Ta 183 (航空機)

フォッケウルフTa 183（フッケバイン）

フォッケウルフTa 183、愛称「フッケバイン」は、第二次世界大戦中のドイツ空軍が要請した緊急戦闘機計画に応じて開発されたジェット戦闘機です。この機体の愛称は、ヴィルヘルム・ブッシュによる児童文学作品『ハンス・フッケバイン』に登場するカラスの名前から名付けられました。

開発の背景

Ta 183の開発のきっかけは、ドイツ空軍の偵察機が英国本土を偵察中に、アメリカのボーイングB-29スーパーフォートレスを偶然に発見したことです。B-29は高性能で、効果的な迎撃が困難な機体であり、この発見はドイツ空軍にとって深刻な脅威となりました。これを受けて、彼らは革新的なジェット戦闘機の開発を急がざるを得ませんでした。この緊急戦闘機計画は、Ta 183の他にも多くの新しい航空機の設計につながりました。最終的にドイツ空軍はTa 183を制式採用する決定を下します。

フォッケウルフ社は当初、Fw 232という名称を考えていましたが、その番号はすでに使われていたため、最終的にTa 183と改名しました。1944年末に16機の原型機が発注され、初飛行は1945年の春に予定されていたものの、イギリス軍が工場を占拠したことにより、結局1機も完成しないまま終戦を迎えます。

設計と特徴

Ta 183は、40度の後退翼を持ち、ジェットエンジンは胴体後部に搭載されていました。設計には当時の最新技術が取り入れられており、例えば主翼は木製で、翼断面は対称形を採用し、裏返しにすることで左右の主翼の互換性を持たせる工夫がなされていました。また、エルロンとラダーは共通部品として効率化が図られていました。

本機はハインケル・ヒルトHeS 011というドイツ製の第二世代ジェットエンジンを予定していましたが、開発が遅れていたため、暫定的にMe 262に使われていたJumo 004Bを搭載することになりました。

さらに、Ta 183には半埋め込み式の増槽や爆弾を搭載するためのデザインが盛り込まれており、柔軟な運用が可能でした。この機体の設計には、ハンス・ムルトホップ技師の大きな貢献があると言われており、彼は戦後アメリカに渡り、リフティングボディの研究に従事しました。

影響とその後の展開

Ta 183の設計は、戦後の航空機に影響を与えることとなりました。具体的には、アルゼンチンでクルト・タンクがTa 183を基にしたプルキー IIを設計しました。この機体は優れた性能を誇ったものの、高仰角時の失速特性が問題となりました。

また、Ta 183の技術はサーブ 29 トゥンナンの設計にも影響を与えました。サーブの技術者は、ドイツの後退翼に関する研究成果を入手し、それをトゥンナンに活用しました。このように、Ta 183は戦後の航空機開発において重要な役割を果たしました。

Ta 183とMiG-15との関係

ソ連がベルリンに占領後、Ta 183の計画書を入手し、MiG設計局がこのデータをもとにMiG-15を開発したとも言われています。しかし、これには争点があり、両機の実際の設計及び性能には大きな違いが見られます。外見に似ている部分はあるものの、各部の寸法や武装の配置は異なるため、同一視することはできません。

性能諸元

• - 乗員：1名
• - 全長：9.20 m
• - 全幅：10.00 m
• - 全高：3.86 m
• - 空虚重量：2,980 kg
• - 正規離陸重量：5,100 kg
• - エンジン：ハインケル・ヒルトHeS 011（推力1,300 kg)
• - 最高速度：962 km/h
• - 航続距離：2,150 km
• - 上昇高度：14,000 m
• - 武装：

- 固定武装：30 mm機関砲×4
- ミサイル：ルールシュタールX-4×4
- ロケット弾：R4M 55 mm空対空ロケット弾
- 爆弾：最大500 kgの爆装が可能

結論

フォッケウルフTa 183は、第二次世界大戦中における先進的な航空機設計の象徴であり、戦後の航空機技術にも大きな影響を与えました。その革新性は、現在も多くの航空ファンや歴史愛好家の興味を引き続けています。

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