OS/360

OS/360とは

OS/360は、IBMが1964年に発表したメインフレームコンピュータSystem/360向けに開発されたオペレーティングシステム（OS）です。正式名称は「IBM System/360 Operating System」です。世界初の本格的な商用OSとして、その後のコンピュータ業界に大きな影響を与えました。

OS/360の特徴

OS/360は、System/360の汎用性を活かし、商用計算と科学技術計算の両方に対応しました。主な特徴として以下の点が挙げられます。

汎用性: 商用計算と科学技術計算の両方に対応。
バッチ処理: 80桁のパンチカードを入力としたバッチ処理を起源とする。
EBCDICコード: 文字コードとしてEBCDICを採用。
DASD: 磁気ディスク装置（DASD）を扱う最初のOS。
アセンブリ言語: OSはSystem/360アセンブリ言語で記述。
企業向け: プログラム（API）と運用管理（オペレータコマンド、JCL）を明確に分離。
主流OS: System/360の大ヒットにより、メインフレームの主流OSとなる。
継承: 現在のIBMメインフレームOS（z/OS）もOS/360を継承（上位互換）。

OS/360ファミリー

OS/360には、機種の規模に応じて複数のファミリーが存在しました。

BOS (Basic Operating System): 小型機種向け、最小構成用。
TOS (Tape Operating System): テープ装置のみの構成用。
DOS (Disk Operating System): ディスク装置のある構成用（現在のz/VSEの起源）。
PCP (Primary Control Program): シングルタスク処理。
MFT (Multiprogramming with a Fixed number of Tasks): マルチタスク処理、タスク数固定。
MVT (Multiprogramming with a Variable number of Tasks): マルチタスク処理、タスク数可変（現在のz/OSの起源）。

また、OS/360ファミリーではありませんが、System/360では、タイムシェアリングOSのTSS/360、仮想化OSのCP/CMS、ユーザー大学開発のMUSIC/SPなども使用されました。

OS/360の歴史

OS/360は、当初、3つのコントロールプログラムファミリーとして誕生しました。機能が増加するにつれて、そのサイズも大きくなっていきました。最初に登場したのは、ジョブを順に処理するシングルタスクのPCPでした。次に、マルチタスクを処理するMFTが登場しましたが、メモリ容量とタスク数が固定されていました。最後に、メモリサイズとタスク数が可変のMVTが登場しました。

OS/360は、IBMのバッチ処理スクリプト言語であるJCLを生み出しました。しかし、IBMの組織的な混乱や巨大ソフトウェア開発の経験不足から、リリースは遅延しました。当初、1965年にシンプル版、1966年に複合版の出荷を予定していましたが、それぞれ1年遅れでPCPが1966年、MVTが1967年にリリースされました。

そのため、System/360の顧客には代替として、よりシンプルなBOS、TOS、DOSファミリーが急遽提供されました。特にDOSは、当初は暫定的なツールとして開発されましたが、その後も発展を続け、仮想記憶を扱うDOS/VS、DOS/VSE、VSE/ESA、そして現在のz/VSEへと変遷していきました。

System/370用に可変アドレッシングを行うハードウェアが開発された際、OS/360ファミリーもアップグレードされました。MFTはOS/VS1、MVTはOS/VS2と名前を変え、OS/VS2はSVS (Single Virtual Storage)とMVS (Multiple Virtual Storage) に発展しました。MVSは、System/370、System/390、zSeries、System zのOSとして、OS/390|OS_390、z/OSと名前を変えながら現在も使用され続けています。

2000年以降、OS/360はパブリックドメインとなり、フリーソフトとしてダウンロード可能になりました。Linux、Windows、macOS上で動作するフリーのエミュレータ（Hercules emulator）上で、System/360ハードウェアと同じように動作させることができます。

OS/360から得られた教訓

OS/360プロジェクトを率いたフレデリック・ブルックスは、その経験をもとに『人月の神話』を著しました。この書籍では、ブルックスの法則やセカンドシステム症候群など、ソフトウェア開発における重要な教訓が記されています。

まとめ

OS/360は、世界初の本格的な商用OSとして、その後のメインフレームOSの基礎を築きました。その歴史は、コンピュータ業界の進化を物語るとともに、ソフトウェア開発における重要な教訓を私たちに与えてくれます。

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