M5 3インチ砲

M5 3インチ砲： 第二次世界大戦におけるアメリカの対戦車砲

M5 3インチ砲は、第二次世界大戦中にアメリカ合衆国が開発した対戦車砲です。この砲は、T9高射砲の3インチ（76.2mm）砲身とM2 105mm榴弾砲の部品を組み合わせて開発されました。戦車駆逐大隊の牽引砲部隊が本砲を運用し、1943年以降のイタリア戦線・西部戦線で使用されました。

開発の背景

アメリカ陸軍は当初、M3 37mm対戦車砲を配備していましたが、より強力な砲の必要性を認識していました。そこで、既存のM1897 75mm野砲やM3 75mm戦車砲を改造した牽引砲などが急造されました。しかし、より本格的な対戦車砲の開発が求められ、T9高射砲を原型とする新型砲の開発が始まりました。

開発と設計

新型対戦車砲は、T9高射砲の3インチ砲身とM2榴弾砲の閉鎖機・駐退復座機・砲架を組み合わせて開発されました。試作砲はT10 3インチ砲と名付けられ、試験の結果、既存の砲よりも優れた性能を持つことが明らかになりました。そして、M5 3インチ砲として制式化され、砲架はM1として採用されました。

M5 3インチ砲の砲身は右回りの28条施条が刻まれ、25口径で1回転する構造でした。閉鎖機は手動操作の水平閉鎖式、駐退復座機は液気圧式を採用。砲架は開脚式で、砲尾の下に平衡ばねを備えていました。車輪は空気式でした。

1943年11月には、防盾をM2榴弾砲の平坦なものから傾斜を有する新型のものに変更したM6砲架が制式化され、M1砲架から換装されました。

配備と運用

M5 3インチ砲は、既存の対戦車砲よりも性能が向上していましたが、その規模と重量から、歩兵部隊からは過大と見なされました。また、戦車駆逐部隊はより機動性に富む戦車駆逐車を求めていました。しかし、最終的にはAGF（陸軍地上軍管理本部）の圧力により、戦車駆逐大隊に配備されることとなりました。

戦車駆逐大隊は、12門の砲を有する中隊を3個持ち、1個大隊あたり36門の牽引砲を運用しました。砲の牽引にはM3ハーフトラックが用いられましたが、後にM39多目的装甲車に換装されました。

これらの牽引砲大隊は、対戦車能力を向上させる目的で陸軍の師団に配属され、歩兵師団、機甲師団、空挺師団などで運用されました。また、牽引砲大隊を中隊に分割して別々の師団に配備したり、1つの師団が複数の戦車駆逐大隊を持つ例もありました。

戦歴と評価

M5 3インチ砲は、1943年10月にイタリア戦線に投入され、その後、西部戦線でも運用されました。モルタンの戦いでは、第823戦車駆逐大隊が本砲を用いて敵戦車を撃破し、サン・バルテルミーの防衛に貢献しました。

対戦車砲としての役割の他に、M5 3インチ砲は師団野砲を補完する火砲として、間接照準射撃や構造物に対する直接照準射撃にも使用されました。しかし、人力で動かすには規模と重量が過大であり、対戦車砲としての能力にもやや物足りない面がありました。また、弾薬の問題も存在し、離脱装弾筒付徹甲弾（APDS）は開発されず、硬芯徹甲弾（APCR）の配備も定かではありませんでした。

バルジの戦いでは、牽引砲部隊は自走砲部隊に比べて多くの損失を出し、戦果も少なかったことから、指揮官や兵士は機動力と防護力を有する戦車駆逐車をより評価するようになりました。1945年1月、戦争省は全ての牽引砲部隊を自走砲部隊に改編するよう命じ、M5 3インチ砲は前線から徐々に引き上げられました。

現在

現在でもM5 3インチ砲は、式典で使用される礼砲として運用されています。第3歩兵連隊に所属する大統領礼砲小隊がフォート・マイアーで本砲を運用し、主にワシントン首都圏における儀礼で使用されています。

弾薬

M5 3インチ砲は、非分離式の弾薬筒を使用し、薬莢は3インチ薬莢Mk IIM2（薬莢長585mm・リム付）を使用します。

登場作品

ゲーム
R.U.S.E.：アメリカの対戦車砲として登場

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