OV-10 (航空機)

OV-10 ブロンコ（OV-10 Bronco）

OV-10 ブロンコは、アメリカ合衆国のノースアメリカン社によって開発されたCOIN機（対反乱作戦機）であり、主に偵察と近接航空支援の任務を担います。1959年にアメリカ海兵隊が新たな観測機の開発を決定し、のちにアメリカ陸・海・空軍が共同で開発を進めました。最終的には、1964年にノースアメリカン社の設計案が選ばれ、1965年7月に初飛行を果たしました。

開発の背景と経緯

OV-10の開発は、アメリカ国内の様々な軍事ニーズの中から生まれました。それぞれの軍が、OE-1 バードドッグの後継機や攻撃機、さらには独自の近接航空支援機を求めていましたが、最終的には三軍で共通に利用できるCOIN機の必要性が認識されました。1963年9月に三軍での共同開発に合意し、軽武装偵察航空機（LARA）計画が立ち上げられました。

要求された基本性能には、優れた短距離離着陸能力、最大速度、武装の装備能力が含まれており、試作機であるYOV-10Aが開発されました。1967年にはアメリカ空軍と海兵隊に量産化が開始され、124機以上が実戦投入されました。

設計の特徴

OV-10のデザインは非常にユニークで、主翼は高翼配置にあり、後部には双ブーム形式を用いています。この設計により高いSTOL（短距離離着陸）能力を実現しました。ここでは、滑走路や艦上からも使える機体として、その性能が評価されました。

主翼にはダブルスロテッド式のフラップがあり、この構造によって低速時でも高い揚力を発生させることが可能です。乗員二名が搭乗するタンデム複座型の座席配置には便利なゼロゼロ式の射出座席が装備され、安全性にも配慮されています。

性能と運用

OV-10の基本性能には、最大離陸重量や航続距離などが含まれます。最大速度は250ノット（約463km/h）であり、搭載量は6名の兵士または貨物910kgまでを運ぶことが可能です。また、エンジンにはギャレット社製のターボプロップエンジンが搭載され、機体の機動性を高めています。

運用面では、OV-10はアメリカの軍事活動において重要な役割を果たしました。特にベトナム戦争では、前線航空管制機としての使用や、近接航空支援に活躍し、その特異な能力から高く評価されました。

1970年代に入ると、OV-10の夜間攻撃能力向上が求められ、OV-10Dが開発されました。このモデルでは、最先端の電子機器やセンサーが搭載され、より精密かつ効果的な攻撃が行えるようになりました。

退役と現代での使用

最終的にはOV-10は360機製造され、アメリカ空軍や海兵隊でサービスが続けられましたが、1990年代には新型機に交代し退役しました。退役後は、いくつかの機体が消防活動やNASAの試験機として再利用されています。2015年にはISILとの戦闘において改良型のOV-10G+が投入され、運用コストの低さから注目を集めました。

エピソード

OV-10の運用中に、ベトナム戦争でのカンボジア越境作戦中に北ベトナム部隊と接触した際、パイロットの判断で未舗装の直線道路に強行着陸し、負傷者の脱出を成功させたエピソードがあります。この判断力と機体の可変性が、OV-10の真価を物語っています。

OV-10 ブロンコは、その革新的な設計と運用実績で、現代の航空機に多大な影響を与えた機体であると言えるでしょう。

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