TOI-712
TOI-712は、地球からおよそ191光年（約58.6パーセク）離れた、かじき座の方向にある恒星です。この恒星の周りを公転する太陽系外惑星系は、トランジット観測衛星TESSが捉えたデータに基づき、2021年にその存在が確認されました。
TOI-712自体は、太陽（約47億年）と比較するとかなり若い恒星で、推定年齢は約5億年から11億年とされています。その物理的特徴を見ると、質量は太陽の約0.73倍、半径は約0.67倍と、太陽より小ぶりです。表面温度は約4622ケルビンと比較的低温で、スペクトル分類はK4.5Vに分類されます。金属量は太陽とほぼ同等ですが、わずかに低い（太陽の95%）というデータもあります。TIC 150151262などの別名でも呼ばれることがあります。
惑星系の探索は、2019年5月にTESSによるトランジット法観測で始まりました。この初期段階で「TOI-712.01」「TOI-712.02」「TOI-712.03」という3つの惑星候補が特定されました。それぞれの公転周期は約10日、約51日、約54日と推定されましたが、特に内側の2つ（TOI-712.02とTOI-712.03）については軌道が不安定である可能性が指摘されました。その後の詳細な追跡観測の結果、「TOI-712.03」と、後に候補として追加された「TOI-712.04」が、約84.8日の公転周期を持つ単一の惑星に対応していることが明らかになりました。最終的に3つの惑星の存在が確定し、その発見を報告する論文が2021年11月3日にプレプリントサーバーarXivに投稿されました。
確認された3つの太陽系外惑星は、いずれも「ミニ・ネプチューン」と呼ばれるタイプに属します。その半径は地球の約2倍から2.7倍、質量は地球の約5.6倍から8.7倍と見積もられています。
TOI-712 b: 最も主星に近い軌道を巡る惑星で、主星から約0.079天文単位という非常に近い距離を、わずか約9日で一周しています。このため、その平衡温度は約650ケルビン（約377℃）にも達する高温の世界と考えられます。恒星からの強い放射にさらされているため、大気散逸が進みやすく、長い時間をかけて岩石質の地球型惑星に進化する可能性も指摘されています。
TOI-712 c: 2番目の惑星で、TOI-712 bよりやや離れた位置を公転しています。公転周期は約52日です。平衡温度は約370ケルビン（約97℃）と計算されており、地球の大気圧下での水の沸点に近い温度環境にあります。
* TOI-712 d: 3番目の惑星で、主星から約0.34天文単位の軌道を、約85日の周期で回っています。この惑星は、TOI-712のハビタブルゾーン内に位置しています。TOI-712系のハビタブルゾーンは、主星から0.339天文単位から0.844天文単位の範囲、または公転周期に換算すると82.7日から325.3日の範囲と推定されており、TOI-712 dはその内側の境界線に非常に近い位置にあります。平衡温度は計算上約40℃とされていますが、これは大気の温室効果を考慮していないため、実際の表面温度はこれを大きく上回る可能性があります。実際、この軌道はしばしば「Venus Zone」とも呼ばれ、地球の金星のように暴走温室効果によって極めて高温になる危険性が高い領域とされています。
TOI-712 dは、これほど若い惑星系においてハビタブルゾーン内で発見された初期の例の一つです。また、TOI-712 cと共に、主星から比較的離れた軌道を公転するミニ・ネプチューンとしても珍しい存在です。これまでの若い惑星系に関する研究では、形成後間もない惑星は、まだ大気散逸が進んでいないために、観測される半径が大きく見える傾向が示唆されています。しかし、TOI-712系の惑星は、同程度の年齢の他の惑星系で見られるものと比較して、やや小さく見えています。これが、形成時からサイズが小さかったのか、あるいは既にかなりの大気散逸を受けているのかは現在のところ不明です。研究者らは、もし恒星の年齢が推定の下限である10億年未満であれば、惑星がまだ大気の大きな損失を受けていない可能性が高く、その観測された特性はほぼ形成時の状態を反映しているのではないかと考えています。
確認された3つの惑星の他に、「TOI-712.05」と呼ばれる新たな惑星候補も報告されています。この候補は、半径が地球の約0.81倍と地球型惑星に近いサイズを持ち、TOI-712 bよりもさらに内側を約4.2日の周期で公転していると予測されています。しかし、主星の活動によるノイズの影響などから、その存在はまだ確定していません。
TOI-712系は、長周期の惑星が発見されている惑星系の中では比較的明るい恒星の一つです。長周期の惑星が確認されている系自体がまだ少なく、多くはケプラー宇宙望遠鏡が観測した暗い恒星の周りの系でした。また、一般的に小さな惑星からなる系は、惑星同士が比較的近い軌道を回る傾向があります。この観点から、TOI-712 bとTOI-712 cの間には、まだ発見されていない未知の惑星が存在する可能性も示唆されています。
TOI-712恒星の性質
TOI-712自体は、太陽（約47億年）と比較するとかなり若い恒星で、推定年齢は約5億年から11億年とされています。その物理的特徴を見ると、質量は太陽の約0.73倍、半径は約0.67倍と、太陽より小ぶりです。表面温度は約4622ケルビンと比較的低温で、スペクトル分類はK4.5Vに分類されます。金属量は太陽とほぼ同等ですが、わずかに低い（太陽の95%）というデータもあります。TIC 150151262などの別名でも呼ばれることがあります。
惑星系の発見と構成
惑星系の探索は、2019年5月にTESSによるトランジット法観測で始まりました。この初期段階で「TOI-712.01」「TOI-712.02」「TOI-712.03」という3つの惑星候補が特定されました。それぞれの公転周期は約10日、約51日、約54日と推定されましたが、特に内側の2つ（TOI-712.02とTOI-712.03）については軌道が不安定である可能性が指摘されました。その後の詳細な追跡観測の結果、「TOI-712.03」と、後に候補として追加された「TOI-712.04」が、約84.8日の公転周期を持つ単一の惑星に対応していることが明らかになりました。最終的に3つの惑星の存在が確定し、その発見を報告する論文が2021年11月3日にプレプリントサーバーarXivに投稿されました。
確認された3つの太陽系外惑星は、いずれも「ミニ・ネプチューン」と呼ばれるタイプに属します。その半径は地球の約2倍から2.7倍、質量は地球の約5.6倍から8.7倍と見積もられています。
TOI-712 b: 最も主星に近い軌道を巡る惑星で、主星から約0.079天文単位という非常に近い距離を、わずか約9日で一周しています。このため、その平衡温度は約650ケルビン（約377℃）にも達する高温の世界と考えられます。恒星からの強い放射にさらされているため、大気散逸が進みやすく、長い時間をかけて岩石質の地球型惑星に進化する可能性も指摘されています。
TOI-712 c: 2番目の惑星で、TOI-712 bよりやや離れた位置を公転しています。公転周期は約52日です。平衡温度は約370ケルビン（約97℃）と計算されており、地球の大気圧下での水の沸点に近い温度環境にあります。
* TOI-712 d: 3番目の惑星で、主星から約0.34天文単位の軌道を、約85日の周期で回っています。この惑星は、TOI-712のハビタブルゾーン内に位置しています。TOI-712系のハビタブルゾーンは、主星から0.339天文単位から0.844天文単位の範囲、または公転周期に換算すると82.7日から325.3日の範囲と推定されており、TOI-712 dはその内側の境界線に非常に近い位置にあります。平衡温度は計算上約40℃とされていますが、これは大気の温室効果を考慮していないため、実際の表面温度はこれを大きく上回る可能性があります。実際、この軌道はしばしば「Venus Zone」とも呼ばれ、地球の金星のように暴走温室効果によって極めて高温になる危険性が高い領域とされています。
若い惑星系の特徴とTOI-712
TOI-712 dは、これほど若い惑星系においてハビタブルゾーン内で発見された初期の例の一つです。また、TOI-712 cと共に、主星から比較的離れた軌道を公転するミニ・ネプチューンとしても珍しい存在です。これまでの若い惑星系に関する研究では、形成後間もない惑星は、まだ大気散逸が進んでいないために、観測される半径が大きく見える傾向が示唆されています。しかし、TOI-712系の惑星は、同程度の年齢の他の惑星系で見られるものと比較して、やや小さく見えています。これが、形成時からサイズが小さかったのか、あるいは既にかなりの大気散逸を受けているのかは現在のところ不明です。研究者らは、もし恒星の年齢が推定の下限である10億年未満であれば、惑星がまだ大気の大きな損失を受けていない可能性が高く、その観測された特性はほぼ形成時の状態を反映しているのではないかと考えています。
未確認候補
確認された3つの惑星の他に、「TOI-712.05」と呼ばれる新たな惑星候補も報告されています。この候補は、半径が地球の約0.81倍と地球型惑星に近いサイズを持ち、TOI-712 bよりもさらに内側を約4.2日の周期で公転していると予測されています。しかし、主星の活動によるノイズの影響などから、その存在はまだ確定していません。
系全体の特色
TOI-712系は、長周期の惑星が発見されている惑星系の中では比較的明るい恒星の一つです。長周期の惑星が確認されている系自体がまだ少なく、多くはケプラー宇宙望遠鏡が観測した暗い恒星の周りの系でした。また、一般的に小さな惑星からなる系は、惑星同士が比較的近い軌道を回る傾向があります。この観点から、TOI-712 bとTOI-712 cの間には、まだ発見されていない未知の惑星が存在する可能性も示唆されています。
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