LP 890-9 c

LP 890-9 c

LP 890-9 cは、太陽系から約105光年離れたエリダヌス座方向にある赤色矮星、LP 890-9を周回する太陽系外惑星です。この惑星は2022年に発見が公表され、トランジット法という手法により存在が確認されました。特に、主星の周りを生命居住可能とされるハビタブルゾーン内で公転しているスーパーアースであることが明らかになっています。

発見

LP 890-9 cの発見には、トランジット系外惑星探索衛星（TESS）とSPECULOOS望遠鏡ネットワークが貢献しました。LP 890-9系では、LP 890-9 cよりも内側を回る惑星LP 890-9 b（TOI-4306 b、SPECULOOS-2bとも呼ばれる）が、既にTESSによって惑星候補TOI-4306.01として観測されていました。しかし、最初のTESSの観測データからは、LP 890-9 cの存在は検出されていませんでした。

その後、SPECULOOSによる詳細な観測が行われ、そのデータからLP 890-9 bの外側を公転する第二の惑星としてLP 890-9 c（TOI-4306 c、SPECULOOS-2c）が発見されました。これらの二つの惑星は、いずれも惑星が主星の手前を通過する際に主星の光がわずかに暗くなる「トランジット」現象を利用したトランジット法によって見つかった惑星です。LP 890-9 cの主星の周回周期は、その後のMuSCAT3望遠鏡によるフォローアップ観測によって、約8.457日であることが精密に確認されました。LP 890-9 bとLP 890-9 cの発見および確認に関する研究論文は、2022年9月6日にプレプリントサーバーarXiv上で公開されています。

特徴

LP 890-9 cは、地球の約1.367倍の半径を持つと推定される地球型惑星であり、スーパーアースに分類されます。現在のところ、正確な質量はまだ確定しておらず、質量の上限値として地球質量の25.3倍以下であることだけが分かっています。

最も注目すべき特徴は、LP 890-9 cが主星LP 890-9のハビタブルゾーン内に位置する軌道を公転していることです。ハビタブルゾーンとは、惑星の表面に液体の水が存在しうる範囲を指します。LP 890-9 cの公転周期は約8.457日と比較的短いですが、これは主星であるLP 890-9が、表面温度約2600℃と太陽に比べて非常に小さく低温な赤色矮星であるためです。主星が小さく低温であれば、そのハビタブルゾーンも主星のすぐ近くに形成されるため、短い公転周期でもこの領域内に位置することが可能になります。LP 890-9 cの平衡温度は計算上約272ケルビン（約-1℃）と見積もられており、もし十分な量の二酸化炭素などの温室効果ガスが大気中に存在すれば、地表の温度が生命の生存に適した範囲になりうる可能性が指摘されています。

LP 890-9 cは、特に居住可能性の観点から有望な系外惑星候補として注目されており、これまでに見つかった同様の惑星の中では、TRAPPIST-1eに次いで二番目に有望視されています。ただし、LP 890-9 cが主星から受けるエネルギー量は、地球が太陽から受けるエネルギー量の約91%に相当するため、理論的には地球よりも低温な環境である可能性も示唆されています。一方で、濃厚な大気組成を持つ場合は、金星のように暴走温室効果が発生し、表面が非常に高温になる可能性も排除されていません。

LP 890-9 cは、その特徴からジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡（JWST）による詳細な観測に非常に適したターゲットと考えられています。将来的にJWSTによる観測が実現すれば、この惑星に大気が存在するのかどうか、そして存在する場合はその組成がどのようなものであるかなどを調査することが可能となり、惑星の環境や居住可能性についてより多くの情報が得られると期待されています。

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