アフーム＝ザー

アフーム＝ザー：冷気の炎をまとう邪神

アフーム＝ザー(Aphoom-Zhah)は、クトゥルフ神話に登場する強力な旧支配者です。冷気の炎を身に纏い、フォーマルハウトに封印されたクトゥグアによって生み出された存在として知られています。創造主はホラー作家、リン・カーターです。

ハイパーボリア滅亡の黒幕

アフーム＝ザーの主要な役割は、封印された旧支配者たちの解放です。その目的を果たすため、フォーマルハウトから地球へとやってきましたが、旧神によって北極に封印されました。しかし、その封印から漏れ出した冷気は、ヴァルーシアの蛇人間の帝国を滅ぼし、さらにハイパーボリア大陸にも及ぶ災厄をもたらしました。

特に、リン・カーターの短編小説『炎の侍祭』では、アフーム＝ザーがハイパーボリア滅亡の直接的な原因として描かれています。ハイパーボリアの首都ウズルダオルムでは、ナコト教団のある人物がアフーム＝ザーを解放してしまい、大陸全体を凍てつかせ、文明を完全に滅ぼしました。その後、アフーム＝ザーは再び旧神によって封印されることになります。

眷属と文献

アフーム＝ザーには、「冷たきもの」または「イーリディーム(Eli Deme)」と呼ばれる眷属が仕えています。その長は、クラーク・アシュトン・スミスが創造した「白蛆」ルリム・シャイコースです。アフーム＝ザーに関する情報は、「ヴーアミ碑板群」と「ナコト写本」という二つの文献に記されています。「ナコト写本」は「ヴーアミ碑板群」を元に書かれたものとされています。これらの文献の情報源の大部分は、リン・カーターの作品『炎の侍祭』に基づいています。

クトゥルフ神話における位置づけ

カーターは、元々別個の存在として認識されていたルリム・シャイコースとクトゥグアを、アフーム＝ザーという新たな神性を通して結びつけました。これにより、旧支配者四大霊の「炎」は、冷気をも内包する概念となりました。アフーム＝ザーの創造は、クトゥルフ神話の既存設定を上書きするような影響を与えました。例えば、クトゥグアの子であるアフーム＝ザーが封印された邪神を解放しようとしているという設定や、ルリム・シャイコースをハイパーボリアへと送り込んだのがアフーム＝ザーであるという設定などが、カーターによって追加されました。

登場作品

アフーム＝ザーは、リン・カーターの複数の作品に登場します。初出はクラーク・アシュトン・スミスとの合作『極地からの光』(1980)です。その後、『炎の侍祭』(1985)では、ハイパーボリア滅亡におけるアフーム＝ザーの役割が詳しく描かれています。『陳列室の恐怖』(1976)では言及のみ、『カーター版ネクロノミコン』(1989)にも登場します。

『炎の侍祭』のあらすじ

『炎の侍祭』では、ハイパーボリアへの氷河の襲来と、その危機に立ち向かうナコト教団の修道士アスロックの物語が描かれています。アスロックは「ナコト写本」に記された予言を読み解き、自らアフーム＝ザーの封印を解いてしまうことで、ハイパーボリアの滅亡を招いてしまうのです。この物語は、ハイパーボリアの滅亡という悲劇と、人間の傲慢さや無力さを浮き彫りにしています。

クトゥルフ神話TRPGにおける解釈

クトゥルフ神話TRPGでは、アフーム＝ザーに関する既存の設定の見直しが図られています。クトゥグアやルリム・シャイコースとの関係は、あくまで一説にすぎず、実態は不明とされています。また、地球ではなくうしかい座のアークトゥルスに封印されているという説も存在します。さらに、アフーム＝ザーがノフ＝ケー族、ラーン＝テゴス、ヴーアミ族の祖であるという説も提唱されています。

関連作品

アフーム＝ザーに関連する作品として、クラーク・アシュトン・スミスの『皓白の巫女』や『氷の魔物』などが挙げられます。これらの作品は、ハイパーボリアの滅亡や、その背景にある恐怖を描いています。

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