Live and zen

一風堂の軌跡を刻むライブアルバム『live and zen』

『live and zen』（ライブ・アンド・ゼン）は、日本のロックバンド、一風堂が1984年7月21日にリリースしたライブアルバムです。前作『NIGHT MIRAGE』から約1年ぶりの作品で、プロデュースは土屋昌巳が担当しました。このアルバムは、1983年のコンサートツアー「ファイル・ツアー」から、6月6日と7日の中野サンプラザ公演の模様を収録しています。当時演奏された16曲の中から、厳選された10曲が収められています。

制作の背景

一風堂は、1982年のシングル「すみれ September Love」がカネボウ化粧品のCMソングに起用され、ブルック・シールズが出演したことも話題となり、大ヒットしました。しかし、その後のツアー中、土屋はジャパンのツアーにも参加しており、一風堂のメンバーは変則的な活動を余儀なくされました。1982年末にはドラムスの藤井章司が脱退し、一風堂は土屋と見岳の2人編成となります。

1983年には、見岳がソロアルバムのレコーディングで渡英し、土屋は山口美央子のアルバムのアレンジを担当するなど、メンバーは個別の活動も展開しました。その後、様々なバンドが参加するジョイントツアー「ファイル・ツアー」に一風堂も参加。このツアーは、THE MODSとの変則的な日程での共演となり、それぞれが舞台セットも変えるという大規模なものでした。

豪華ゲストを迎えて

『live and zen』の制作には、元ジャパンのスティーヴ・ジャンセン（ドラムス）とリチャード・バルビエリ（キーボード）、そしてイギリスのベーシスト、パーシー・ジョーンズがゲストミュージシャンとして参加しました。見岳とバルビエリは共にキーボードを担当しましたが、役割分担が明確であったため、見岳は「非常にやりやすかった」と語っています。一方、パーシー・ジョーンズはアーティスト気質が強く、単純なフレーズを嫌うため、説得に苦労したというエピソードも残されています。

コンサート会場には、従来のファンに加え、「すみれ September Love」で生まれた新規ファン、そしてジャパンのファンと、様々な層が混在し、聴衆の反応も混乱したと言われています。また、一部の楽曲では手弾きが困難であったため、テープ再生も使用されました。

アルバムの構成と収録曲

収録曲は、アルバム『NIGHT MIRAGE』からの選曲を中心に、土屋のソロアルバム『RICE MUSIC』、見岳のソロアルバム『OUT OF REACH』からも選曲されています。セットリストは以下の通りです。

1. Plant's Music（オープニング）
2. Listen To Me
3. ふたりのシーズン
4. Magic Vox
5. アフリカン・ナイツ
6. 僕の心に夏の雨
7. ロンリー・シーライオン
8. Violation
9. ジャーマン・ロード
10. “Sail On”
11. Secret Party
12. ナイト・イン・ザ・パーク
13. ライス・ミュージック
14. すみれ September Love
15. タオ・タオ
16. ムーンライト・マジック


初期のアルバム曲は未収録となっています。

リリースと活動休止

アルバムはLPとCTでリリースされ、帯には「Japanのスティーブ・ジャンセン、リチャード・バルビエリ他をゲストに迎えた — 一風堂初のライブ・アルバム」と記載されていました。当時、土屋のソロ作品である12インチシングル「スターライト・シャワー (Special Re-Mix)」との2枚組で販売されました。この「スターライト・シャワー」は、後のソロアルバム『TOKYO BALLET』につながるポップな曲調で、B面には実験的なインストゥルメンタル「"AQUA" NOSTALGY」が収録されています。

このアルバムのリリース後、土屋はソロ活動を本格化させ、一風堂は活動休止状態に入りました。本作は、一風堂として最後の新作となりました。しかし、正式な解散宣言は行われていません。土屋は、当時を振り返り、感傷的な感覚はなかったと述べています。一風堂がニューウェイヴを体現したバンドであるという評価に対して、土屋は肯定し、激動の時代の中で、その速度に追従していたのが一風堂であると述べています。

アルバムの評価と意義

雑誌編集者の田中雄二は、アルバムタイトル「live and zen」の「zen」にグループの終焉を達観しているようだと述べ、選曲が後期一風堂の代表曲を網羅していると指摘しました。一方で、複雑なアンサンブルはテープを使用していることや、コンセプトライブであったことから音源のみでは臨場感が伝わりにくいと否定的な評価も示しています。しかし、このアルバムは、一風堂の音楽的な変遷と、メンバーそれぞれの才能が結集した貴重な記録であり、音楽ファンにとって重要な作品であると言えるでしょう。

デジタルリマスター版とボーナストラック

2006年には、ボックスセット『MAGIC VOX: IPPU‐DO ERA 1979–1984』でデジタルリマスター版がリリースされ、12インチシングルに収録されていた2曲がボーナストラックとして追加収録されました。さらに、「ムーンライト・マジック」のB面曲であった「LONELY SEA LION（Live from "File Tour 1983")」と通常盤シングル「スターライト・シャワー」のB面曲であった「B-Side Passion」、未発表であった「ジャーマン・ロード」のライブテイクも収録されています。

スタッフクレジット

一風堂

土屋昌巳 – ボーカル、ギター、シンセサイザー、ピアニカ
見岳章 – アコースティック・ピアノ、シンセサイザー、ヴァイオリン、コーラス

参加ミュージシャン

スティーヴ・ジャンセン – ドラムス
リチャード・バルビエリ – シンセサイザー
パーシー・ジョーンズ – フレットレスベース
デヴィッド・ヴァン・ティーゲム – オープニング・アクト

スタッフ

土屋昌巳 – プロデュース
伊東俊郎 – エンジニア
ハービー・山口 – フロントカバー写真
高橋伸明 – デザイン

12インチ・シングル

「スターライト・シャワー」
土屋昌巳 – ボーカル、ベース、コーラス、シンセサイザー、ギター
見岳章 – アコースティック・ピアノ
村上“ポンタ”秀一 – ドラムス
藤井丈司 – "Compu Plants System"
三枝成章 – オーケストラ・アレンジメント
篠崎ストリングス – ストリングス
「"AQUA" NOSTALGY」
いとうかずお – "REAL" Water SE
ヤン富田 – "REAL" スチールドラム
土屋昌巳 – その他楽器

スタッフ

土屋昌巳 – プロデュース
鋤田正義 – バックカバー写真
高橋伸明 – デザイン
* 須藤洋子 – スタイリング、ヘアー&メイクアップ

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