クトゥグア

クトゥグア：燃え盛る炎の旧支配者

クトゥグア(Cthugha)は、クトゥルフ神話に登場する強力な旧支配者です。燃え盛る炎の姿で顕現し、その威容は畏怖の念を抱かせるに十分です。通常は地球から27光年離れたフォーマルハウト星を住処としていますが、フォーマルハウト近隣の恒星コルヴァズに封印されているという説や、コルヴァズがフォーマルハウトの別名であるという説も存在します。

クトゥグアは、他の旧支配者とは異なる起源を持ちます。オーガスト・ダーレスによって創造されたオリジナルの神格であり、フランシス・レイニーによるクトゥルフ神話における四大元素の欠落を補完するために考案されました。そのため、クトゥルフ神話の中核を成すラヴクラフトの作品には登場せず、ダーレス神話特有の存在と言えるでしょう。 英語表記のCthughaは、他の旧支配者であるTsathogguaとは似ておらず、邦訳における「クトゥグァ」表記は、後者との混同を避けるためのものと思われます。

ナイアーラトテップとの宿命の対決

クトゥグアは、悪神ナイアーラトテップの最大の敵として知られています。1940年、地球上に召喚されたクトゥグアは、ナイアーラトテップの拠点であるンガイの森を焼き尽くすという壮絶な戦いを繰り広げました。この出来事は、クトゥグアの圧倒的な力と、ナイアーラトテップとの深い因縁を示す象徴的な出来事となっています。

燃える眷属たち

クトゥグアには、数多くの眷属が存在します。「クトゥグアの配下」あるいは「炎の精（炎の吸血鬼）」と呼ばれる無数の小さな炎、もしくは紅い稲妻のような存在が、クトゥグアに仕えています。召喚時には、巨大なクトゥグアを先頭に、これらの眷属たちが大挙して出現します。

これらの炎の精たちを束ねる存在として、フサッグァという巨大な青い稲妻の姿をした長も存在します。また、クトゥグアの子として、冷気の炎の姿を持つアフーム＝ザーも存在します。アフーム＝ザーはクトゥグアの復活を企てますが、旧神に敗れ北極に封印されています。

アフーム＝ザー：冷気の炎

アフーム＝ザーは、クトゥグアの息子であり、冷気の炎を操る旧支配者です。クトゥグアの復活という使命を帯びていますが、旧神との戦いに敗れ、北極に封印されています。 彼の配下には「冷たきもの（イーリディーム）」と呼ばれる存在たちがおり、北極圏の邪神や神話生物と関連付けられることもあります。

設定の変遷と多様な解釈

クトゥグアの最初の言及は、1943年のフランシス・T・レイニーによる論文『クトゥルー神話小辞典』です。その後、オーガスト・ダーレスの小説『闇に棲みつくもの』で、ナイアーラトテップの天敵である炎の神格として詳細な描写がなされました。しかし、クトゥグアが地球上に存在したのかどうかは曖昧であり、地球起源か外宇宙起源かも不明確な点として残されています。

リン・カーターは、クトゥグアの子としてアフーム＝ザーを創造し、ドナルド・ワンドレイの作品に登場する「炎の精」とフサッグァをクトゥグアの配下として取り入れました。また、ジョン・グラスビーは、クトゥグアの住処としてコルヴァズという恒星を導入しました。これらは、後のクトゥルフ神話TRPGの設定にも影響を与えています。

近年では、クトゥルフ神話TRPGにおいて、ダーレス神話の設定はあくまで一説にすぎないという見解が強まっています。クトゥグアを崇拝する宗教の存在や、フサッグァ、アフーム＝ザーとの関係など、多くの謎が未だ解明されていません。

クトゥグアの召喚

クトゥグアを召喚するには、フォーマルハウトが夜空に輝いている際に、特定の呪文を唱える必要があります。有名な『闇に棲みつくもの』事件は、1940年10月にアメリカウィスコンシン州で発生したクトゥグア召喚の事例です。 なお、召喚呪文にはアラビア語由来の語が含まれている点が指摘されており、これはダーレスの設定上の欠点とされています。

クトゥグアが登場する作品

クトゥグアは、様々なクトゥルフ神話関連の作品に登場しています。ダーレス、カーター、ティアニーといったクトゥルフ神話作家による作品だけでなく、『クトゥルー・オペラ』、『邪神伝説シリーズ』といった漫画や小説など、多様なメディアでその姿が表現されています。

結論

クトゥグアは、謎多き魅力的な旧支配者です。その圧倒的な力、ナイアーラトテップとの宿命の対決、そして多様な解釈は、クトゥルフ神話の奥深さを象徴する存在と言えるでしょう。 今後の研究や創作活動によって、クトゥグアに関する新たな事実が明らかになる可能性も秘めています。

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