カーネル・サンダース

ハーランド・デイヴィッド・サンダーズ：KFC創業者、カーネル・サンダースの生涯

生い立ちと波乱の青年時代

ハーランド・デイヴィッド・サンダーズ、通称カーネル・サンダースは、1890年9月9日にアメリカのインディアナ州で生まれました。幼少期に父親を亡くし、10歳から農場で働き始め、14歳で学校を中退。その後、様々な職を転々とする波乱の青年時代を送ります。16歳で軍に入隊しますが、一兵卒として終わり、除隊後は鉄道の修理工、保険外交員など40種類もの職業を経験します。30代後半にはガソリンスタンドを経営しますが、大恐慌の影響で倒産を経験するなど、困難の連続でした。

「サンダース・カフェ」とフライドチキン誕生

1930年、サンダースはケンタッキー州のコービンに移り住み、再びガソリンスタンドを始めます。顧客への丁寧な接客が評判を呼び、ガソリンスタンドの一角に6席のレストランコーナー「サンダース・カフェ」を開設。ハンバーガー、フライドチキン、ハム、豆料理など、幅広いメニューを提供しました。特にフライドチキンは人気を博し、1935年にはケンタッキー州知事から「ケンタッキー・カーネル」の称号を授与されます。

「サンダース・カフェ」はその後、モーテルを併設した142席のレストランに成長しましたが、火災に見舞われるなど、数々の困難がありました。しかし、1941年には147人収容のレストランを再建。このレストランは現在、博物館としてアメリカ合衆国国家歴史登録財に登録されています。

KFCのフランチャイズ化

1952年、サンダースは独自のフライドチキンの調理法を各地のレストラン経営者に教え、チキン1羽につき5セントで売るという、当時としては画期的なフランチャイズビジネスを始めます。ユタ州ソルトレイク市のピート・ハーマンが最初のフランチャイジーとなり、この時「ケンタッキー・フライドチキン（KFC）」というブランド名が誕生しました。

1955年、コービンを通過する州間高速道路が開通したことで、サンダースの店は客足を失い、店を手放すことになります。しかし、フランチャイズビジネスに専念し、フライドチキンを積んだワゴン車で各地を移動販売。1960年にはアメリカとカナダで400店舗、1964年までに600店舗を超えるフランチャイズ網を築き上げました。

KFCの顔として

1964年、74歳でKFCの権利を売却して経営から退きましたが、その後も「味の親善大使」として活躍。世界各国の店舗を訪れ、製法が守られているかを確認しました。特に日本を気に入り、3度も来日。「日本のKFCが一番気に入っている」と語ったと伝えられています。1980年5月、日本への最後の訪問を果たし、同年12月16日に90歳で亡くなりました。

人柄と慈善活動

サンダースは、ロータリークラブとフリーメイソンのメンバーであり、数多くの慈善活動にも熱心でした。孤児院の子供たちに毎日アイスクリームを提供したり、肢体不自由児のための基金を設立したり、病院、医学研究、教育、ボーイスカウトなどの活動に資金を提供しました。また、来日時には交通遺児との交流を行いました。

カーネル像と日本の文化

日本国内のケンタッキーフライドチキン店舗では、店頭にカーネル・サンダース像が飾られています。この像は「カーネルおじさん」として親しまれ、日本のKFCのシンボルとなっています。

カーネル像の歴史と広がり

カーネル像は、元々はカナダのフランチャイズ店でイベント用に使用されたものでしたが、日本法人の幹部が持ち帰ったことから、日本国内に広まりました。1970年の日本法人設立当時、日本ではまだファストフードという業態やフライドチキンという食べ物が浸透していなかったため、カーネル像はフライドチキンの認知度を高める役割を担いました。

その後、日本法人の店舗展開とともに、カーネル像は日本全国に広がり、現在では、アジア・オセアニア地域、そして欧米にも日本法人提供の像が立つ店舗があります。

カーネル像の扮装といたずら

カーネル像は、季節行事に応じて様々な扮装をすることがあります。年末にはサンタクロースの衣装を着用し、その他の時期には男雛姿や武者姿になるなど、各店舗の判断で工夫されています。しかし、店頭のカーネル像はいたずらの対象にもなりやすく、盗難や破損も多発しました。そのため、カーネル像の部品は固定され、像自体もボルトやチェーンで固定されるようになりました。

カーネル・サンダースの呪い

1985年、阪神タイガースのリーグ優勝時に、道頓堀店のカーネル像が阪神ファンによって道頓堀川に投げ込まれ、行方不明になる事件がありました。この事件以降、阪神が低迷したことから、「カーネル・サンダースの呪い」という都市伝説が生まれました。その後、カーネル像は2009年に発見され、日本法人に返還されましたが、人形自体の老朽化が激しく、2024年3月に大阪市の住吉大社にて人形納め（廃棄）されました。

カーネル・サンダースを演じた人物

カーネル・サンダースは、アメリカのCMで多くの俳優によって演じられています。ダレル・ハモンド、ノーム・マクドナルド、ジム・ガフィガン、ジョージ・ハミルトン、ドルフ・ジグラー、ロブ・リグル、ヴィンセント・カーシーザー、ビリー・ゼイン、ロブ・ロウ、ショーン・マイケルズ、カート・アングル、レイ・リオッタなどがその例です。日本では、2022年及び2023年のCMで賀来賢人がカーネル・サンダースに扮しました。

まとめ

カーネル・サンダースは、困難を乗り越え、独自のビジネスモデルで成功を収めた人物です。彼の人生は、諦めずに挑戦することの大切さを教えてくれます。また、日本におけるカーネル像は、単なる広告塔ではなく、日本の文化にも深く根付いた存在であると言えるでしょう。

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