X型エンジン

X型エンジンの概要

X型エンジンとは、レシプロエンジンの一種であり、V型エンジンを上下に結合した構造を持つ特徴的なエンジンです。正面から見るとX字型の形状を呈していることから、この名前が付けられています。このエンジンは、単一のクランクシャフトを使い、4つのシリンダーバンクを備えています。X型エンジンは、従来のV型エンジンを基にして、その上下に配列させる形で設計されることが多く見受けられます。

構造と技術的要件

X型エンジンは、星型エンジンと比べて非常に複雑な設計を必要とするため、高度な製造技術が要求されます。そのため、エンジンの重量も増加しがちですが、シリンダー数を同じにした場合、V型エンジンよりもコンパクトに仕上げられる利点があります。この設計によって、V型12気筒のサイズとほぼ同等で、X型24気筒のエンジンを製作することも理論的には可能です。

第二次世界大戦前後には、双発機において4発機と同等の出力と航続距離を実現するために、V型12気筒を基にしたX型24気筒エンジンの設計が多く行われましたが、その当時の技術力では複雑さに対応しきれず、試作の段階で開発に行き詰まりました。21世紀に入ってからは、軍事用途での実用化が進められています。

各種X型エンジンの例

X型8気筒エンジン

フォードは1920年代に自社のフラットヘッドV-8エンジンをベースに、X型8気筒エンジンを試作した記録があります。

X型12気筒エンジン

ロシアのチェリチャビンスクトラクター工場では、12Н360（A-85-3A）というX型12気筒エンジンを製造しており、「アルマータ」(Армата)という共通戦闘プラットフォームに搭載されています。

X型16気筒エンジン

第一次世界大戦の終結後、大英帝国のネイピア・アンド・サンは試作攻撃機ブラックバーン・カバルーのために水冷式のX型16気筒エンジンを設計しました。また、第二次世界大戦末期にドイツでも、空冷式のX型16気筒ディーゼルエンジンの制作が行われました（Sla-16）。

X型20気筒エンジン

元F1チームのコンノート・エンジニアリングは、ビリヤーズと協力してX型20エンジンを提案しました。このエンジンは排気量4リッターで、260から500馬力以上を発揮するターボチャージャー付きSOHCブロックとなっています。

X型24気筒エンジン

ダイムラー・ベンツは、ドイツ空軍の大規模な双発爆撃機計画のためにX型24気筒エンジンを試作しましたが、計画が頓挫しエンジンの設計も中止されました。また、イソッタ・フラスキーニは単発戦闘機用にエンジンを設計しましたが、こちらも未完成のまま終わりました。

X型32気筒エンジン

ホンダは1960年代にF1参戦を目指してX型32気筒エンジンの計画を立てましたが、信頼性の問題から早期に計画は中止されました。

最後に

X型エンジンはその独特の構造から、特に航空機などの特殊な用途に向けたエンジン開発の一環として重要な役割を果たしてきました。今後もこのタイプのエンジンがどのような進化を遂げるのか、注目されるところです。

もう一度検索