アオツラカツオドリ

アオツラカツオドリ (Sula dactylatra)

アオツラカツオドリは、カツオドリ目カツオドリ科に属する海鳥で、熱帯から亜熱帯の海洋に広く分布しています。名前の由来にもなっている、目の周りの青い皮膚が特徴です。

分布

インド洋、大西洋、太平洋の温かい海域に生息しており、日本では尖閣諸島や西之島で繁殖が確認されています。亜種によって分布域が異なり、それぞれ独自の環境に適応しています。

形態

全長は81-91cm、翼を広げると150-170cmにもなる大型のカツオドリです。体重は約2.3kgに達します。全身は白い羽毛に覆われていますが、尾羽と風切羽は黒色をしています。目の周りは羽毛がなく、露出した暗青色の皮膚が特徴的です。嘴は黄色く、足は青みがかった灰色をしています。幼鳥は上面が灰褐色で、後頸から背中、下面にかけて白い羽毛が生えています。

亜種

アオツラカツオドリには、以下の4つの亜種が確認されています。

アオツラカツオドリ S. d. personata**：太平洋中部・西部、オーストラリア周辺、メキシコ周辺、クリッパートン島に分布。
*タイセイヨウアオツラカツオドリ S. d. dactylatra**：カリブ海やアセンション島など、大西洋の島嶼で繁殖。
*ニシインドヨウアオツラカツオドリ S. d. melanops**：インド洋西部に生息。
*タスマンアオツラカツオドリ S. d. tasmani**：ロード・ハウ島やケルマディック諸島に生息。絶滅したとされる大型の個体群との関連性が研究されています。

これらの亜種は、生息地域や形態にわずかな違いが見られますが、海上で区別することは困難です。

生態

アオツラカツオドリは海洋に生息し、主に魚類を捕食します。高い場所から海面へ急降下し、水中の獲物を捕らえるのが得意です。時には、飛んでいるトビウオを捕食することもあります。繁殖期には、地表の窪みに2つの卵を産み、雌雄交代で約42-44日間抱卵します。雛は孵化後、数日のうちに兄弟を殺してしまうことが知られています。これは、親鳥が2羽の雛を同時に育てるのが困難であるためと考えられています。雛は約140日で巣立ち、2-3年で性成熟します。寿命は20年以上と推定されています。

人間との関係

アオツラカツオドリは、かつて卵や雛が食用とされていました。そのため、狩猟などにより生息数が減少しています。日本では、尖閣諸島が繁殖地となっていますが、詳しい状況は不明です。しかし、仲ノ神島への幼鳥の飛来が確認されていることから、繁殖地が完全に壊滅しているわけではないと考えられています。近年、小笠原諸島の西之島で大規模な生息が確認され、注目を集めています。

保全状況

アオツラカツオドリは、環境省のレッドリストで絶滅危惧II類 (VU) に指定されており、保護対策が求められています。生息地の保全や、狩猟の規制などが重要な課題となっています。

参考文献

桐原政志 『日本の鳥550 水辺の鳥』 文一総合出版、2000年、59頁。
黒田長久監修 C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン編 『動物大百科7 鳥類I』 平凡社、1986年、66、68-69、177頁。
三省堂編修所・吉井正 『三省堂 世界鳥名事典』 三省堂、2005年、5頁。ISBN 4-385-15378-7。
高野伸二 『フィールドガイド 日本の野鳥 増補改訂版』 日本野鳥の会、2007年、82-83頁。
真木広造、大西敏一 『日本の野鳥590』 平凡社、2000年、47頁。
* 『小学館の図鑑NEO 鳥』 小学館、2002年、61頁。

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