R級駆逐艦 (初代)

R級駆逐艦：イギリス海軍の駆逐艦

R級駆逐艦は、イギリス海軍が第一次世界大戦中に建造した駆逐艦の艦級です。この艦級は、アドミラルティR級、ソーニクロフトR級、アドミラルティ改R級といった派生型を含み、さらにヤーロウ後期M級も同系列として扱われることがあります。

歴史的背景

初期の駆逐艦はレシプロ蒸気機関を使用していましたが、その性能には限界がありました。そのため、1897年の「ヴァイパー」で直結タービンが試験的に採用され、1905年のF級から本格的に導入されました。しかし、直結タービンにも伝達効率の問題があり、歯車減速機の採用が求められました。

1910年のI級パーソンズ特型でセミ・ギヤード・タービンが試験され、1913年のL級パーソンズ特型でオール・ギヤード・タービンが採用されました。この実績を踏まえ、1915年7月、イギリス海軍は、今後の駆逐艦をすべてオール・ギヤード・タービンと2軸推進とする方針を決定しました。この決定に基づいて、初のオール・ギヤード・タービン量産艦として、R級駆逐艦の建造が開始されました。

設計の特徴

R級駆逐艦の基本的な艦容は、アドミラルティM級に類似しており、船首楼型で3本煙突を備えています（ヤーロウ後期M級は2本煙突）。しかし、艦首は傾斜型となり、船首楼甲板は高められ、2番と3番砲はプラットフォーム上に設置されるなど、細部に改良が加えられています。

ソーニクロフトR級は、アドミラルティR級よりも排水量がわずかに小さく、2番煙突が楕円形であるという特徴があります。アドミラルティ改R級は、荒天時の航行性能を向上させるために船体が強化され、艦橋が後方に移動して第1煙突に近接しています。

R級駆逐艦の主機には、パーソンズ式またはブラウン・カーチス式のオール・ギヤード・タービンが採用されました。このタービンは、高圧タービンと低圧タービンの両方を歯車減速機を介して推進軸に結合するもので、エネルギー変換効率が大幅に向上しました。M級と比較して、燃費は18ノットで15％、25ノットで28％削減され、航続距離が大幅に延伸しました。ソーニクロフトR級の最終艦である「ティーザー」は、1917年7月の公試で、34,237馬力、40.44ノットを記録し、イギリス駆逐艦の最高速力を達成しました。ボイラーはM級と同様に、ヤーロウ式またはホワイト・フォスター式の重油専焼水管ボイラー3缶が搭載されています。

一方、ヤーロウ後期M級は、諸元・性能的にはR級と共通していますが、ボイラーはヤーロウ式重油専焼水管ボイラー4缶、主機はパーソンズ式直結タービンによる2軸推進となっています。

装備

R級駆逐艦の艦砲は、10.2cm砲を3門搭載しており、M級と同様ですが、2番と3番砲はプラットフォーム上に設置されています。装備砲については、アドミラルティR級、ソーニクロフトR級、ヤーロウ後期M級には、L級以来のQF 4インチ砲Mk.IVが搭載されていますが、アドミラルティ改R級では、発射速度を向上させ、45口径長に長砲身化し、仰角を増したMk.Vに更新されました。また、対空兵器として、新型の39口径40mm高角機銃（QF 2ポンド・ポンポン砲）が搭載されました。

水雷装備は、初期には従来の駆逐艦と同様に53.3cm連装魚雷発射管2基を搭載していましたが、第一次世界大戦の戦訓から、対潜兵器として爆雷投射機、防雷具としてパラベーンが追加搭載されました。

同型艦とその後

R級駆逐艦の多くは第一次世界大戦中に戦没するか、戦後に解体されました。しかし、「レディアント」は1920年にタイ海軍に売却され、「プラ・ルアン」として再就役し、退役後も2000年頃まで展示されていました。

R級駆逐艦は、その後のイギリス海軍の駆逐艦設計に大きな影響を与え、その革新的な設計は、後の艦艇の基礎となりました。

もう一度検索