M116 75mm榴弾砲

M116 75mm榴弾砲は、アメリカ合衆国で開発された榴弾砲であり、M1 75mm榴弾砲の改良型です。旧称はM1A1として知られています。陸上自衛隊にも配備され、「75mm榴弾砲M1A1」の名称で使用されました。

概要

本砲は元々、駄載による運用を目的とした山砲として開発され、1927年にアメリカ陸軍に採用されました。当初は財政的な問題から生産が低調でしたが、第二次世界大戦の勃発に伴い、1940年9月から大量生産が開始されました。1944年12月まで生産が続けられ、総計5,288門が製造されました。

本砲システムからは、用途に応じて多数の派生型が開発されています。これらの派生型は、基本的に砲身、駐退復座機、砲尾が共通であり、砲架のみが異なります。

M1砲架: 直線式の単脚を持ち、木製の車輪を装備した最も初期の砲架。6つの部品に分解して荷駄で運搬可能でした。
M3砲架: 野砲方式の砲架で、ハの字型の脚を持ち、改良型には防盾があります。分解は不可能で、1/4tトラック（ジープやM151）による牽引輸送に限られます。車輪を上げることで砲架を直接地面に設置でき、射撃時の安定性が向上します。
M8砲架: 空挺投下用に開発された砲架で、M1砲架と基本的に同じ構造ですが、車輪が空気入りゴムタイヤに変更されています。

本砲の特筆すべき点は、1/4tトラックでの牽引、ヘリコプターによる空輸、パラシュート降下など、柔軟な運用が可能なことです。初期型のM1は、73-107kgの6つのパッケージに分割して駄載できました。空挺型のM8は、駄載時には7つ、空中投下時には9つのパッケージに分割でき、必要に応じて人力での運搬も可能でした。

運用

アメリカ陸軍では、本砲は空挺部隊と山岳部隊に配備されました。1944年2月時点の空挺師団では、75mm砲装備部隊として3個大隊が編成され、合計36門が装備されていました。その内、2個大隊はグライダー輸送を想定し、各々が6門を装備する2個射撃中隊を、残る1個大隊は空中投下を想定し、4門を装備する3個射撃中隊を有していました。同年12月の改編により、合計装備数は60門に増強されました。また、第10山岳師団では、12門を装備する大隊が3個編成されていました。

アメリカ海兵隊では、1943年のEシリーズ編制表において、各師団に12門を装備する3個砲兵大隊が編成されていましたが、1944年のFシリーズ編制表では75mm砲装備大隊は2個に削減され、1945年のGシリーズ編制表ではついにゼロとなり、105mm砲と155mm砲に完全に更新されました。

本砲は、戦中から様々な国に供与されました。特に中華民国への供与が有名で、計762門が供与されました。中国国民党軍が本土を放棄した後に中国共産党に鹵獲された一部は、ベトミン軍に供与され、ディエンビエンフーの戦いにおいて、フランス軍が運用困難と判断した山中を人力で踏破し、ディエンビエンフーを包囲する火網の一翼を担いました。また、トルコ軍に供与されたものは、トルコ南東部におけるクルディスタン労働者党に対する対ゲリラ作戦で現在も使用されているほか、アメリカ陸軍でも礼砲用途で少数が運用されています。

陸上自衛隊には150門以上が供与され、各方面隊直轄の特科部隊（第1特科団や各特科群）において、より大口径の榴弾砲やロケット砲を補完する形で配備されました。しかし、1980年頃から返納が開始され、1980年代後半には運用を終了しました。現在では、一部の駐屯地に展示用として残されているのみです。

諸元・性能 (M8砲架)

種別: 榴弾砲
口径: 75mm
砲身長: 1,200mm
重量: 650kg
全長: 3,200mm
砲員数: 6-8名
砲尾: 水平鎖栓式閉鎖機
反動: 液気圧式駐退復座装置
砲架: 単脚式
俯仰角: -5~+45°
旋回角: 左右3°
最大射程: 8,925m
発射速度: 最大10発/分、持続6発/分
弾薬: 半完全弾薬筒（M66 HEAT弾のみ完全弾薬筒）
砲弾:
M48榴弾 /67式榴弾: 有効範囲正面幅20m×縦深15m
M66 HEAT弾: 侵徹長 86mm

脚注・参考文献

朝雲新聞社 '74自衛隊装備年鑑

M116 75mm榴弾砲