TOI-715 b

TOI-715 b

TOI-715 bは、とびうお座の方向に約140光年（約42パーセク）離れた位置にあるM型赤色矮星、TOI-715の周りを公転する太陽系外惑星です。この惑星は地球より大きな直径を持つため、「スーパーアース」に分類されており、特に主星であるTOI-715のハビタブルゾーン（生命居住可能領域）内を軌道運動していることから、生命存在の可能性という観点から注目を集めています。

主星TOI-715

TOI-715は、天の南極に近い領域に位置する赤色矮星です。太陽と比較すると、サイズも質量も小さく、表面温度も低い恒星です。見かけの等級は16.7と極めて暗く、肉眼で観測することは不可能であり、アマチュア向けの小型望遠鏡でも捉えることは困難なほどです。

惑星TOI-715 bの性質

TOI-715 bは、地球の約1.55倍の直径を持つスーパーアースです。主星であるTOI-715からは、約0.083天文単位、距離にして約1240万キロメートルの場所を公転しています。この距離で主星からの放射を受けることにより、惑星の平衡温度は推定で234ケルビン（摂氏マイナス39度）と計算されています。


この惑星は、2023年にNASAのトランジット系外惑星探索衛星（TESS）によって発見されました。TESSは、恒星の前を惑星が通過する際に発生するわずかな明るさの変化（トランジット）を捉えることで、系外惑星を発見するミッションを担っています。TOI-715 bも、このトランジット法によってその存在が確認されました。

ハビタブルゾーン内の惑星としての重要性

TOI-715 bが特に科学者の関心を集める理由は、その軌道が主星のハビタブルゾーン内に位置していることです。ハビタブルゾーンとは、惑星の表面に液体の水が安定して存在できるような、主星からの適切な距離の範囲を指します。液体の水は、現在知られている地球上の生命にとって不可欠な要素であるため、ハビタブルゾーン内の惑星は生命が存在しうる有力な候補と考えられています。

さらに、TOI-715 bは、より限定的な条件を設定した「保守的なハビタブルゾーン」内で発見された、TESSによる最初の惑星であると、発見論文の著者らは強調しています。「保守的なハビタブルゾーン」の概念は、2014年にKoparappuらによって提唱されたもので、惑星が主星から受け取る日射量が、地球が太陽から受ける日射量の約0.42倍から0.842倍の範囲にある領域を指します。TOI-715 bが主星から受け取る日射量は、地球が太陽から受ける量の約0.67倍（誤差範囲を含む）と計算されており、この値は保守的なハビタブルゾーンの定義範囲に見事に収まっています。

将来の観測と他の惑星候補

TOI-715 bは、今後の詳細な観測のターゲットとなる可能性があります。特に、米航空宇宙局（NASA）は、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡（JWST）のような次世代の高性能宇宙望遠鏡を用いて、この惑星の大気組成を分析し、水蒸気などの生命の痕跡となりうる分子の存在を調査する可能性に言及しています。大気の有無やその組成が明らかになれば、TOI-715 bの生命居住可能性についての理解が大きく進展することが期待されます。

また、TOI-715星系には、TOI-715 bの他に、TIC 271971130.02と呼ばれる別の惑星候補が存在する可能性も指摘されています。この候補も、主星のハビタブルゾーン内を公転している可能性があると考えられており、この星系が複数の潜在的な生命居住可能惑星を持つ珍しいケースとなるかもしれません。

TOI-715 bの発見は、赤色矮星周りのハビタブルゾーンに存在するスーパーアースという、系外惑星の中でも特に探査が期待されるタイプの天体に対する理解を深める重要な一歩となります。

もう一度検索