KIM-1
KIM-1は、1976年に米モステクノロジー社から発売された画期的なシングルボードマイクロコンピュータキットです。Keyboard Input Monitorの略称を持ち、当時急速に普及し始めていたMOS Technology製6502マイクロプロセッサを心臓部に搭載していました。
開発当時、マイクロプロセッサを使ったシステムを構築するには、CPU単体に加え、メモリや入出力インターフェイスなどの周辺ハードウェアを別途用意する必要があり、これは技術者や熱心なホビイストにとっても敷居の高い作業でした。特に、モトローラのMC6800とピン互換を持ちつつ、より低価格を実現した初期の6501プロセッサが、モトローラの圧力により市場から姿を消し、ピン配置を変更した6502が新たに登場した際には、周辺回路の準備が追いついていませんでした。
このような状況下で、かつてMC6800の開発に携わり、後にモステクノロジーの650xチームを率いたチャック・ペドル氏は、手軽に6502を使った開発や学習ができるプラットフォームとしてKIM-1を設計しました。当初は技術者向けの評価ボードとしての側面が強かったものの、その手頃な価格（キット価格245ドル）と拡張性の高さから、すぐに多くのホビイストたちの注目を集めることになります。電源装置と、テレタイプ端末やカセットレコーダーといった既存の周辺機器を組み合わせることで、比較的低コスト（全体で500ドル以下）で本格的なコンピュータシステムを構築することが可能でした。
従来の初期のマイクロコンピュータ、例えばAltair 8800などでは、プログラムの入力はフロントパネルに並んだ多数のスイッチを操作して行うのが一般的でした。電源投入後、まずブートストラップローダと呼ばれる小さなプログラムをスイッチで手作業で入力し、そのローダを使ってより大きなプログラムを紙テープリーダーなどから読み込む必要がありました。この作業は非常に時間がかかり、一度でも入力ミスがあると最初からやり直さなければならないという、根気のいるものでした。
KIM-1は、この問題を解決するために、Terminal Interface Monitor（TIM）と呼ばれるモニタプログラムを内蔵ROMに搭載していました。これにより、電源を入れるとすぐにTIMが起動し、ユーザーはキーパッドからの入力とLEDディスプレイでの出力を用いて、プログラムの入力や実行、デバッグといった操作を簡単に行うことができました。TIMはカセットテープを外部記憶装置として利用する機能も備えており、プログラムの保存や読み込みを容易にしました。これは当時のマイクロコンピュータとしては画期的な使いやすさであり、KIM-1が最初のワンボードマイコンの一つとしてホビイストに広く受け入れられた大きな理由です。
KIM-1は組み立てキットとして提供され、内容はCPU（6502）、周辺LSI（6530×2）、RAM（6102×8）、6桁の7セグメントLED、24キーの電卓型キーパッド、そしてプリント基板で構成されていました。内蔵メモリは、製品説明では「1KバイトRAM」とされていましたが、実際には6102による1024バイトに加え、6530に含まれる128バイトが利用可能で、合計1152バイトでした。入出力ポートは基板上のコネクタに引き出されており、TTY端末やカセットレコーダーとの接続に使用できました。
KIM-1の登場後、6502のセカンドソースメーカーであったロックウェル・インターナショナルやSynertek社からも、同様の評価ボードや派生製品が登場します。Synertekは、KIM-1に似た小型のキーパッドとディスプレイを持ちつつ、AIM-65互換の拡張バスやRS-232Cインターフェイスを備えたSYM-1を開発しました。一方、ロックウェルとSynertekが共同で開発したAIM-65は、より本格的で、フルASCIIキーボード、20桁のLEDディスプレイ、小型プリンタを備え、ROMオプションとしてアセンブラやMicrosoft BASICを選択できました。
KIM-1は、その学習・開発プラットフォームとしての価値に加え、様々なソフトウェアや拡張ハードウェアが生み出されました。アセンブリ言語の入門書が出版されたり、ソフトウェアで制御可能な出力ピンを使って簡単な音楽を演奏するデモプログラムが考案されたりしました。メモリを拡張することでTiny BASICインタープリタを実行することも可能でしたが、テープからのロードには15分もの時間を要しました。また、ドン・ランカスター氏はKIM-1用の低価格なビデオディスプレイ拡張基板TVT-6を開発し、TVモニターへの文字表示を可能にしました。
モステクノロジーはKIM-1の発売から間もなく、コモドールによって買収されます。KIM-1の開発を主導したチャック・ペドル氏は、KIM-1をさらに発展させた、キーボード、ディスプレイ、カセットドライブ、そしてBASICインタープリタをROMに内蔵したオールインワンのパーソナルコンピュータの開発を進めます。こうして1977年に誕生したのが、Apple IIやTRS-80と並び、初期のホビーパソコン市場を牽引した歴史的なマシン、コモドールPET 2001でした。KIM-1は、多くのホビイストに「マイコンに触れる機会」を提供し、その後のパーソナルコンピュータ時代の幕開けを準備する上で重要な役割を果たしたのです。
開発当時、マイクロプロセッサを使ったシステムを構築するには、CPU単体に加え、メモリや入出力インターフェイスなどの周辺ハードウェアを別途用意する必要があり、これは技術者や熱心なホビイストにとっても敷居の高い作業でした。特に、モトローラのMC6800とピン互換を持ちつつ、より低価格を実現した初期の6501プロセッサが、モトローラの圧力により市場から姿を消し、ピン配置を変更した6502が新たに登場した際には、周辺回路の準備が追いついていませんでした。
このような状況下で、かつてMC6800の開発に携わり、後にモステクノロジーの650xチームを率いたチャック・ペドル氏は、手軽に6502を使った開発や学習ができるプラットフォームとしてKIM-1を設計しました。当初は技術者向けの評価ボードとしての側面が強かったものの、その手頃な価格（キット価格245ドル）と拡張性の高さから、すぐに多くのホビイストたちの注目を集めることになります。電源装置と、テレタイプ端末やカセットレコーダーといった既存の周辺機器を組み合わせることで、比較的低コスト（全体で500ドル以下）で本格的なコンピュータシステムを構築することが可能でした。
従来の初期のマイクロコンピュータ、例えばAltair 8800などでは、プログラムの入力はフロントパネルに並んだ多数のスイッチを操作して行うのが一般的でした。電源投入後、まずブートストラップローダと呼ばれる小さなプログラムをスイッチで手作業で入力し、そのローダを使ってより大きなプログラムを紙テープリーダーなどから読み込む必要がありました。この作業は非常に時間がかかり、一度でも入力ミスがあると最初からやり直さなければならないという、根気のいるものでした。
KIM-1は、この問題を解決するために、Terminal Interface Monitor（TIM）と呼ばれるモニタプログラムを内蔵ROMに搭載していました。これにより、電源を入れるとすぐにTIMが起動し、ユーザーはキーパッドからの入力とLEDディスプレイでの出力を用いて、プログラムの入力や実行、デバッグといった操作を簡単に行うことができました。TIMはカセットテープを外部記憶装置として利用する機能も備えており、プログラムの保存や読み込みを容易にしました。これは当時のマイクロコンピュータとしては画期的な使いやすさであり、KIM-1が最初のワンボードマイコンの一つとしてホビイストに広く受け入れられた大きな理由です。
KIM-1は組み立てキットとして提供され、内容はCPU（6502）、周辺LSI（6530×2）、RAM（6102×8）、6桁の7セグメントLED、24キーの電卓型キーパッド、そしてプリント基板で構成されていました。内蔵メモリは、製品説明では「1KバイトRAM」とされていましたが、実際には6102による1024バイトに加え、6530に含まれる128バイトが利用可能で、合計1152バイトでした。入出力ポートは基板上のコネクタに引き出されており、TTY端末やカセットレコーダーとの接続に使用できました。
KIM-1の登場後、6502のセカンドソースメーカーであったロックウェル・インターナショナルやSynertek社からも、同様の評価ボードや派生製品が登場します。Synertekは、KIM-1に似た小型のキーパッドとディスプレイを持ちつつ、AIM-65互換の拡張バスやRS-232Cインターフェイスを備えたSYM-1を開発しました。一方、ロックウェルとSynertekが共同で開発したAIM-65は、より本格的で、フルASCIIキーボード、20桁のLEDディスプレイ、小型プリンタを備え、ROMオプションとしてアセンブラやMicrosoft BASICを選択できました。
KIM-1は、その学習・開発プラットフォームとしての価値に加え、様々なソフトウェアや拡張ハードウェアが生み出されました。アセンブリ言語の入門書が出版されたり、ソフトウェアで制御可能な出力ピンを使って簡単な音楽を演奏するデモプログラムが考案されたりしました。メモリを拡張することでTiny BASICインタープリタを実行することも可能でしたが、テープからのロードには15分もの時間を要しました。また、ドン・ランカスター氏はKIM-1用の低価格なビデオディスプレイ拡張基板TVT-6を開発し、TVモニターへの文字表示を可能にしました。
モステクノロジーはKIM-1の発売から間もなく、コモドールによって買収されます。KIM-1の開発を主導したチャック・ペドル氏は、KIM-1をさらに発展させた、キーボード、ディスプレイ、カセットドライブ、そしてBASICインタープリタをROMに内蔵したオールインワンのパーソナルコンピュータの開発を進めます。こうして1977年に誕生したのが、Apple IIやTRS-80と並び、初期のホビーパソコン市場を牽引した歴史的なマシン、コモドールPET 2001でした。KIM-1は、多くのホビイストに「マイコンに触れる機会」を提供し、その後のパーソナルコンピュータ時代の幕開けを準備する上で重要な役割を果たしたのです。
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