TC-90 (航空機)

海上自衛隊の練習機TC-90：詳細解説

TC-90は、ビーチクラフト キングエアC90をベースに、海上自衛隊が航法訓練用に改造した機体です。計器飛行を含む航法訓練を目的としており、海上自衛隊の第202教育航空隊に28機が配備されています。初期に導入された機体から順次退役が進んでいますが、現在も調達が継続されています。

多様な派生型

TC-90の派生型として、多用機のLC-90が存在します。こちらは、連絡輸送機としての役割も担っており、かつては各航空基地に配備されていましたが、現在は第61航空隊に集約されています。また、かつては国土地理院の地図作成用航空写真撮影機としてUC-90「くにかぜII」も運用されていましたが、既に退役しています。

訓練課程の変遷

かつては、回転翼機課程に進む訓練生もTC-90で航法訓練を行っていましたが、計器飛行に対応したTH-135の導入に伴い、TC-90での訓練課程は廃止されました。アメリカ海軍でも、キングエアC90をベースとしたT-44が大型機パイロットの訓練用として配備されています。

主要諸元

• - 全幅: 15.3m
• - 全高: 4.3m
• - 全長: 10.8m
• - 重量: 4.4t
• - 最高速度: 220ノット（約407km/h、マッハ0.33）
• - 巡航速度: 196ノット（約363km/h、マッハ0.30）
• - 航続距離: 2,150km
• - 実用上昇限度: 9,084m
• - エンジン: プラット・アンド・ホイットニー・カナダ PT6A-20A/21 ターボプロップ（580馬力×2基）
• - 乗員: 6名

型式

• - TC-90: 練習機。初号機から11号機はキングエアC90、12号機から18号機はキングエアC90-1、19号機から34号機はキングエアC90A、35号機以降はキングエアC90GTをベースとしています。
• - LC-90: 多用機。キングエアC90Aがベースです。
• - UC-90「くにかぜII」（退役）: キングエアC90-1を改装した国土地理院の地図作成用航空写真撮影機。

配備先

• - TC-90: 徳島教育航空群第202教育航空隊（徳島）
• - LC-90: 第61航空隊（厚木）
• - かつては、連絡機として第1航空群第1航空隊（鹿屋）、第2航空群第2航空隊（八戸）、第5航空群 第5航空隊（那覇）、第31航空群第91航空隊（岩国）にも配備されていました。
• - UC-90「くにかぜII」（退役）: 徳島教育航空群第202教育航空隊（徳島）

フィリピン海軍への供与

2016年5月、日本はフィリピン海軍へTC-90を最大5機有償貸与することで合意しました。これは、自衛隊装備の他国供与の第一号となります。フィリピンは当初、大型哨戒機P-3Cを希望していましたが、運用コストや難易度からより扱いやすいTC-90が選ばれました。TC-90は哨戒装備を持たないものの、フィリピン海軍の連絡機ブリテン・ノーマン アイランダーと比較して作戦行動範囲が約2倍となり、レーダーなどの追加搭載の余地もあるため、大幅な能力向上が期待されました。

当初は無償譲渡が検討されましたが、日本の財政法により有償貸与となり、2017年3月に2機が引き渡されました。その後、改正自衛隊法により無償供与が可能となり、2018年3月末に貸与されていた2機が無償譲渡され、さらに3機が追加供与されました。供与されたTC-90は、南シナ海での哨戒活動にも投入されています。

後継機

防衛装備庁は、2024年7月31日付でTC-90とLC-90の後継機に関する情報提供企業の募集を開始しており、今後の動向が注目されています。

まとめ

TC-90は、海上自衛隊のパイロット育成に不可欠な訓練機であり、派生型を含め長年にわたり運用されています。また、国際協力の観点から、フィリピン海軍への供与も行われており、その活動は多岐にわたります。後継機の登場が待たれる一方、TC-90は今後も重要な役割を果たし続けるでしょう。

出典

海上自衛隊
TC-90
LC-90

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