翼面積: 50.62m2
空虚重量: 10,365kg
運用時重量: 12,519kg
最大速度: 575km/h
航続距離: 2,300km
武装: 12.7mm機銃、ロケット弾、爆弾

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