An-225 (航空機)

An-225 ムリーヤ：世界最大の輸送機

An-225 ムリーヤ（ウクライナ語: Ан-225 Мрія）は、ソビエト連邦のアントノフ設計局によって開発された、6発エンジンの巨大輸送機です。「世界最大の飛行機」として知られ、その記録的な数値は航空史に名を刻んでいます。この機体は「史上最大の重航空機」、「史上最も重い航空機」、そして「史上最長の飛行機」としてもその名を馳せていました。

開発の背景

An-225は、1980年代後半のソ連で進められていた再使用型宇宙往還機「ブラン」の輸送を目的として開発されました。この巨大な機体は、ブランを背中に乗せて空を飛ぶという壮大な構想を実現するために誕生しました。同じくブラン輸送のために開発されたVM-T アトラントも存在します。

当初2機が製造される予定でしたが、完成したのは1機のみ。機体記号はUR-82060でした。ソ連時代には、An-225から宇宙船を打ち上げる計画も存在しました。

最大離陸重量は当初600トンでしたが、改修後は640トンに増加し、世界で最も重い航空機となりました。また、数々のギネス世界記録を保持しています。2016年には、アントノフ航空が中国企業に技術と設計図を移転する契約を交わしたと報じられましたが、アントノフ側は知的所有権の譲渡を否定しています。しかし、改良型An-225の中国への納入や、中国国内でのライセンス生産契約が締結されたことは事実です。

運用と歴史

An-225がブランを実際に搭載して飛行したのは一度きりで、その後、ソ連崩壊に伴い運用予算が打ち切られました。長らく放置されていた機体は、An-124やAn-70の部品取りとして利用され、スクラップ同然の状態でした。しかし、1999年にアントノフ航空がAn-124による超大型貨物輸送ビジネスで成功を収めたことを受け、An-225も商用機として復活することになりました。

改修を経て再就役したAn-225は、大型・大重量貨物の輸送に活躍しました。主にヨーロッパを中心とした大西洋方面で運用され、その巨体と輸送能力は世界中で注目を集めました。

日本への飛来

An-225は、日本へも複数回飛来しています。

2010年2月9日：ハイチ大地震の復興支援のために、重機類を輸送する目的で成田国際空港に初飛来。
2010年6月21日：テクニカルランディングで中部国際空港に飛来。
2011年3月中旬：東日本大震災の救援物資輸送のため、成田国際空港に飛来。東京電力・福島第一原子力発電所事故に対応するためのコンクリートポンプ車も輸送。
2020年：新型コロナウイルス感染症（COVID-19）関連の医療物資輸送のため、中部国際空港に複数回テクニカルランディング。

ロシア軍の攻撃と焼失

2022年2月、ロシアのウクライナ侵攻の中で、An-225はホストーメリ空港（アントノフ国際空港）に駐機中、ロシア軍の攻撃によって破壊されました。この出来事は世界中に衝撃を与え、An-225の復元を求める声が高まりました。ウクライナ政府は、将来的に機体を修復することを表明し、アントノフ社も国際基金設立を呼びかけました。しかし、2023年現在、機体の修復は困難な状況です。

2号機の存在

実は、An-225には未完成の2号機が存在します。2006年には完成させる計画が決定されましたが、資金不足により計画は放棄されました。しかし、2022年の破壊を受け、ウクライナ大統領は2号機の完成を発表しました。

機体構造と性能

An-225は、An-124をベースに開発され、胴体の延長、エンジン数の増加、主降着装置の強化などの変更が加えられています。機体後部の搬入口を廃止し、代わりに前脚を傾斜させて積載作業を支援する設計となっています。

機内

操縦室は、アナログ計器を中心とした伝統的な設計ですが、広々とした空間が確保されています。操縦席後方には、ギャレーや座席を備えた与圧区画があり、乗員や顧客を輸送することも可能です。

ペイロード

An-225の最大ペイロードは250トンで、これは他の輸送機を圧倒する数値です。機体上部にも250トンまでの貨物を搭載することが可能で、貨物室を旅客機に転用すれば、1500～2000人を収容できるほどの容積があります。

機動性

巨大な機体でありながら、An-225は高い機動性を誇ります。高出力エンジン、H字型尾翼、大型スラット、フラップなどの設計により、戦闘機並みの機動が可能と言われています。

世界記録

An-225は、最大離陸重量だけでなく、様々な世界記録を達成しています。2004年には、240もの世界記録がギネス世界記録に申請されました。

An-225は、全長84.0mで、長らく「史上最長の重航空機」および「史上最長の飛行機」でした。しかし、ストラトローンチの登場により、翼幅が世界一ではなくなりました。しかし、重量や揚力において、現在も「史上最大の航空機」としての地位を確立しています。

主要諸元

乗員：6名
全幅：88.74 m
全長：84.00 m
全高：18.10 m
空虚重量：285.000 t
最大離陸重量：640.000 t
最大搭載量：250.000 t
エンジン：ZMKB イーフチェンコ＝プロフレースD-18 ターボファン×6
最高速度：850 km/h
巡航速度：800 km/h
* 航続距離：15,400 km（貨物最大搭載時は4,000 km）

関連事象

An-225は、記念切手や硬貨のデザインにも採用されています。また、数々のコンピュータゲームや映画にも登場しており、その存在は世界中で広く知られています。

まとめ

An-225 ムリーヤは、その巨大さと比類なき輸送能力で、航空史に燦然と輝く存在でした。2022年の破壊は、世界中の航空ファンに悲しみをもたらしましたが、その偉業は決して忘れられることはないでしょう。2号機の完成と、いつの日かAn-225が再び空を飛ぶ姿を、多くの人々が待ち望んでいます。

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