Nationalドキュメンタリー特集

『Nationalドキュメンタリー特集』は、1982年4月2日から1983年9月30日まで、日本テレビ系列で毎週金曜22:00から22:54まで放送されたドキュメンタリー番組です。松下電器産業（現パナソニックホールディングス）の一社提供で、約1年半にわたって放送されました。

番組は、「人と歴史」「人と現代」「人と自然」「人と未来」という4つの大きなテーマを軸に構成されていました。世界各国で撮影された貴重な映像素材を用い、多角的な視点から社会問題や自然環境、未来への展望などを深く掘り下げていくのが特徴でした。

ナレーションは、中田浩二氏、城達也氏、江守徹氏、愛川欽也氏といった、当時第一線で活躍していたベテラン声優陣が担当。エンディングテーマの提供読みは、政宗一成氏が務めました。落ち着いた語り口と、映像の持つ重厚感が見事に調和し、視聴者の心を深く揺さぶる演出がなされていました。

番組の大きな特徴として、大晦日スペシャルの放送があります。1982年12月31日には、『Nationalドキュメンタリー特集 特別企画 21世紀の未来ビジョン 日本が劇場国家を脱するために』と題した特別番組が放送されました。これは日本テレビ開局30周年記念番組の一環として放送され、22:00から23:19までの1時間19分にわたり、日本社会の未来像を多角的に論じています。

この大晦日スペシャルでは、「日本は今21世紀に向けてシナリオを必要としている。しかし本当にそれをつくれるのか」という問題提起のもと、当時京都大学教授であった矢野暢氏をコメンテーターに迎え、活発な議論が展開されました。出演者は、学術、文化、経済、芸術など幅広い分野の第一人者たちで構成されていました。山本七平氏、梅原猛氏、奈良本辰也氏といった著名な知識人をはじめ、ノーベル賞受賞者である福井謙一氏や江崎玲於奈氏も出演し、それぞれの専門的見地から未来への展望を語りました。

さらに、坂本龍一氏、諸井誠氏といった音楽家や、天谷直弘氏、武山春雄氏、牛尾治朗氏といった経済界の重鎮も出演。国際的な視点を取り入れるため、スウェーデンのオロフ・パルメ首相や、著名な文化人類学者であるクリフォード・ギアツ氏なども出演しました。出演者の顔ぶれを見るだけでも、この番組がいかに意欲的な企画であったかが分かります。

スポンサーである松下電器産業の意向もあり、番組は1年半で終了。1983年10月からは、タイトルを『SEIKOワールドドキュメント』に変更して放送されました。松下電器産業はその後しばらく日本テレビでの一社提供番組から撤退しましたが、1984年10月には『徳光和夫のTVフォーラム』で一社提供を再開しました。

『Nationalドキュメンタリー特集』は、単なるドキュメンタリー番組にとどまらず、日本の未来を考えるきっかけを与えてくれた、重要な番組であったと言えます。豪華な出演者陣、高度な映像技術、そして社会への鋭い洞察が、この番組を記憶に残る名作として際立たせています。

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