WavPack

WavPack：高音質を追求した可逆音声圧縮コーデック

WavPackは、David Bryant氏によって開発された、自由かつオープンソースの可逆音声圧縮コーデックです。その特徴は、幅広い対応形式、高い圧縮率、そして柔軟な運用を可能にするハイブリッドモードにあります。

対応形式と圧縮率

WavPackは、PCM（パルス符号変調）方式において、8, 16, 24, 32ビットの量子化ビット数と、6kHzから192kHzまでのサンプリング周波数をサポートしています。32ビットに関しては、整数型と浮動小数点型の両形式に対応しています。さらに、PDM（パルス密度変調）方式であるDSD（DSDIFF, DSF）もサポートしており、サラウンドストリームにも対応しています。

圧縮率は、音源によって異なりますが、一般的に30%から70%程度になります。他の可逆圧縮方式と比較すると、平均的にFLACやApple Losslessよりも高い圧縮率を実現し、TAKに匹敵する高速なエンコードおよびデコード速度を誇ります。

オープンソースとロイヤリティフリー

WavPackは、特許技術を一切使用せず、広く知られたパブリックドメインの技術のみを用いて開発されています。これにより、オープンソースかつロイヤリティフリーでの利用が保証されています。

ハイブリッドモード

WavPackの大きな特徴の一つに、ハイブリッドモードがあります。このモードでは、通常の圧縮ファイル（拡張子.wv）に加えて、補正ファイル（拡張子.wvc）が生成されます。.wvファイル単独でも非可逆圧縮された音声を再生できますが、両方のファイルを組み合わせることで、元の音声を完全に復元できる可逆圧縮として利用できます。つまり、一度の圧縮操作で、可逆と非可逆の2種類のファイルが生成され、ユーザーのニーズに応じて使い分けが可能です。この機能は、MPEG-4 SLSやDTS-HDマスターオーディオなど他のフォーマットにも見られます。

その他の特徴

• - オープンソース: BSD系ライセンスで提供され、自由に利用できます。
• - マルチプラットフォーム対応: UNIX系OS、Windows、DOSなど様々なOSで動作します。
• - 誤り訂正: データの破損を検出し、修復する機能があります。
• - ストリーミングサポート: ネットワーク経由での音声配信に対応しています。
• - 多チャンネルオーディオ、高解像度サポート: サラウンド音声や高解像度音源に対応しています。
• - ハードウェアサポート: Rockboxファームウェアを導入することで、デジタルメディアプレーヤーで利用可能です。
• - メタデータサポート: ID3v1やAPEタグをサポートしています。
• - RIFFチャンクサポート: RIFF形式のデータに対応しています。
• - Replay Gain互換: 音量の正規化に対応しています。
• - 自己解凍型ファイル: Win32環境向けの自己解凍型ファイルを作成できます。
• - 32ビット整数/浮動小数点ストリーム: 高精度の音声データに対応しています。
• - キューシート埋め込み: 複数のトラック情報をファイルに埋め込むことができます。
• - MD5ハッシュ: 高速な完全性チェック機能があります。
• - 対称モードと非対称モード: エンコード時間を調整できます。

対応プラットフォーム

対応OS:
UNIXおよびUnix系（Linux, macOS, Solaris, FreeBSD, OpenBSD, NetBSD, Tru64, HP-UXなど）、Windows、DOS、Palm OS、OpenVMS

対応アーキテクチャ:
x86, ARM, PowerPC, AMD64, IA-64, SPARC, Alpha, PA-RISC, MIPS, 68kなど

歴史

WavPackの開発は、1998年中頃にDavid Bryant氏によって開始されました。初期バージョンは非可逆圧縮のみでしたが、その後、可逆圧縮やハイブリッドモードなどの機能が追加され、進化を続けています。最新版は2019年12月15日にリリースされたバージョン5.2.0です。

サポート

多くのソフトウェアがWavPackを直接サポートしており、プラグインを利用することで対応できるものもあります。WinampやNero Burning ROMなどのアプリケーション向けプラグイン、DirectShow用フィルタなどが公式サイトで公開されています。また、WinZipはバージョン11.0ベータからWavPackフォーマットをサポートしており、ZIPファイルフォーマットの拡張として公式に認められています。

ハードウェア面では、オープンソースのRockboxファームウェアをインストールすることで、iPodなどのデジタルメディアプレーヤーでWavPackを利用できます。Cowon A3もWavPackに対応しています。

関連項目

• - MPEG-4 SLS
• - MPEG-4 ALS
• - Direct Stream Transfer
• - FLAC
• - Apple Lossless
• - TTA
• - TAK
• - Monkey's Audio
• - Meridian Lossless Packing

外部リンク

• - 公式サイト
• - WavPack forum at Hydrogenaudio Forums
• - ReallyRareWares
• - A comparison of several Lossless Audio encoders at Hydrogenaudio Wiki.
• - WavPack on MultimediaWiki
• - WavPack frontend

WavPackは、高音質を維持しつつファイルサイズを削減したいユーザーにとって、非常に魅力的な選択肢となるでしょう。

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