Z/VSE
z/VSE（ゼットブイエスイー、英語: z/Virtual System Environment）は、IBMが提供していたメインフレーム用のオペレーティングシステム（OS）の一つです。その歴史は古く、1960年代に登場したSystem/360向けのDOS/360|OS_360に端を発します。その後、DOS/VS、DOS/VSE、VSE/ESAと進化を重ね、2005年にz/Architectureに対応したz/VSEが登場しました。
z/VSEは、その起源であるDOS/360|OS_360を含め、単に「DOS」や「VSE」と呼ばれることもあります。初期の名称「DOS」はディスクオペレーティングシステムを意味していましたが、1980年代以降のPC DOSやMS-DOSとは直接的な関係はありません。z/Architectureに対応したVSEという意味で「z/VSE」と呼ばれています。
z/VSEは、IBMメインフレームの中規模システム向けに開発されたOSで、高い信頼性、可用性、保守性（RAS）が特徴です。製造業、金融業、流通業、運輸業など、様々な分野の中規模システムで利用されてきました。
z/ArchitectureをサポートするIBMメインフレーム（eServer zSeries、IBM System zなど）上で稼働し、物理区画（PPAR）や論理区画（LPAR）だけでなく、z/VMのゲストOSとしても利用可能です。初期のバージョンでは64ビットのサポートが限定的でしたが、V5.1以降で64ビットの仮想アドレッシングがサポートされました。
IBMのメインフレームOSとしては、z/OSやz/VMも存在しますが、z/VSEはこれらとは異なるOSです。しかし、起源であるDOS/360|OS_360はz/OSの起源であるOS/360|OS_360と同時期に開発され、VSE/ESAではMVSとの親和性が向上するなど、多くの共通点があります。z/VSEはz/OSの弟分と表現されることもあります。z/OSと比較して、OS自体がコンパクトで、少ないリソースで信頼性の高いトランザクション処理システムやデータベースシステムを構築できるのが利点です。
「IBMがVSEを中止してz/OSに一本化するのではないか」という意見もありましたが、z/VSEの開発は継続されてきました。ただし、ハードウェアやミドルウェアの移植はz/OSよりも範囲が狭く、時期も遅れる傾向にあります。
z/VSEの歴史は以下の通りです。
1966年: DOS/360|OS_360（System/360用の中規模向けOSとして登場）
1972年: DOS/VS（System/370の仮想記憶に対応）
1979年: DOS/VSE（IBM 4300シリーズで登場、プログラムが稼働可能な区画は最大12区画）
1980年代: VSE/SPに改名（1987年のVSE/SP V3で基本部分が完成）
1991年: VSE/ESA（ESA/370に対応、31ビットアドレッシング対応、MVSとの親和性向上、動的区画対応）
2005年: z/VSE（z/Architectureに対応、最大稼働VSEタスクは255）
2008年8月: z/VSE V4.2発表・出荷（最大稼働VSEタスクは512）
2010年10月: z/VSE V4.3発表（仮想ストレージの制約緩和など）
2011年11月: z/VSE V5.1発表（64ビット仮想アドレッシング・サポートなど）
2015年10月: z/VSE V6.1発表
2017年4月: z/VSE V6.2発表
2022年8月には、最終バージョンであるV6.2のサポートが2023年9月に終了することが発表されました。
z/VSEの主なコンポーネントは以下の通りです。
VSE/POWER（ジョブ制御システム）
VTAM（通信）
TCP/IP（通信）
ICCF（タイムシェアリング）
z/VSEをサポートする主なミドルウェアは以下の通りです。
CICS Transaction Server for VSE
DB2 for VSE
DL/I|DL_I for VSE
WebSphere Application Serverなどの一部のミドルウェアは、z/VSE上では稼働しないため、System zの別の論理区画 (LPAR) などでLinux上で稼働させ、連携して利用します。
z/VSEとz/OSには、以下の共通点と相違点があります。
System/360以来の互換性を持ち、z/ArchitectureをサポートするIBMメインフレーム上で稼働する
ネイティブの文字コードはEBCDIC
SNAの標準サポート
COBOL、PL/I|PL_I、C言語などのプログラミング言語をサポート
OS自体がコンパクト（サブシステム数、管理すべき項目、必要なハードウェア資源など）
多重仮想空間は限定的（静的区画、動的区画）
V5.1までは64ビット仮想アドレッシングをサポートしなかった
OSコマンドやジョブ制御言語（VSEではJCSと呼ぶ）の機能・構文が異なる
メインフレーム: z/VSEが稼働する基盤となるハードウェア
OS/390|OS_390: z/OSの前身となるOS
ジョブ制御言語: VSEのJCS（ジョブ制御言語）の記述あり
製品ページ - 日本IBM
z/VSE - IBM
VSEの歴史（英語）
* IBM - z/VSEマニュアル（英語）
名称について
z/VSEは、その起源であるDOS/360|OS_360を含め、単に「DOS」や「VSE」と呼ばれることもあります。初期の名称「DOS」はディスクオペレーティングシステムを意味していましたが、1980年代以降のPC DOSやMS-DOSとは直接的な関係はありません。z/Architectureに対応したVSEという意味で「z/VSE」と呼ばれています。
概要
z/VSEは、IBMメインフレームの中規模システム向けに開発されたOSで、高い信頼性、可用性、保守性（RAS）が特徴です。製造業、金融業、流通業、運輸業など、様々な分野の中規模システムで利用されてきました。
z/ArchitectureをサポートするIBMメインフレーム（eServer zSeries、IBM System zなど）上で稼働し、物理区画（PPAR）や論理区画（LPAR）だけでなく、z/VMのゲストOSとしても利用可能です。初期のバージョンでは64ビットのサポートが限定的でしたが、V5.1以降で64ビットの仮想アドレッシングがサポートされました。
IBMのメインフレームOSとしては、z/OSやz/VMも存在しますが、z/VSEはこれらとは異なるOSです。しかし、起源であるDOS/360|OS_360はz/OSの起源であるOS/360|OS_360と同時期に開発され、VSE/ESAではMVSとの親和性が向上するなど、多くの共通点があります。z/VSEはz/OSの弟分と表現されることもあります。z/OSと比較して、OS自体がコンパクトで、少ないリソースで信頼性の高いトランザクション処理システムやデータベースシステムを構築できるのが利点です。
「IBMがVSEを中止してz/OSに一本化するのではないか」という意見もありましたが、z/VSEの開発は継続されてきました。ただし、ハードウェアやミドルウェアの移植はz/OSよりも範囲が狭く、時期も遅れる傾向にあります。
歴史
z/VSEの歴史は以下の通りです。
1966年: DOS/360|OS_360（System/360用の中規模向けOSとして登場）
1972年: DOS/VS（System/370の仮想記憶に対応）
1979年: DOS/VSE（IBM 4300シリーズで登場、プログラムが稼働可能な区画は最大12区画）
1980年代: VSE/SPに改名（1987年のVSE/SP V3で基本部分が完成）
1991年: VSE/ESA（ESA/370に対応、31ビットアドレッシング対応、MVSとの親和性向上、動的区画対応）
2005年: z/VSE（z/Architectureに対応、最大稼働VSEタスクは255）
2008年8月: z/VSE V4.2発表・出荷（最大稼働VSEタスクは512）
2010年10月: z/VSE V4.3発表（仮想ストレージの制約緩和など）
2011年11月: z/VSE V5.1発表（64ビット仮想アドレッシング・サポートなど）
2015年10月: z/VSE V6.1発表
2017年4月: z/VSE V6.2発表
2022年8月には、最終バージョンであるV6.2のサポートが2023年9月に終了することが発表されました。
構成
z/VSEの主なコンポーネントは以下の通りです。
VSE/POWER（ジョブ制御システム）
VTAM（通信）
TCP/IP（通信）
ICCF（タイムシェアリング）
z/VSEをサポートする主なミドルウェアは以下の通りです。
CICS Transaction Server for VSE
DB2 for VSE
DL/I|DL_I for VSE
WebSphere Application Serverなどの一部のミドルウェアは、z/VSE上では稼働しないため、System zの別の論理区画 (LPAR) などでLinux上で稼働させ、連携して利用します。
z/OSとの比較
z/VSEとz/OSには、以下の共通点と相違点があります。
共通点
System/360以来の互換性を持ち、z/ArchitectureをサポートするIBMメインフレーム上で稼働する
ネイティブの文字コードはEBCDIC
SNAの標準サポート
COBOL、PL/I|PL_I、C言語などのプログラミング言語をサポート
相違点
OS自体がコンパクト（サブシステム数、管理すべき項目、必要なハードウェア資源など）
多重仮想空間は限定的（静的区画、動的区画）
V5.1までは64ビット仮想アドレッシングをサポートしなかった
OSコマンドやジョブ制御言語（VSEではJCSと呼ぶ）の機能・構文が異なる
関連情報
メインフレーム: z/VSEが稼働する基盤となるハードウェア
OS/390|OS_390: z/OSの前身となるOS
ジョブ制御言語: VSEのJCS（ジョブ制御言語）の記述あり
外部リンク
製品ページ - 日本IBM
z/VSE - IBM
VSEの歴史（英語）
* IBM - z/VSEマニュアル（英語）
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