MAS艇 (日本海軍)

MAS艇: 日本海軍の輸入魚雷艇

MAS艇（MASてい）は、日本海軍がイタリアのバリエット社から輸入した魚雷艇です。この艇は後に「一号隼艇」（H-1型）として改造され、日本の海軍作戦に貢献しました。MAS艇の導入時期は1939年（昭和14年）頃と考えられており、当時の試作艇であるT-0型の建造決定と同時だったと推測されています。

導入と特徴

『海軍造船技術概要』によると、導入されたのはMAS501型ですが、今村好信氏はこれがMAS451型であると推測しています。ジェノバでの公試では計画していた速力の50ノットには達しませんでしたが、バリエット社では50.21ノットが記録され、公試は合格とされました。その後、箱崎丸によって日本へ輸送され、1940年8月頃に横須賀に到着しました。購入価格は50万円であり、艇体は鋼製、V型2段ステップの構造を持っていました。

横須賀沖での試験ではエンジンの調子から48.5ノットの速力を記録しましたが、日本海軍の艦船ではこの速度が最高速でした。MAS艇の導入を受けて、一号型魚雷艇が建造される際には、MAS艇の実験結果が参考にされたとのことです。

エンジン性能

MAS艇には、イソッタ・フラスキーニ社製の水冷W型18気筒エンジンが2基搭載されていました。このエンジンは日本海軍によって分解され、三菱重工業で製造されることになりました。日本海軍が名付けた「71号6型」のエンジンは、丸子機器製作所において1942年6月に設備が設置され、1943年2月には実用機が完成しました。当初は月産3〜4台の生産でした。増産の要望に応じて、茨城に新しい工場が設立され、生産体制は整っていきましたが、工員不足や部品の供給問題から目標の月産40台には及ばず平均的には月産20台のみでした。このエンジンは航空機用とは異なり、アルミを多く使用していたため、1945年1月には製造が中止されました。

H-1型およびその後

太平洋戦争の中盤には、米軍の魚雷艇がソロモン海域で活躍しました。このような状況を受けて、MAS艇は衝撃のある砲力を備えた「一号隼艇」として改造されることになりました。改造は1943年に行われ、計画番号はH-1となりました。本艇の最後は不明ですが、同年10月の横須賀港から出港した魚雷艇隊の中に本艇が含まれていると今村氏は推測しています。

H-1型を基にして、H-2型も建造されました。『世界の艦船』においては、H-1およびH-2は「1号隼」型としてまとめられています。

18m型魚雷追躡艇

また、魚雷追躡艇という雑役船もあり、MAS艇をデッドコピーした18m型魚雷追躡艇が、1944年秋に横浜で建造されました。この艇は頑丈な船体を持ち、1945年1月には冬の嵐の中でも横須賀へ無事に回航されたと言われています。排水量20トンで、全長18メートル、幅4.42メートルのサイズを持ち、搭載されたガソリンエンジンは合計で1,440馬力を発揮し、速力は44ノット、航続力は170海里に達します。乗員は6名で、実用的な設計がなされていました。

参考文献

• - 今村好信『日本魚雷艇物語 日本海軍高速艇の技術と戦歴』光人社、2003年
• - 中川努「日本海軍特務艦船史」
• - 『世界の艦船 増刊第47集』（海人社、1997年）
• - 日本造船学会『昭和造船史 第1巻』（原書房、1981年）
• - 福井静夫『福井静夫著作集第10巻 日本補助艦艇物語』（光人社、1993年）

このように、MAS艇は日本における魚雷艇の歴史において重要な役割を果たしており、その技術や改造は後世にまで影響を与えました。

もう一度検索