Content Scramble System

Content Scramble System（CSS）は、DVD-Videoのコンテンツを保護するために開発されたコピーガード技術です。松下電器産業（現在のパナソニック）などが開発に携わりました。CSSは、マクロビジョンなどの他のコピーガード技術と組み合わせて使用され、DVD-Videoの不正コピーを防止する役割を担っていました。

CSSの基本的な仕組みは、40ビット長の暗号キーを使ってコンテンツを暗号化することです。これにより、正規の再生機器以外でのコンテンツの利用を制限することが目的とされました。1996年に導入された当初は、一定のコピー防止効果が期待されていましたが、技術の進歩とともにその有効性は低下していきます。

1999年、ノルウェーの16歳の少年ヨン・レック・ヨハンセンによって、CSSの暗号を解除するプログラムであるDeCSSが開発されました。この出来事は、CSSの脆弱性を露呈させるだけでなく、DVDのリッピングを一般化させる大きなきっかけとなります。DeCSSの開発後、Linuxなどのオープンソース環境でもDVDの再生が可能になり、これによりCSSのコピーガードとしての役割は大きく低下しました。

DeCSSの開発者であるヨン・レック・ヨハンセンは、著作権侵害で提訴されましたが、裁判の結果、無罪となっています。この事件は、技術的な進歩と著作権法の関係について議論を巻き起こすことになり、その後の法改正や技術開発に大きな影響を与えることになりました。

現在では、CSSの暗号を回避するリッピングソフトがインターネットやパソコンショップで広く販売されており、CSSによるコピー防止効果はほとんど期待できない状況です。特にAnyDVDのようなリッピングソフトは、手軽にDVDのコピーを作成できるため、CSSはもはやコピーガードとしての役割を果たしているとは言い難いです。

CSSは、技術的にはコピーコントロール技術ではなく、アクセスコントロール技術とみなされます。アクセスコントロール技術は、日本では不正競争防止法の管轄下にあり、その回避策を頒布することは違法ですが、回避策を使用すること自体は違法ではありませんでした。このため、日本では私的複製の範囲内であればDVDのバックアップは合法であるという見解もありました。

しかし、2012年6月20日に、著作権法が改正され、CSSなどの暗号型技術は「技術的保護手段」として明確に位置づけられました。これにより、CSSを回避してDVDをリッピングする行為は、私的複製の対象外となり、違法行為とみなされるようになりました。ただし、CSSなどの保護技術が使用されていないDVDのリッピングは、改正後も従来通り合法です。

また、CSSを回避するプログラムや装置を提供することも規制され、刑罰の対象となりました。この法改正は、著作権侵害に対する取り締まりを強化する目的で行われ、コンテンツの権利保護を強化する動きを加速させました。

今後、模倣品・海賊版拡散防止条約（ACTA）が締結されることにより、アメリカのデジタルミレニアム著作権法（DMCA）に相当する規制が導入される可能性も指摘されています。これにより、CSSを回避する行為に対する規制がさらに強化される可能性があります。

DVD-Audioでは、CSSとは異なるコピーガード技術（CPPMなど）が用いられています。DVD-Audioは、音楽コンテンツの著作権保護のために、より高度な技術が用いられており、CSSとは異なるアプローチが採用されています。

現在、CSSのライセンスはDVD Copy Control Association (DVD CCA)が管理しています。DVD CCAは、CSSの技術的なサポートやライセンスの管理を行っており、CSSを使用するメーカーやソフトウェア開発者に対して、必要な手続きや情報を提供しています。

関連技術と用語

DeCSS: CSSの暗号を解除するプログラム。CSSの脆弱性を露呈させ、DVDのリッピングを一般化させた。
CSS Managed Recording (CSS-MR): CSSの派生技術で、録画コンテンツのコピーを制限する。
ARccOS: ソニーが開発したDVDのコピーガード技術。CSSと併用されることがある。
Advanced Access Content System (AACS): Blu-ray DiscやHD DVDで使用されるより高度なコピーガード技術。
Qrpff: DeCSSのキーを解析するための数学的なアプローチ。

参考情報

DVD CCA: CSS
* 音楽配信メモ - なんでDVDコピーは「違法」なの!?（日経クリック 2003年10月号）

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