いろは坂

日光いろは坂：絶景と歴史が織りなす山道

栃木県日光市の中禅寺湖畔と馬返を結ぶ国道120号、通称「いろは坂」。その名は、かつての48個のヘアピンカーブに、いろは48音の文字を当てはめたことに由来します。現在では、華厳滝を挟んで、下り専用の第一いろは坂と、上り専用の第二いろは坂に分かれています。第一いろは坂には「な」から「ん」までの28のカーブ、第二いろは坂には「い」から「ね」までの20のカーブがあり、それぞれのカーブには文字が記された標識が設置されています。

全長約6.5kmの第一いろは坂はほぼ1車線、一方、全長約9.5kmの第二いろは坂はほぼ2車線となっており、高度差は約440メートルに及びます。第二いろは坂には黒髪平と明智平に休憩所を兼ねた駐車場があり、明智平には明智平ロープウェイの駅舎があります。ロープウェイで明智平展望台に登れば、華厳滝や中禅寺湖の雄大な景色をパノラマで楽しむことができます。

いろは坂の歴史は古く、奈良時代の782年（天応2年）、勝道上人らによる男体山開山に遡ると言われています。古くから山岳信仰の聖地として栄え、女人禁制や牛馬禁制の名残も「馬返」の地名や第一いろは坂にある「女人堂」として現在も残されています。明治時代以降、外国大使館の別荘建設などが進み、人の往来が盛んになるにつれて道路整備が進み、現在のいろは坂の原型が作られました。

昭和初期には自動車が通行できるようになりましたが、当初は幅員3～4メートルの狭隘道路で、すれ違いは困難でした。1952年（昭和27年）、日光と奥日光を結ぶ幹線道路として本格的な改良工事が始まり、1954年（昭和29年）10月、日本で2番目の有料道路として開通。これにより奥日光へのアクセスが格段に向上し、観光客数は飛躍的に増加しました。しかし、交通量の増加に伴い、特に紅葉シーズンには慢性的な渋滞が発生するようになりました。

この問題に対応するため、1963年（昭和38年）に第二いろは坂の建設が開始され、1965年（昭和40年）に完成。これにより、上り下り線が完全に分離され、渋滞緩和に貢献しました。第一いろは坂と第二いろは坂を合わせた有料道路「日光道路」は、1984年（昭和59年）に無料開放され、現在に至ります。さらに2019年（令和元年）には、第二いろは坂の一部区間の片側2車線化が完了し、交通流の円滑化が図られました。

近年では、観光客によるニホンザルの餌付け問題が深刻化し、日光市では全国初となる餌付け禁止条例が施行されています。

いろは坂は、急勾配と連続するカーブ、そして四季折々の美しい自然が魅力の道路です。日本の道100選にも選ばれており、日本の重要な観光ルートとして、多くの観光客を魅了し続けています。また、自動車レースゲームなどの作品にも登場しており、その知名度は高く、日本の道路の中でも重要な存在といえます。しかし、交通渋滞や野生動物との共存など、課題も多く、持続可能な観光のあり方が問われています。

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