セリ

セリ（芹）とは

セリ（学名: Oenanthe javanica）は、セリ科セリ属の多年草で、日本原産の植物です。春の七草の一つとして知られ、古くから食用とされてきました。独特の強い香りとシャキシャキとした歯ごたえが特徴で、日本料理には欠かせない食材です。

名称

和名「セリ」は、若葉が競り合うように生える様子から「競り」が語源とされています。英名は「ウォータードロップウォート（Water dropwort）」、中国植物名は「水芹（スイキン）」です。

別名として、サケバゼリ、タゼリ、オカゼリ、ミズゼリ、ノゼリなどがあります。また、自生するものを「山ぜり」または「野ぜり」、水田で栽培されるものを「田ぜり」、畑で栽培されるものを「畑ぜり」と区別して呼ぶこともあります。学名の種小名「javanica」は、セリが東南アジアにも分布することに由来します。

分布と生育地

セリは、日本をはじめ、東アジアから東南アジア、オーストラリアにかけて広く分布しています。日本では、北海道から九州まで、全国各地の平地や山地の湿地、あぜ道、水田、小川のほとりなどに自生しています。特に水分の多い場所を好み、群生する傾向があります。

形態

セリは、常緑の多年草で、高さは20cmから80cm程度になります。全草に芳香があり、春から夏にかけては、地面を這うように匍匐茎を伸ばし、秋から冬にかけては根生葉を叢生させます。

葉は、根元に集まる根生葉と、茎に互生する葉があり、どちらも1 - 2回3出羽状複葉です。小葉は菱状卵形から長卵形まで変化に富み、縁に鋸歯があります。花期は8月頃で、白い小さな花が傘状に集まって咲きます。果実は楕円形で、種子は秋に熟します。

生態

セリは、匍匐茎による繁殖が主ですが、種子による発芽も確認されています。種子は光を好む性質があり、25度前後で発芽しやすいとされています。

栽培

セリは、野生種から選抜されたものが栽培されており、品種の分化は少ないとされています。栽培の際には、葉柄がまっすぐで、赤みを帯びない、ランナーの発生が遅いものが選ばれます。

栽培方法には、水田を利用した「田ぜり」と、畑で栽培する「畑ぜり」があります。田ぜりは、早春に親株を植え付け、畑ぜりは、秋にランナーを植え付けます。収穫時期によって、早生系、中生種、晩生系の３つの作型があります。

セリ栽培には、多量の水が必要で、特に生育後期には、かけ流しや深水管理を行います。寒さには弱いため、冬季は深水にしたり、寒冷紗で覆ったりすることもあります。収穫は、草丈が20cmから40cm程度になった頃に行います。

栽培史

セリは、古くから食用とされており、万[[葉集]]にもその記述が見られます。栽培の記録としては、平安時代の「延喜式」に記述があるのが最古です。江戸時代には、各地で特産品として栽培されるようになり、畑ぜりの栽培は大正時代に始まりました。

生産地

セリの主な生産地は、宮城県、茨城県、大分県、秋田県などです。東北地方や関東地方での栽培が盛んで、水利が良く、水が豊富に使える場所が適しています。栽培適温は20度前後で、冬は暖かく、夏は涼しい気候が最適とされています。

品種

セリは、栽培ものと野生もので差が少ないとされています。観賞用の斑入り品種もあります。主な栽培品種としては、「島根みどり」「ふくしまみどり」「三関」「松江むらさき」などがあります。

病虫害

セリには、さび病、菌核病、セプトリア菌による腐敗などの病害が発生することがあります。害虫としては、アブラムシが寄生し、ウイルス病を媒介することがあります。防除には、被害株の除去、農薬散布、連作を避けるなどの対策が必要です。

利用

セリは、数少ない日本原産の野菜の一つで、若い芽と根が食用とされます。春の七草として七草粥に使われるほか、鍋物や和え物、炒め物など、様々な料理に使われます。独特の香りは、健胃、食欲増進、解熱などの効果があると言われています。

食用

セリは、冬の野菜として親しまれており、野生のものは1月から5月頃に採取されます。野菜としては緑黄色野菜に分類されます。東洋では古くから食用にされてきましたが、西洋ではあまり食べられていません。和え物、天ぷら、鍋の具、汁物の青みなどに使われます。

栄養素

セリは、水分が多く、食物繊維を豊富に含んでいます。β-カロテン、ビタミンB1、B2、C、カルシウム、鉄分、クエルセチンなどの栄養素を含み、特にカロテン、ビタミンK、葉酸、カリウム、鉄、銅、食物繊維が豊富です。これらの栄養素は、生活習慣病の予防に役立つと言われています。

調理法

セリは、加熱しすぎると香りが失われやすいため、軽く加熱するのがおすすめです。アクが強い場合は、アク抜きをしてから調理します。鍋物や炒め物、和え物など、様々な料理に利用できます。また、生のままサラダにしたり、ご飯に混ぜてせり飯にしたりすることもできます。

薬用

セリは、生薬名はありませんが、中国では乾燥させた全草を水芹と呼び、薬用として利用します。入浴剤として利用すると、血行促進、リウマチ、神経痛、血圧降下などの効果があるとされています。また、神経痛や消化不良には、煎じて服用する方法も知られています。

近似する毒草

セリと似た毒草として、ドクゼリ、キツネノボタン、ドクニンジンがあります。これらの毒草と区別するためには、特徴をよく観察する必要があります。特にドクゼリは、地下茎が太くタケノコ状で、セリのような香りがないため、注意が必要です。

文化

セリは、古くから日本の食文化に根付いており、万[[葉集]]にもその記述があります。春の七草の一つとして、人日の節句に七草粥に使われます。

伝統料理

セリを使った伝統料理には、七草粥やきりたんぽ鍋があります。

成句

「芹を摘む」ということわざは、恋い慕っても無駄なことや、思い通りにいかないことを意味します。

その他

セリは、日本原産の食用栽培植物であり、クレソンやミツバと並んで、独特の香味を持つ野菜として親しまれています。

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