イカナゴ

イカナゴ（玉筋魚）とは

イカナゴ（玉筋魚、鮊子、䱊、学名：Ammodytes japonicus）は、スズキ目ワニギス亜目イカナゴ科に属する海水魚の総称です。かつては Ammodytes personatus という学名でしたが、その後の研究で日本には分布しないことが判明し、Ammodytes japonicus が正式な学名となりました。

イワシなどと同様に、沿岸海域の生態系において重要な役割を担う魚種であり、日本では様々な調理法で食用とされています。

日本語における名称

イカナゴは、地域によって様々な呼び名があります。

稚魚：東日本では「コウナゴ、コオナゴ（小女子）」、西日本では「シンコ（新子）」
成魚：北海道で「オオナゴ（大女子）」、東北地方で「メロウド（女郎人）」、西日本では「フルセ （古背）」「カマスゴ（加末須古）」「カナギ（金釘）」

分布と生態

イカナゴは、北半球の寒帯域から温帯域、そして熱帯域にかけて広く分布し、沿岸の砂泥底に生息しています。主にプランクトンを捕食し、冬から春にかけて水深10m～30m付近の砂底に産卵します。北方系の魚であるため、温暖な地域では夏に砂に潜って夏眠することが知られています。

日本産のイカナゴは移動性が低く、地域ごとに独自の系統群が存在すると考えられています。1年で体長10cm程度に成長し、成熟します。寿命は3～4年で、20cm程度まで成長しますが、瀬戸内海や伊勢湾では15cm程度までしか成長しません。

漁獲と現状

日本では沿岸漁業で漁獲され、敷網漁、定置網漁、船曳網などが用いられます。食用だけでなく、太刀魚、スズキ、メバルなどの釣り餌や養殖用飼料としても利用されています。

しかし、乱獲や生息環境の悪化、海砂の採取などにより、各地で漁獲量が激減しています。特に、瀬戸内海のような夏眠を行う海域では、イカナゴの夏眠に適した海砂がコンクリートの骨材として大量に採取されたため、漁場が壊滅的な被害を受けました。また、下水処理の普及による栄養塩類の減少も、資源量減少の原因とされています。

このような状況を受け、伊勢湾や瀬戸内海では、毎年の生育状況や資源量を調査し、漁獲量を決定しています。さらに、資源回復のため、各地で禁漁措置が実施されています。

各地での禁漁・不漁の状況

陸奥湾: 1973年には1万トンを超えていた漁獲量が激減し、2013年からは集魚灯を使った漁や小型定置網漁が全面禁漁となっています。
伊勢湾・三河湾: 2016年から禁漁が継続されています（2024年時点）。
大阪湾: 2017年以降、極端な不漁に見舞われています。

調理方法

イカナゴは、地域によって様々な調理法で食されています。

釘煮: 瀬戸内海東部沿岸部で親しまれている郷土料理。醤油、砂糖、生姜などで煮詰めた佃煮の一種で、その形状が錆びた釘に似ていることから名付けられました。
フルセの佃煮: 成魚であるフルセを佃煮にしたもので、釘煮とは区別されます。
ちりめん: 釜揚げした稚魚を新子または新子ちりめん、乾燥させたものをカナギ（小女子）ちりめんといいます。
カマスゴ: 体長4cm～5cm程度のイカナゴを釜茹でしたもので、酢醤油やからし酢味噌で食べます。炙ると香ばしくなります。
いかなご醤油: 香川県で作られている魚醤。かつては日本三大魚醤の一つでしたが、1950年代に製造が途絶え、その後少量ながら復活生産されています。

東北地方では成魚を調理することが多く、干物などにして安価で販売されています。

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