GUITARHYTHM III

『GUITARHYTHM III』は、布袋寅泰が1992年に発表した3枚目のオリジナルアルバムです。

制作背景

本作は「LOOKING FOR WILD」をテーマに、「スピード」「スリル」「ワイルド」をコンセプトとして制作されました。初期の『GUITARHYTHM』シリーズよりも、よりストレートなロックンロール色が強くなっているのが特徴です。

布袋自身が「ポップアート」をコンセプトの一つとして掲げ、当時傾倒していたアンディ・ウォーホル、ジャン・コクトー、アルチュール・ランボーからの影響が色濃く反映されています。当時の日記である書籍『よい夢を、おやすみ。』にも、これらの芸術家の名前が頻繁に登場します。

布袋は本作について、「自分の中のワイルドな部分がテーマとして湧き上がってきた」と語っています。BOØWY解散直後の『GUITARHYTHM』やCOMPLEX解散後の『GUITARHYTHM II』とは異なり、今回は周囲の評価を気にせず、自然に解放された感覚で制作できたといいます。前作の全国ツアーでの経験も、ライブで映える楽曲制作に繋がりました。

ボーカリストとしての意識の芽生えも語っており、楽曲に負けないように歌う必要性を感じ、言葉を大切にするようになったと述べています。前作のツアーで喉が鍛えられたことも、表現の幅を広げる要因となりました。

レコーディング

レコーディングは、布袋の事務所が所有するIRc2スタジオと、前作でも使用したロンドンのメトロポリス・スタジオで行われました。1992年4月下旬から制作が開始され、5月からはIRc2スタジオ、その後ロンドンのメトロポリス・スタジオへと移行しました。ロンドン滞在中は、ケンジントンのThe Gore Hotelが定宿となっていました。

ギターは、これまでメインだったTE-HTに加え、新たにゼマティスのZEMAITIS Custom Deluxe"Wild"（通称：Zematis WILD）を使用。以降、レコーディングやライブでメインギターの一つとして定着しました。使用ギターは他に、グレッチのWhite Falcon、Gretsch Anniversary、Burny SH-1(H-CUSTOM)などです。

本作からギター・テイクのサンプリングが新たな手法として採用され、以降の作品でも活用されることになります。ギター・アンプはピーヴィーの「ヴァン・ヘイレンモデル 5150」を使用。エフェクトは卓上作業で行われました。マスタリングは、ニューヨークのマスターディスクで行われています。

クリス・スペディング、ジーザス・ジョーンズのマイク・エドワーズ、ニールXといった、布袋が憧れるギタリストたちとの共演も実現しました。

リリースとアートワーク

1992年9月23日に東芝EMIのイーストワールドレーベルからCDでリリースされました。同年11月18日には、LPレコード盤が限定盤としてリリースされ、曲順が異なるほか、ルベッツの「SUGAR BABY LOVE」のカバーが追加収録されています。

アート・ディレクションは、前2作に引き続き永石勝が担当。ジャケットワークは、ケネス・アンガーの映画『スコーピオ・ライジング』からインスパイアされたもので、布袋は「皮ジャンはロックンローラーの皮膚なんだ」と述べています。撮影は久保木浚介が担当しました。

ツアー

本作を受けてのツアー「GUITARHYTHM WILD TOUR」は、1992年10月12日の渋谷公会堂からスタートし、21都市39公演が行われました。ツアー中に布袋が右手を骨折したため、一部公演は1993年に延期されました。ツアーの模様は、ライブ・アルバム『GUITARHYTHM WILD』（1993年）とライブ・ビデオ『GUITARHYTHM WILD』（1993年）としてリリースされています。

チャート成績とエピソード

本作は、オリコンチャートで最高2位を獲得し、28.3万枚を売り上げました。

レコーディングで使用したZEMAITIS Custom Deluxe"Wild"をツアーで使用するため、ボディ裏側にベルトのバックルでわざと傷をつけたというエピソードがあります。購入当初は丁寧に扱っていたギターでしたが、ツアーで遠慮なく弾き倒せるようにするため、意図的に傷をつけたとのことです。

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