DVB-H

DVB-H（Digital Video Broadcasting - Handheld）とは

DVB-Hは、携帯端末向けのデジタルテレビ放送規格の一つです。ETSI（欧州電気通信標準化機構）によってEN 302 304として規格化され、欧州連合にも承認されています。競合規格としてはDMBやワンセグが挙げられます。

技術的特徴

DVB-Hは、地上デジタルテレビ放送規格DVB-Tをベースに、携帯機器向けに最適化された規格です。高データ転送レートを実現し、専用受信機だけでなく携帯電話などの内蔵受信機能でも利用可能です。

時分割多重化

消費電力を抑えるために、時分割多重化技術を採用しています。IPデータグラムは短い時間スロットでバースト転送され、各バーストには最大2メガビットのデータが含まれます。リード・ソロモン符号による誤り訂正機能も搭載しています。受信機は必要なデータバーストのみを受信し、バッファに格納することで、消費電力を大幅に削減できます。特に、複数のサービスが時分割されている場合、最大90%の電力削減が可能です。

周波数帯域

DVB-Hは、以下の周波数帯域で動作するように設計されています。

VHF-III（170-230 MHzの一部）
UHF-IV/V（470-862 MHzの一部）
L band（1.452-1.492 GHz）

DVB-HはDVB-Tと多重化して共存可能です。

DVB-IPDC

DVB-IPDCは、IPデータ放送に関する規格で、DVB-Hの物理層として設計されました。IP（Internet Protocol）に基づいた商用モバイルテレビサービスの展開に不可欠な要素です。DVB-IPDCは、配信内容、配信方法、記述方法、保護方法を規定しています。システムアーキテクチャ、ユースケース、DVB PSI/SI信号、電子サービスガイド（ESG）、コンテンツ配信プロトコル（CDP）、サービス購入と保護（SPP）などを網羅しています。これらの規格はETSIによって正式に発表されています。

DVB-SH

DVB-SHは、移動体向けの衛星放送サービスで、DVB-HとETSI SDRを組み合わせた規格です。衛星DMB、XM Satellite Radio、Sirrus Satellite Radio、モバHO!などの類似のアーキテクチャと比較して、より強力なサービス提供が可能です。静止衛星と地上リピーターネットワークを組み合わせ、屋外と屋内両方での受信を可能にします。

衛星打ち上げとサービス開始

タレス・アレーニア・スペースは、DVB-SH用衛星の打ち上げを計画しており、ユーテルサットとSESアストラもヨーロッパ全土をカバーする衛星の打ち上げを予定しています。DVB-SHの衛星放送サービスは、2009年に運用開始予定ですが、地上ネットワークを利用したサービスはそれ以前に開始される見込みです。また、半導体チップメーカーや携帯電話メーカーもDVB-SH対応製品の開発を進めています。

DVB-H2

DVB-Hの後継規格であるDVB-H2は、2007年に策定が開始され、DVB-T2と相互に関連した規格となる見込みです。

試行地域

DVB-Hは、世界各地の都市や国で試行されてきました。

国と地域

アイルランド、イギリス、マレーシア、シンガポール、南アフリカ、台湾、ニュージーランド、フィリピン、スリランカ、モロッコなど。

都市

ヘルシンキ、ベルリン、ケンブリッジ、ピッツバーグ、パリ、テヘラン、マドリード、シドニー、ハーグ、ブリュッセル、ベルン、ウィーン、コペンハーゲン、ブダペスト、エアランゲンなど。

運用開始地域

アルバニア、フィンランド、インド、イタリア、シンガポール、フィリピン、アメリカ合衆国、ベトナムなど多くの国でDVB-Hサービスが開始されています。

各国の状況

アルバニア: DigitALBが全国サービスを開始（2006年12月）。
フィンランド: Digitaがネットワーク運用許可を取得し、Mobiili-TVが商用サービスを開始（2007年5月）。
インド: Prasar Bhartiがノキアと提携し、ニューデリーで8チャンネル放送を実施。
イタリア: 3 Italia、Telecom Italia Mobile、Mediaset、Vodafone Italyが全国サービスを開始。
シンガポール: TVMobileがDVB技術を利用した放送を開始。
フィリピン: SMARTがMyTVというモバイルテレビサービスを立ち上げ。
アメリカ合衆国: Modeoが全国サービスを予定。Hiwireもサービス試行を開始。
ベトナム: VTCが全国サービスを開始（2006年12月）。
その他: O2 Ireland、フランス、スペイン、南アフリカ、オーストリア、ドイツ、スイス、中国、マレーシア、ケニアなどでもDVB-Hサービスが展開されています。

対応機器

GIGABYTE、LGグループ、モトローラ、ノキア、サムスングループ、ソニー・エリクソン、フィリップス、SAGEM、ZTEなどのメーカーがDVB-H対応機器を開発しています。

開発ツール

DVB-H ESG SimulatorやAMUSE DVB-H toolsなどの開発ツールも提供されています。

関連項目

DAB（Digital Audio Broadcasting）
DMB（Digital Multimedia Broadcasting）
DRM（Digital Radio Mondiale）
電子番組ガイド
ISDB（Integrated Services Digital Broadcasting）
ワンセグ
衛星放送
WiMAX

外部リンク

DVB-H.org: DVBプロジェクトのDVB-H公式サイト
DVB Project: DVB公式サイト
ETSI
Mobile DTV Alliance
DVB Standards & BlueBooks
European Audiovisual Observatory

もう一度検索