Mac OS X v10.0

Mac OS X v10.0、通称「Cheetah」は、Appleが2001年3月24日にリリースしたMac OS Xシリーズの最初のバージョンです。それまでのClassic Mac OSとは一線を画す、全く新しいOSとして登場しました。このリリースは、Macintoshの歴史において大きな転換点となり、その後のmacOSの基礎を築く重要な一歩となりました。

システム要件と概要



Mac OS X v10.0のシステム要件は、PowerPC G3以降のプロセッサを搭載したMacintosh、最低64MBのRAM（128MB以上を推奨）、そして最低800MBのHDD容量（1.5GB以上を推奨）でした。このOSは、OPENSTEPの技術をベースに、Classic Mac OSの要素を融合させたもので、従来のMacintoshに比べて安定性が大幅に向上しました。ユーザーインターフェースには「Aqua」という名称の新しいものが採用され、デスクトップやFinderのデザイン、機能が大きく変更されました。

UNIXベースであるため、ターミナルからUNIXコマンドを実行できる点も特徴です。Mail、TextEdit、Chess、Previewなど、NEXTSTEPやOPENSTEP由来のアプリケーションが付属しており、開発環境として評価の高かったInterface BuilderとProject BuilderもCD-ROMとして同梱されていました。当初1999年秋にリリース予定でしたが、度重なる延期を経て2001年3月にようやくリリースされました。

しかし、初期のバージョンであったため、いくつかの制約や欠点もありました。DVDプレーヤーが搭載されておらず、全体的な動作速度がMac OS 9に比べて遅く、機能も少ないという問題がありました。また、対応するハードウェアドライバやアプリケーションが限られており、Adobe Photoshop、Adobe Illustrator、Microsoft Word、Microsoft Excelなどの主要アプリケーションがネイティブに動作しないという課題もありました。iTunesも初期には付属しておらず、ソフトウェアアップデートで後から提供されました。これらの問題は、半年後にリリースされたMac OS X v10.1で段階的に解消されていきました。v10.1のリリース時には、v10.0ユーザー向けに無償アップグレードCD-ROMが配布されました。

主な新機能



  • - Aqua: 水を意識した透明感のあるインターフェースが特徴で、常時アンチエイリアス処理が施され、アルファチャネルを利用した半透明効果が多用されています。
  • - Dock: NEXTSTEPから引き継がれた機能で、半透明のデザインが特徴です。サイズを無段階に変更でき、CDの再生やシステム設定へのアクセスが可能です。Docklingも付属しています。
  • - Appleメニュー: システムの再起動や終了、ネットワーク設定、システム環境設定、ソフトウェアアップデートなどを呼び出すためのメニューです。
  • - アプリケーションメニュー: アプリケーションの終了や環境設定などを呼び出すメニューです。
  • - サービスメニュー: Cocoaアプリケーションの機能を他のアプリケーションから呼び出すことができます。
  • - ヒラギノフォント: OpenTypeに対応し、ヒラギノフォント6書体が標準搭載されました。
  • - PDF出力: 印刷をサポートするアプリケーションでは、PDF形式での出力が可能です。
  • - Classic環境: Mac OS 9の互換環境を提供し、Mac OS 9.1が付属しています。
  • - マルチユーザー: Mac OS 9の疑似マルチユーザー機能とは異なり、真のマルチアカウントOSとなっています。
  • - スクリーンセーバー

主要なテクノロジー



  • - Cocoa (API): OPENSTEP直系のフレームワークで、従来のMac OSのソフトウェアを構築するのには利用できません。
  • - Carbon (API): 従来のMac OSのToolbox APIをMac OS X用に整理・移植したAPIです。
  • - BSDサブシステム: UNIX互換環境を提供します。
  • - NetInfo: NEXTSTEP由来の管理情報データベースとディレクトリサービス機能です。
  • - プロパティリスト: データシリアライゼーションのためのプロトコルで、リソースフォークに似た機能を持っています。
  • - Quartz: 2D描画とウィンドウ合成を担うPDFベースのエンジンで、常時アンチエイリアス処理を行います。
  • - QuickTime: Mac OS Xのマルチメディア技術の中核を担います。
  • - OpenGL: 3D描画を担うコンポーネントです。
  • - XNU: Mac OS Xのカーネルで、プリエンプティブマルチタスクやメモリ保護機能といったOSの中核機能を担います。

付属アプリケーション



  • - Finder: Mac OSのFinderと同名ですが、Carbonによる完全な新規設計です。ウィンドウにツールバーを搭載し、最大128ドットのアイコン、255文字までのファイル名、NEXTSTEP風のカラム表示などをサポートしています。ただし、フォルダナビゲーションやラベルなど、従来のFinderにあった一部の機能は搭載されておらず、後のバージョンで復活しました。
  • - Mail: Appleが開発した標準のメールクライアントです。
  • - Address Book: アドレス帳として機能するソフトウェアです。
  • - Activity Monitor
  • - Console
  • - Calculator: 電卓アプリケーションです。
  • - Clock: 時計アプリケーションで、デジタル表示とアナログ表示の切り替えが可能で、半透明表示もできます。
  • - TextEdit: 従来のSimpleTextに代わるテキストエディタで、32KBを超えるテキストファイルの編集が可能で、リッチテキストにも対応しています。
  • - Chess: 3D表示のチェスゲームです。
  • - システム環境設定
  • - Terminal: UNIX系端末エミュレータで、UNIXコマンドを利用できます。ウィンドウの半透明表示も可能です。
  • - Preview: 画像やPDFを扱うためのソフトウェアです。
  • - Print Center: プリンタや印刷ジョブの管理を行います。
  • - QuickTime Player
  • - Sherlock 2
  • - Stickies: 付箋アプリケーションです。
  • - Internet Explorer for Mac: Microsoft製のウェブブラウザです。

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