V250 (鉄道車両)

オランダ高速鉄道V250系電車とは

オランダ高速鉄道V250系電車は、2012年にオランダ国鉄傘下のオランダ高速鉄道（現在のNSインターナショナル）とベルギー国鉄が共同で導入した高速鉄道用電車です。列車名のV250は、営業最高速度250km/hに由来します。本記事では、後にイタリアのトレニタリアに譲渡され、ETR700系として活躍するまでの経緯についても詳しく解説します。

導入までの経緯

2009年、オランダ南高速線（HSL-Zuid）とベルギー高速鉄道4号線（HSL 4）が開業しました。これに合わせて、アムステルダム、スキポール空港、ブリュッセル、ブレダを結ぶ高速列車「フィーラ」（Fyra）が運行を開始する予定でした。V250系は、このフィーラの開業に合わせて、2004年にオランダ高速鉄道が16編成（4801F～4816F）、ベルギー国鉄が3編成（4881F～4883F）を発注しました。

当初は2007年の引き渡しと2009年の開業が予定されていましたが、運行に必要なETCSレベル2の保安装置が高速新線に設置されていなかったため、納入は遅れました。ようやく2008年8月に最初の編成がチェコの試験線で試運転を実施し、2009年4月28日に1編成目がオランダに到着しました。

車両概要

V250系は、8両編成19本が製造され、所属国による仕様の差異はありません。設計は、アンサルドブレーダと長年取引のあるピニンファリーナが担当しました。

編成は、片側の3両が1等車、残りの5両が2等車で構成されています。日本風に表現すると、クモロ-サロ-モロ-サハ-サハ-モハ-サハ-クモハとなります。車体はアルミニウム合金製で、先頭車が全長26.95m、中間車が24.5m、全幅は2.87mです。先頭部は普通鋼製で、特徴的な形状からアルバトロス（Albatross）やドードー（Dodo）といった愛称で呼ばれました。灯具は、丸型シールドビームが左右に2つずつ縦に並んでいます。

塗装は、オフホワイトをベースに、1号車から3号車にかけて濃淡3色のスカーレット帯が右上がりに配された「キャンディースティック」カラーです。4号車と5号車には、スカーレット1色でフィーラのロゴが大きく描かれています。

内装は、側壁や妻壁、床板は全車共通で、グレーとバイオレットで配色されています。座席は固定式クロスシートで、ボックスシートに近い配置です。向かい合う2列の座席の間には、折り畳みできない固定式の簡易テーブルが設置されています。座席のモケットと配置は1等車と2等車で異なり、1等車は赤地の1+2列、2等車は青地の2+2列です。

主要機器には、水冷式IGBT-VVVFインバーター制御を採用し、集電装置はシングルアームパンタグラフを両先頭車から2両目の中間車に1基ずつ設置しています。電源装置は直流1500V・3000Vおよび交流25000Vに対応し、ヨーロッパ各国の電化方式に対応しています。また、各国の自動列車保安装置にも対応しています。最高速度は250km/hで、高速鉄道車両としては遅い部類に入りますが、当時のオランダ国内の最高速度が160km/hであったため、高速化の効果は大きかったとされています。

運用と失敗

2009年7月の開業に合わせて運用開始が予定されていましたが、納入遅延や保安装置の未設置により、度重なる延期の末、2012年9月に暫定運用が開始されました。フィーラの本格的な運行開始は12月9日のダイヤ改正からでした。しかし、運用開始直後から様々な不具合が続出しました。警笛の凍結、車体から落下した氷による走行装置の損傷、床板の脱落などが相次ぎ、その主な原因は、耐寒耐雪設備が不十分だったことだと指摘されています。アンサルドブレーダのオランダ向け案件は前例がなく、現地の気候を考慮していなかったこと、また、当初の設計最高速度220km/hを超過する運用が構造疲労を招いたと考えられます。結局、オランダ高速鉄道での運用はわずか1ヶ月で終了し、全車が廃車となりました。ベルギー国鉄は1編成も引き渡されることなく、運行免許を取り消し、高速鉄道計画自体をキャンセルしました。

その後、2014年にオランダ高速鉄道とベルギー国鉄は、製造元のアンサルドブレーダを提訴し、和解に至りました。オランダ高速鉄道は9編成を売却し、補償金を受け取りました。ベルギー国鉄はキャッシュバックを受けました。

トレニタリアでの再起

オランダとベルギーでの運用終了後、V250系は製造元のアンサルドブレーダに買い戻されました。その後、イタリアの旧国鉄トレニタリアが高速鉄道網を拡充していたため、形式名をETR700に改め、新在直通列車「フレッチャルジェント」の輸送力増強用として全19編成を購入しました。

アンサルドブレーダを買収した日立によって、フレッチャルジェント色への変更などの改造が行われ、2018年4月から試運転を開始し、2019年6月19日からアドリア線のミラノ～アンコーナ～レッチェ間で営業運転を開始しました。日立は運用開始にあたって5年間のメンテナンス契約も締結しました。

脚注

外部リンク

ANSALDOBREDA HIGHSPEEDTRAIN V250 - ウェイバックマシン（2011年9月8日アーカイブ分） アンサルドブレーダ （イタリア語）

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