COMAC C919

COMAC C919：中国初の国産ジェット旅客機

COMAC C919は、中国商用飛機（COMAC）が開発した168-190席のナローボディ機です。中国は、C919をエアバスA320neoシリーズやボーイング737MAXの競合機と位置づけ、長期的にはエアバスとボーイングによる複占を打破することを目指しています。

開発の経緯

C919の試験機製造は2009年9月に開始され、2015年11月にロールアウトしました。初飛行は2017年5月に行われ、成功を収めました。当初の予定では2016年に就航するはずでしたが、実際には2023年までずれ込みました。これは、1970年代に製造されたY-10以来となる中国最大の民間航空機プロジェクトであり、技術的な挑戦と国際的な規制への対応が求められたためです。

設計の特徴

C919の設計と組み立ては上海で行われ、当初は外国製のエンジンとアビオニクスを採用する予定でした。現在は、米仏合弁企業CFMインターナショナル製のLEAP-X1Cエンジンを搭載しています。将来的には、中国国産のCJ-1000Aエンジンの搭載も計画されています。機体の主要部品は中国各地で製造され、最終組み立ては上海で行われます。

C919の機体形状、寸法、主翼、尾翼、ドアや窓の配置はエアバスA320と類似しており、一般的な積み込み装置が利用可能です。胴体直径は幅が3.96m、高さが4.166mで、断面積は12.915m²とエアバスA320とほぼ同じです。翼幅は33.6mで、ウィングレット装着時には35.4mとなります。

コックピットは、エアバスA320と同じサイドスティックを採用しています。また、機体には3Dプリンターで製造されたチタン合金製の部品も使用されています。

C919には、標準型と長距離型の2種類の派生機種が計画されており、標準型の航続距離は4,075km、長距離型は5,555kmです。

型式証明と国際的な展開

当初、C919は中国国内専用機となる見込みでしたが、2017年に欧州航空安全機関（EASA）に型式証明を申請しました。中国民用航空局（CAAC）とEASAは、CAACの審査でEASAの一部を代用認証できることに合意しており、EASAはこの証明審査の認証を検証しています。EASAの認証を取得することで、C919は国際市場への参入が可能になります。

運用開始と今後の展望

C919は、2022年9月にCAACから型式証明を取得し、同年12月に中国東方航空に初号機が引き渡されました。2023年5月には、上海-北京間の主要路線で商業運航を開始しました。その後、上海-成都間でも定期便の運航を開始しています。2023年12月には香港、2024年2月にはシンガポール航空ショーでデモ飛行を行い、国際的なアピールを重ねています。

受注状況

C919は、ローンチカスタマーである中国東方航空をはじめ、中国の大手航空会社から多くの受注を獲得しています。また、ブルネイの航空会社Gallop AirもC919の発注を行っています。

技術的な課題と将来性

C919は、中国の航空機産業の発展を象徴する重要なプロジェクトです。しかし、国際的な航空機市場で競争するためには、技術的な成熟度を高め、国際的な安全基準を満たす必要があります。また、アメリカ商務省の輸出管理対象リスト入りなど、国際的な政治状況にも影響を受ける可能性があります。しかし、中国国内市場の成長と政府の強力な支援を背景に、C919は今後の航空機市場において重要な役割を果たすことが期待されています。

性能要目

座席数: 168-190席
巡航速度: マッハ0.785
最大高度: 12,100m
標準型航続距離: 4,075km
長距離型航続距離: 5,555km
積載量: 20.4トン

関連機体

Comac ARJ21
UAC MS-21
エアバスA320neo
ボーイング737MAX

もう一度検索