JR貨物クム1000系貨車

JR貨物クム1000系貨車とは

JR貨物クム1000系貨車は、日本貨物鉄道（JR貨物）が1989年（平成元年）から製造した、4tトラックを積載して輸送するピギーバック輸送用の貨車です。この貨車は、コキ100系コンテナ車と連結して運用することを想定して設計され、最高速度110km/hでの走行が可能でした。

全車が日本フレートライナー所有の私有貨車でしたが、2002年（平成14年）7月までに全車が廃車となり、形式は消滅しました。この解説では、試作されたクサ1000形についても触れていきます。

開発の背景

欧米では既にトラックを貨車に積載して輸送するピギーバック輸送が一般的でした。日本でも、トラックによる交通渋滞の緩和策としてピギーバック輸送が検討されるようになりました。1986年には、日本国有鉄道（国鉄）時代に中型トラック2台を積載できるクム80000形が登場し、東海道本線や山陽本線、上越線、東北本線などで運用されていました。

しかし、東海道本線の東京 - 大阪間では貨物列車の増発が限界に達しつつあり、一列車あたりの輸送力増強が急務となっていました。そこで、JR貨物は1989年から増備を進めていたコキ100系コンテナ車に合わせて、ピギーバック車も同じ速度で走行可能な車両を製作し、輸送力増強を図ることになりました。これがクム1000系です。

構造

クム1000系には、クム1000形とクム1001形の2つの形式があります。クム1000形は電磁弁付きで、クム1001形は電磁弁なしです。クム1000形0番台はクム1001形との2両ユニットで運用され、クム1000形500番台は単独での運用が可能です。最高速度はコキ100系と同じ110 km/hです。

外観はコキ100系に似ており、多くの部品が共通化されています。全長は19,910 mm、全幅は2,720 mm、全高は1,992 mmです。荷重は16 t、自重は20.2 tで、車体長や台車中心間距離もコキ100系と同一です。車体の塗装はファーストブルー（明るい青）、台車と連結器はねずみ色1号です。

台車はFT1形を装備し、ブレーキは電磁自動空気ブレーキ（CLE）と手ブレーキを搭載しています。給排気用電磁弁はクム1000形のみに装備されています。荷役はランプウェイを利用して行い、貨車上を自走します。1両あたり4tトラックを2台積載できます。

クム1000形、クム1001形ともに、1989年と1990年に合計37両が製造され、1 - 37の番号が付与されました。クム1000形500番台は、1990年から1992年にかけて54両が製造され、501 - 554の番号が付与されています。

運用

1989年6月から、クム1000系は東海道本線・山陽本線に投入され、コキ100系への置き換えが進められました。これにより捻出されたクム80000形は、「ピギー中越号」に転用され、常備駅が沼垂駅に変更されました。単独運用が可能なクム1000形500番台のうち41両は隅田川駅常備となり、クム80000形と混用されて東北方面で使用されました。

1990年3月のダイヤ改正からは、東京貨物ターミナル駅 - 梅田駅間でクム1000系22両とコキ100系4両を連結した26両編成で運行されるようになりました。トラック輸送会社は11社に配分され、連結両数はピギーバック車として日本国内最大でした。1992年3月には、西岡山駅 - 東京貨物ターミナル駅間の列車が110km/h運転を開始しました。

しかし、バブル崩壊に伴い輸送需要が低迷すると、積載効率の低いピギーバック輸送は需要が落ち込みました。トラックの自重が運賃に加算されることや、トラック運転手の確保難が緩和したことなどが理由として挙げられています。ピギーバック輸送列車は次第に運転が取りやめられ、2000年3月のダイヤ改正で全廃されました。

廃車

1993年以降、ピギーバック輸送の需要が落ち込んだため、1994年には最初の8両が廃車されました。この台車は、コキ104形の製造時に流用されています。ピギーバック輸送列車が全廃されても、クム1000系は留置されたままでしたが、2002年7月までに全車が廃車となり、形式は消滅しました。

クサ1000形

4tトラックのピギーバック輸送は、1両に2台しか積載できず、積載効率が低いという課題がありました。そこで、低床貨車の技術を取り入れ、床面高さを低くして車体断面が大きく、車体長の短い特殊トラックを3台積載できるクサ1000形が開発されました。

1993年に1ユニット2両（901, 902）が試作されました。この新方式は「スーパーピギーバック」と呼ばれました。クサ1000形は、全長21,300 mm、全幅2,674 mm、全高1,920 mm、自重20.2 t、荷重24 tで、FT12形台車を装備し、CLE方式の電磁自動空気ブレーキと手ブレーキを備えています。901と902でユニットを組むことを前提としているため、給排気電磁弁は一方の車両にのみあります。コキ70形をベースとしており、FT12形台車はコキ70形のFT11形台車の軸距を1,800 mmに延長したものです。車輪は直径610 mmの小径車輪で、ディスクブレーキとなっています。車体全体が低床化されており、床面高さは700 mmです。

荷役方式はクム1000系と同様で、油圧昇降装置を備えており、トラックの自走時には斜路を形成します。専用トラックは、日野・レンジャー（4代目）をベースに車体長を短縮し、高さを拡大して容積を確保しています。

1993年9月から東京貨物ターミナル駅 - 熱海駅間で試運転が行われ、1994年6月からは小名木川駅 - 新潟貨物ターミナル駅間で運用される計画でした。しかし、ピギーバック輸送の需要が急速に落ち込んだため、導入は撤回されました。クサ1000形は、正式に車籍に編入されることはありませんでした。

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