カラシナ

カラシナ：辛みと栄養を兼ね備えた冬の野菜

カラシナ（学名: Brassica juncea、英: Mustards）は、アブラナ科アブラナ属に分類される越年草です。「芥」はカラシナを、「芥子」はカラシナの種子を意味します。古くから食用や薬用として親しまれてきた植物で、日本へは弥生時代から伝来したと推測されています。平安時代の文献である『本草和名』や『和名抄』にもその記述が見られます。

カラシナの特徴

カラシナは、寒さに強い性質を持つ冬の葉物野菜です。葉には切れ込みがあり、独特のピリッとした辛みが特徴です。その辛み成分はシニグリンという物質で、からし粉の原料として利用されています。また、葉や茎は、カルシウム、カロテン、ビタミン類などの栄養素が豊富に含まれています。

葉の形や辛みの強さなどに違いがあり、「ちりめんからし菜」のような縮れた葉を持つものや、「わさび菜」のように葉が幅広いもの、「リアスカラシナ」のような細い葉を持つものなど、数多くの品種が存在します。

カラシナは、クロガラシ (Brassica nigra) とブラッシカ・ラパ (B. rapa) の交雑によって生まれたと考えられており、中央アジア原産と推定されています。道端や川沿いなど、様々な場所に野生化している姿も見られます。草丈は1～1.5メートルほどに成長し、春にはアブラナに似た黄色い花を咲かせます。

カラシナの栽培

カラシナは中国北部で盛んに栽培されており、日本では北海道や東北地方を中心に生産されています。耐寒性が非常に高く、発芽適温は25度前後です。葉を収穫する場合は、春まきで初夏に収穫する方法と、秋まき（晩夏）で晩秋に収穫する方法があります。秋まきの方が栽培が容易です。

栽培方法は、まず畑に元肥を施し、よく耕した後に平らな畝を作り、筋まきで種をまきます。発芽後は、葉が重ならないように間引きを行いながら育てます。間引きした菜も食用として利用できます。草丈が7～8センチ[[メートル]]になったら追肥と中耕を行い、雑草の発生を防ぎます。草丈が25センチ[[メートル]]ほどになったら収穫適期となります。

春まきの場合は、モンシロチョウの幼虫などの食害に注意が必要です。高温期には、害虫よけのために寒冷紗などでトンネル栽培を行うと効果的です。輪作年限は1～2年です。

カラシナの利用

カラシナは野菜として栽培され、旬は2～4月頃です。葉や種子に特有の辛味があり、葉菜として食用にするものと、香辛料や油を採るものに分けられます。葉や茎は、長さ20～30センチ[[メートル]]程度のものが柔らかく、炒め物、おひたし、漬物、和え物、煮物、浅漬け、サラダなど、幅広く利用されています。

タカナ（高菜）やザーサイ（搾菜）はカラシナの変種であり、これらを使った漬物は「カラシ菜漬」として分類されることもあります。葉を刻んだり茹でたりすることで、辛み成分が増します。種子は和からし（オリエンタルマスタード）の原料として利用されます。マスタード（洋からし）の原料であるシロガラシとは、同じアブラナ科でも別種です。

カラシナはβ-カロテンを多く含む緑黄色野菜で、ビタミンC、カリウム、カルシウムなども豊富に含まれています。茹でる際は、さっと茹でることでビタミンCの損失を少なくできます。日持ちはあまりしないため、保存する際はポリ袋などに入れて立てて冷蔵保存します。

カラシナの種類と変種

カラシナには、葉の形状や辛みの強さ、栽培方法などが異なる多くの品種が存在します。代表的な品種として、ちりめんカラシナ、サラダカラシナ（リアスカラシナ）、サラダザーサイ、マスタードグリーン、ワサビ菜、シマナー（沖縄）、イラカブ（宮崎県の一部地域）などがあります。

また、アザミナ、タカナ、ザーサイなどもカラシナの変種として知られています。

カラシナにまつわる逸話

インドの寺院に住んでいた妖精バクワイリーは、動かずに大理石になってしまいました。その跡地に農夫がカラシナを植えると、妻がそれを食べた後、子供が生まれました。この子供は、妖精バクワイリーが生まれ変わったものだとされています。

カラシナと環境

カラシナは、重金属に汚染された土壌でも生育できるため、ファイトレメディエーション（植物を用いた土壌浄化技術）に利用されています。重金属を吸収・蓄積する能力が高く、土壌の浄化に貢献する可能性を秘めています。

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