KISS (鉄道車両)

シュタッドラー・レール製2階建て電車KISS

KISS（キス）は、スイスの鉄道車両メーカー、シュタッドラー・レールが展開する2階建て電車のブランドです。当初はDOSTOというブランド名で計画されていましたが、現在はKISSとして広く知られています。この電車は、その高い収容力と快適性から、世界中の多くの鉄道会社で採用されています。

概要

2008年にスイス連邦鉄道との契約を皮切りに、KISSは2016年までに8ヶ国で242編成、1145両が導入されるまでに成長しました。この電車は、軽量かつ頑丈なアルミニウム合金製の車体を採用しており、都市圏での利用を考慮して両開き扉が採用されています。最高速度は160km/hで、編成は最短2両から最長8両まで対応可能です。また、顧客の要望に応じたカスタマイズも可能で、着席定員数は最大1000人まで増やすことができます。

特に、旧ソ連各国の鉄道路線に導入された編成は「KISS Eurasia」と呼ばれ、独自の仕様となっています。また、インターシティなど都市間長距離運用に適した「KISS200」というブランドも展開されており、車内にカフェスペースが設置されているほか、最高速度も200km/hに向上しています。

KISSという名称は、ドイツ語の「komfortabler innovativer spurtstarker S-Bahn-Zug（快適・革新的・高速な都市近郊列車）」の頭文字を取ったものです。

各国への導入事例

KISS160

スイス（スイス連邦鉄道）

スイス連邦鉄道は、チューリッヒ Sバーンをはじめとする各地の路線にKISSを導入しています。2008年 4月と2014年 4月には6両編成69本、2010年 4月には4両編成24本を発注しており、2021年にはオプション契約を行使して6両編成60本を追加発注しています。

スイス（BLS AG）

スイスの私鉄BLS AGは、ベルン近郊のSバーンに4両編成31本のKISSを導入しています。これらの編成は、2008年に制定されたEUの安全基準EN15227に基づき、スイス連邦鉄道向け編成とは異なる前面デザインとなっています。

ドイツ（東ドイツ鉄道）

東ドイツ鉄道（ODEG）は、ベルリンやブランデンブルク州の地域輸送にKISSを導入しています。2009年 12月に製造が決定され、2018年 8月現在、4両編成16本が運用されています。車内には自転車用スペースが設置されており、前面はEN15227に準拠した設計となっています。

ドイツ（ヴェストファーレンバーン）

ヴェストファーレンバーン（WFB）は、ドイツ北部の旅客列車運用に6両編成13本のKISSを使用しています。2013年 2月にFLIRTと共に発注され、2015年 12月に営業運転を開始しました。一部の2階席は優等座席となっており、車内には自転車収容スペースも設置されています。

ルクセンブルク

ルクセンブルク国鉄は、2014年 12月からドイツ国境を越える国際列車として3両編成のKISSを導入しました。当初8本が導入され、その後11本が追加発注されました。これらの増備車は優等座席数が多くなっています。この編成は、ルクセンブルクとドイツ両方の電圧に対応した複電圧車です。

アメリカ

アメリカのカリフォルニア州で通勤列車を運行するカルトレインは、路線の電化計画に合わせてKISSを導入しました。アメリカの安全基準に適合した設計で、自転車を置けるスペースや低床式プラットフォームに対応した扉を備えています。4両編成で最高速度は177km/h、2019年から16本の製造が予定されています。

スウェーデン

スウェーデンのMälabは、2016年 6月に4両編成33本のKISSを導入する契約を締結しました。この編成は、スウェーデンの気候に対応した耐寒仕様となっており、最高速度は200km/hです。2019年から営業運転を開始しています。

ハンガリー

ハンガリー国鉄は、ブダペスト近郊の鉄道需要拡大に対応するため、2017年 4月に6両編成6本のKISSを導入しました。ハンガリー初の2階建て電車で、着席定員数は600人、最高速度は160km/hです。

スロベニア

スロベニア鉄道は、2018年に旅客列車の近代化のためKISSを導入しました。3両編成10本が2022年から営業運転を開始しています。

KISS200

オーストリア

オーストリアのウェストバーンは、都市間列車にKISS200を導入しました。

ドイツ

ドイツ鉄道は、ウェストバーンから譲渡されたKISS200をインターシティ（インターシティ2）として使用しています。2020年 3月からロストック-ドレスデン間で運用を開始し、今後はシュトゥットガルト-チューリッヒ間でも使用予定です。

KISS Eurasia

ロシア連邦

ロシアのアエロエクスプレスは、モスクワ郊外の空港連絡にKISS Eurasiaを導入しました。この路線は非常に混雑しており、2階建て電車の導入が不可欠でした。シュタッドラー・レールは、ロシアの鉄道規格や気象条件に対応した専用設計の電車を製造しました。編成は4両と6両があり、最大3編成まで総括制御が可能です。車体はアルミニウム製で軽量化とコスト削減を実現し、-50℃の低温にも耐えることができます。営業最高速度は160km/h、設計最高速度は200km/hです。2017年 10月からキエフスキー～ヴヌーコヴォ国際空港間で営業運転を開始しました。

アゼルバイジャン、ジョージア

アゼルバイジャン鉄道とジョージア鉄道は、ロシアのアエロエクスプレスが導入をキャンセルしたKISS Eurasiaを購入しました。アゼルバイジャン鉄道は4両編成5本を導入し、バクー～スムガイト間で運用しています。ジョージア鉄道は4両編成4本を導入し、トビリシ～バトゥミ間で運用しています。これらの編成は、それぞれの国の国旗を基調としたデザインに変更されています。

外部リンク

* シュタッドラー・レールの公式ページ（英語）

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