NetBeans

NetBeansとは

NetBeans（ネットビーンズ）は、オラクル（買収以前はサン・マイクロシステムズ）を中心としたコミュニティによって開発されている、オープンソースの統合開発環境（IDE）です。Java、PHP、C言語、C++、JavaScript、Groovyなど、複数のプログラミング言語に対応しており、NetBeans Platformを基盤として、さまざまなモジュールを組み込むことができます。特に、GUIエディタ（Project Matisse）はNetBeansの大きな特徴の一つです。

概要

NetBeansは、ほぼ100%Javaで記述された統合開発環境です。バージョン4.0以降では、Java仮想マシンの高速化により、ネイティブ環境との速度差はほとんど感じられなくなりました。オラクルが開発しているため、最新のJavaにいち早く対応できるという利点があります。例えば、Java SE 5.0が登場した際には、他のIDEに先駆けてジェネリックやアノテーションといった新機能に対応しました。GUI開発においては、コンポーネントを自由に配置できる「フリーデザイン」機能など、優れた機能を持っています。

多言語対応もNetBeansの特徴の一つで、インストール直後から日本語を含む多くの言語を利用できます。開発できる言語は、Java、JavaScript、PHP、C/C++、Groovyなど、パッケージによって異なります。また、Webアプリケーションに必要なApache TomcatやGlassFishといったアプリケーションサーバーが同梱されているパッケージもあり、別途インストールする手間を省くことができます。

Java IDEとして広く利用されているEclipseと比較されることが多いですが、シェア、多機能性、プラグインの豊富さではEclipseに一日の長があります。NetBeansはバージョン3.51までJava Look&Feelを使用していたため、特にWindowsユーザーには受け入れられにくい面がありました。しかし、3.6でSystem Look&Feelに変更したことで、ユーザーが増加し始めました。

沿革

NetBeansは、バージョン4.0からJava SE/EEのリファレンス的な開発環境としての側面を強めています。バージョン5.5からは、WebサービスやパーシスタンスAPIなどのスムーズな開発が可能になり、UMLやJSFのビジュアル開発も取り込まれました。

バージョン6.0では、RubyやJavaScriptのサポート、プロファイラの統合、ビジュアルWebJSFと通常のWebプロジェクトの統合、Swingアプリケーションフレームワークの搭載、エディタの大幅な見直しやレスポンスの改善が行われました。また、Java以外の言語のサポートや、複数のTomcatサーブレットコンテナ、各種アプリケーションサーバへの対応など、標準機能でカバーする範囲が広がりました。使用するパッケージを選択できるインストーラが導入されたのもこのバージョンからです。

バージョン6.1では、PHPへの暫定的な対応が開始され、RubyやJavaScriptのサポートも強化されました。また、Spring2.5がWebプロジェクトのフレームワークとしてサポートされ、JSR311としてRESTful Webサービスもサポートされました。バージョン管理システムとしては、NetBeans自体がMercurialを利用するようになったため、Mercurialが標準サポートされました。

バージョン6.5では、Pythonへの暫定的な対応、PHPの正式な標準対応、JavaScriptフレームワーク（prototype.js、jQueryなど）のサポート、Hibernateのサポートなどが追加されました。また、データベースの扱いが強化され、SQLを書かなくてもデータの編集が容易になりました。このバージョンから、多言語版のリリースが英語版と同時になりました。

バージョン6.7では、JIRAやBugzillaといった課題追跡システムに対応し、継続的インテグレーションツールであるHudsonとの統合機能が追加されました。プロジェクト形式としてMaven2が標準でサポートされ、PHPUnit、Selenium、Rubyのリモートデバッグ、C/C++でのプロファイリングがサポートされました。品質向上のための機能が大幅に強化されたのがこのバージョンの特徴です。

その後、バージョン7.0でPythonとRubyのサポートが外れ、7.1でJavaFXとCSS3のサポートが追加されました。7.2ではパフォーマンスチューニングが中心でしたが、Amazon Elastic Beanstalkなどのクラウドリソースへの対応やSubversionの組み込みなどの新機軸がありました。7.3では、新しいJavaScriptエンジン、組み込みWebkitブラウザ、FirefoxやChromeとの連携、HTML5やCSS3への対応強化など、Webアプリケーション開発を中心とした大型の変更が予定されています。

また、オラクルによる公式サポートはありませんが、Scalaも動作します。Scala開発チームが公式のプラグインをリリースしています。

歴史

NetBeansの起源は、1996年に始まったチェコの学生によるプロジェクト「Xelfi」に遡ります。Xelfiは、Javaで書かれた最初のIDEであり、1997年に最初のプレリリースが行われました。その後、チェコの実業家Roman Stanekの支援を得て、ネットワーク環境を前提としたJava Beansコンポーネント開発用のIDEとして開発が進められました。この基本構想が、NetBeansの名前の由来となっています。NetBeansの名を冠した最初のリリースは、1999年です。

1999年はNetBeansにとって重要な年でした。サン・マイクロシステムズがNetBeansと契約し、その後別のツールであるForteを獲得しましたが、NetBeansをForte for Javaの名でリリースしました。これは当時の知名度を優先したビジネス判断でしたが、ほどなくNetBeansの名は復活し、現在に至っています。Xelfiに関わったメンバーの多くは、現在もNetBeansコミュニティで活躍しています。

サン・マイクロシステムズの買収

2010年1月にオラクルがサン・マイクロシステムズを買収しました。オラクルは元々Javaの統合開発環境JDeveloperを開発していたため、NetBeansが経営戦略によって消滅するのではないかという懸念がありました。しかし、オラクルはJDeveloperを置き換える計画はなく、NetBeansをJavaエコシステムの重要な要素と見なしており、開発を継続すると発表しました。

オラクルは、NetBeans IDEをJava開発向けの軽量IDEとして位置づけ、Java EE6、Java ME、スクリプト言語に注力し、モバイル開発環境やスクリプト言語へのフォーカスを強める方針を示しました。また、Eclipseへの投資も継続する方針を表明しており、IDEにはそれぞれ長所と短所があるため、多様であるべきとの考えを示しました。

Apacheソフトウェア財団への寄贈

2016年、オラクルはNetBeansをApacheソフトウェア財団に寄贈することを提案し、プロジェクトはApache Incubatorに登録されました。2019年にはApache Incubatorを脱し、トップレベルプロジェクトに昇格しました。

NetBeansの機能

NetBeansには、以下のような主要な機能があります。

プラグイン: 標準で多くの機能が提供されていますが、プラグインによって機能を追加できます。NetBeansコミュニティや多くのベンダーから提供されています。
ビルドツール: JavaのビルドにはApache Antが標準で利用され、コンパイル作業が容易に行えます。
コード支援: クラス、変数、関数などのコード補完機能があり、開発者の作業を支援します。JavadocにJava SEのAPI日本語ドキュメントを指定すれば、コード補完中に日本語の説明文が表示されます。
リファクタリング: クラス名、メソッド名、変数名などを安全に変更できます。
データベース管理: JDBCドライバを使ってデータベース管理システムに接続し、データ操作を行えます。
バージョン管理システム: Git、Mercurial、Subversionの3つが利用できます。
xUnit: JUnitやPHPUnitなどのユニットテストフレームワークが使用できます。

対応オペレーティングシステム

NetBeansはJavaで記述されているため、Java VMを搭載したオペレーティングシステム上で動作します。公式にサポートされているオペレーティングシステムは以下の通りです。

Microsoft Windows 7 Professional
Microsoft Windows Vista SP1
Microsoft Windows XP Professional SP3
Ubuntu 9.10（12.04推奨）
Solaris 11 Express
Mac OS X v10.6 Intel（Mac OS X Lion推奨）

その他、Oracle Enterprise Linux 5、Ubuntu 8.x および 10.04、Red Hat Enterprise LinuxなどのLinuxディストリビューションやFreeBSDでも動作が確認されています。

ライセンス

NetBeansのコードは、以前はCommon Development and Distribution License (CDDL)とGNU General Public License v2 (GPLV2)のデュアルライセンスで公開されていましたが、Apacheソフトウェア財団への寄贈後はApache License 2.0に一本化されました。

関連製品

Java Studio Creator: サン・マイクロシステムズが開発したNetBeansベースの無償IDE。ウェブGUI開発をDreamweaverのような感覚で容易に行えます。
JDeveloper: オラクルが開発したJavaの統合開発環境。

ねこび〜ん

ねこび〜んは、NetBeansのマスコットキャラクターで、カネウチカズコによって作成されました。猫とNetBeansを掛け合わせたもので、クリエイティブ・コモンズ表示-継承2.1日本ライセンスで提供されています。

2008年2月27日に、仙台のグループ「東北デベロッパーズコミュニティ」の設立総会後の懇親会で、カネウチカズコが見せたキャラクター画像がきっかけとなり、「NetBeansのキャラクターが欲しい」という声から誕生しました。現在では、イベントでの利用やグッズ制作など、幅広く活用されています。

外部リンク

Welcome to Apache NetBeans: 公式ウェブサイト
NetBeans 日本語サイト
NetBeans.jp NetBeans 日本コミュニティー
PlanetNetBeans.org プラネットNetBeans
ja:NetBeans ねこび〜ん
* ねこび〜んファンサイト

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