ゲーミングPC

ゲーミングPCとは

ゲーミングPCは、特に3Dゲームのプレイに最適化されたパーソナルコンピュータ（PC）です。ゲームメーカーが推奨するモデルも存在し、デスクトップPCタイプ、ノートPCタイプ（ゲーミングノートPC）、ポータブルゲーミングPCなどがあります。これらのPCは、メーカーによる既製品、受注生産品（BTO）、自作品などがあります。

概要

ゲーミングPCの最大の特徴は、3Dゲームに必要な高性能GPUを搭載していることです。日本では2017年のバトルロイヤルゲームブームをきっかけに需要が高まりました。現在では定義が曖昧になりつつありますが、高性能なゲーミングPCほど快適に遊べるゲームが多いのは変わりません。

3Dゲームでは、3DCGの描画処理、物理演算処理、AI処理などにより、消費電力が増大し、排熱量も多くなる傾向があります。排熱が不十分だと部品が高温になり故障の原因となるため、ゲーミングPCには高性能な冷却パーツが搭載されています。特にゲーミングノートPCでは、冷却のために高速な小型ファンが必要となるため、動作音が大きいという欠点があります。

ゲーミングPCは、一般的なPCと同様に使えるため、動画編集やメディア制作などにも高い性能を発揮します。そのため、これらの目的でゲーミングPCを購入する人も増えています。

クリエイターPCとの違い

クリエイター向けPCは、動画編集や3DCG制作を高速化するために最適化されています。以前は専用ビデオカードが使われていましたが、GPGPUの普及により一般的なGPUが使われるようになりました。GPU自体はクリエイター向けとゲーマー向けで差異が少なくなっていますが、ドライバはそれぞれに最適化されたものが使われています。

クリエイター向けPCでは高速なThunderbolt端子が搭載されていることが多い一方、ゲーミングPCでは少ない傾向にあります。周辺機器も異なりますが、ゲーマーでも動画投稿やライブ配信をする人が増えたため、クリエイター向けのデバイスも登場しています。

ワークステーションとの違い

ゲーミングPCは一般的なDRAMを搭載していますが、ワークステーションはエラー訂正機能のあるECCメモリを搭載しています。以前は、ゲーミングPCが精度の低いFP32/FP16演算に最適化されたGPUを搭載していたのに対し、ワークステーションは精度の高いFP64演算に最適化されたGPUを搭載していましたが、近年は両者の違いが縮まっています。しかし、プロ向けGPUにはVRAMにECCメモリが採用されており、ワークステーションの信頼性は依然として高いです。

コンシューマーゲーム機との違い

コンシューマーゲーム機はPCに近い構成になってきていますが、ゲーミングPCは高性能な単体GPU (dGPU) を搭載しているのに対し、コンシューマーゲーム機は内蔵GPU (iGPU) を使用しています。ゲーミングPCはハードウェア構成の自由度が高い一方、コンシューマーゲーム機はアーキテクチャや性能のバラツキが少ないという特徴があります。また、ゲーミングPCは部品交換が容易で、ゲーム以外の用途にも利用できます。

デザイン

色

ゲーミングPCは、黒基調のものが多かったのですが、2020年代にはLEDの反射を目立たせる白基調のものが増えています。またピンク色も一般化し、パステルカラーも人気を集めています。PCケースは透明な面を設けるものが多く、ピラーレスや曲面ガラスを用いたものも登場しています。

動的照明 (RGB)

ゲーミングPC、特にデスクトップタイプでは、内部パーツに光る製品が多くなっています。初期は単色LEDが中心でしたが、現在ではフルカラーLEDが主流です。光るパーツはソフトウェアで制御可能ですが、メーカーによって規格が異なり、互換性がない場合があります。しかし、Razer Chromaのように他の規格との同期を可能にするものや、マルチベンダーに対応するソフトウェアも登場しています。

スペック、構成部品、周辺機器

ゲームの種類や画質設定によって、必要なスペックが大きく異なります。新しいAAAゲームほど要求スペックが高くなる傾向にあり、必要に応じて部品やPC本体の交換が必要となります。

コンシューマーゲーム機とのスペックの違い

PCゲームにはコンシューマーゲーム機と同時発売されるものもあり、コンシューマーゲーム機の進化はゲーミングPCに必要な性能を押し上げています。PCゲームでは、各GPUでシェーダーをコンパイルする必要があり、シェーダーのコンパイルに起因するスタッターがゲーマーを悩ませています。また、CPUのコア数も異なるため、OSなどのゲームモードではコアの固定や停止などの最適化が行われています。

推奨スペックとスペック調査

PCゲームの販売元や販売プラットフォームが、ゲームごとに最小スペックと推奨スペックを公表しています。Steamではユーザーのハードウェアやソフトウェアの統計調査も行っています。

GPU

ゲーミングPCにおいてGPUは最も重要な要素です。GPUは、3D演算、画像処理、レイトレーシングなどに使用されます。最近のGPUはレイトレーシングアクセラレータを搭載しており、よりリアルな表現が可能です。GPUには、APU内蔵のGPU (iGPU) と単体GPU (dGPU) があり、dGPUはローエンド、ミドルレンジ、ハイエンドに分かれています。GPUのシェアでは、NVIDIAが75%以上を占めています。

VRAM

ゲームによっては8GBのVRAMでも不十分とされるため、GPUの選択時にはVRAM容量も重要な要素となります。

GPUの接続

GPUはPCIe経由で接続されますが、PCIeのバージョンやレーン数によって帯域幅が異なります。

外付けGPU

一部のノートPCやミニPCでは、外付けGPUを使用してゲーム性能を強化することができます。インターフェースにはThunderboltやOCulinkが使用されます。

マルチGPU

以前は複数のGPUを搭載して同時使用することも可能でしたが、現在では対応するゲームが少なく、問題が発生することが多いです。

CPU

ゲーミングPCでは、GPUの負荷を遅延なく処理するために高性能CPUが必要です。現在では、4コア以上のマルチコアが一般化しており、ゲームもマルチコアに最適化されています。

主記憶

ゲーミングPCでは、処理の高速化のためにオーバークロックメモリなどの高速DRAMを搭載することがあります。2024年4月にはDDR5-8800が標準化されましたが、メモリの速度や容量にはマザーボードによる制限があります。

ストレージ

ゲームのロード時間短縮のため、高速なNVMe SSDが普及しています。M.2 SSDはPCIe規格を採用しており、バージョンとレーン数によって最大速度が異なります。

冷却

ゲーミングPCでは、CPUやビデオカードが高温になるため、高性能な冷却装置が必要です。デスクトップPCでは、多数のケースファンや水冷式が使用され、ノートPCでもファンやヒートシンクが強化されています。

ディスプレイ

ゲーミングモニターは、120Hz以上のリフレッシュレートを持つものが多く、可変リフレッシュレート (VRR) に対応しています。また、低レイテンシHDR表示やモーションブラー軽減機能も搭載されています。高リフレッシュレートのディスプレイは、ゲームの操作パフォーマンスに影響を与えます。

マルチモニターも没入感を高めるために使われますが、ベゼルが邪魔になるため、ウルトラワイドな湾曲型モニターも登場しています。

キーボード

ゲーミングキーボードは、同時入力の認識数が多い、誤入力を防止する機能、LEDバックライトなどを搭載しています。キーのオン・オフ位置の設定、ラピッドトリガー、アナログ入力などの機能を持つものもあります。また、キーボードの打鍵音を小さくした静音ゲーミングキーボードも存在します。

マウス

ゲーミングマウスは、応答速度や入力精度が高く、耐久性も高いのが特徴です。光学式スイッチの採用が増えており、多ボタンを搭載したものもあります。また、重量や重心を調整できるものや、軽量化されたもの、無段階/段階スクロールホイール切り替え機能を持つものがあります。マウスパッドも性能向上に重要な役割を果たし、ハードタイプ、ソフトタイプなど様々な種類が存在します。

フットペダル

ゲーム向けのフットペダルも存在します。シムレーシングやフライトシミュレータ用のものや、ボイスチャットのプッシュトゥトークなどに使用されるものがあります。

コントローラ

PCゲーム向けのコントローラーには、DirectInput APIとXInput APIが存在し、ゲームパッドが一般的です。Xboxコントローラーのシェアが多いものの、PlayStationコントローラーの使用率も増加しています。

ヘッドセット

オンラインゲームではボイスチャットが使われるため、ヘッドセットが用いられます。ゲーミングヘッドセットは、低遅延や7.1chサラウンドに対応したものがあり、空間オーディオや触覚フィードバックを搭載したものも登場しています。

ゲーミングライト

ゲーミングライトは、ゲームに合わせて光るライトで、単体のものやスピーカーと一体化されたものなどがあります。

リグ

シムレーシングやフライトシミュレーションなど、特定のジャンルに特化したリグが存在します。PC部品メーカーも参入しており、様々な製品が発売されています。

リモートプレイ端末

ゲーミングPCからのリモートプレイ用の端末があり、ローカルストリーミングソフトも存在します。オープンソースの互換実装や、Steamの機能も利用できます。

リモートプレイにおける遅延

リモートプレイでは、画面の非可逆圧縮、ネットワークによる伝送遅延、端末でのデコード遅延などが遅延に影響を与えます。

ゲーミングPCの形態

ゲーミングPCには、デスクトップPC型、ノートPC型、携帯ゲーム型などがあります。遊びたいゲームを快適に遊べるかが重要であり、大きな形態ほど性能的に有利です。しかしながら、小さな形態でもハイスペックなものが登場しています。

ゲーミング・デスクトップPC

ゲーミング・デスクトップPCは、部品交換が容易で長く使えるのが特徴です。タワー型など大型のデスクトップタイプは性能を極限まで追求できます。また、空冷だけでなく水冷式も採用され、動作音を静かにできます。

ゲーミング・ノートPC

ゲーミング・ノートPCは、持ち運びが容易なのが利点ですが、デスクトップPCに比べて性能が劣る傾向があります。排熱のために小型の高速ファンが必要で、騒音が大きくなる場合もあります。外付けGPU BOXを接続することで、性能を向上させることも可能です。

ポータブル・ゲーミングPC

ポータブル・ゲーミングPCは、携帯型ゲーム機に似た形状で、既存のPCゲームを遊ぶことができます。本体にディスプレイと入力装置が搭載されており、携行して遊ぶことができます。Windows搭載モデルも登場し、競争が激化しています。

ゲーミング関連のメーカーおよびブランド

ゲーミングPCやパーツのブランドには、部品メーカー系、パソコンメーカー系、パソコンショップ系などがあります。周辺機器メーカーは買収により統合が進んでいます。

マザーボード / グラフィックボードメーカー系

GIGABYTE (AORUS), ASUS (ROG, TUF Gaming), MSI (MEG, MPG, MAG, GAMING PLUS), ASRock (Phantom Gaming), 七彩虹 (iGame)

メモリメーカー系

Corsair Gaming (Corsair, Elgato, XENEON, ORIGIN, Scuf, Fanatec), ADATA (XPG), Team Group (T-FORCE), シリコンパワー (XPOWER)

ケースおよび冷却パーツメーカー系

NZXT, Thermaltake (LCGS, Tt eSPORTS), Cooler Master

周辺機器メーカー系

Razer, SteelSeries, ロジクール (ロジクールG, Loupedeck, ASTRO Gaming), Turtle Beach Corporation (Turtle Beach, Roccat, PDP), エレコム (ELECOM GAMING V custom), ソニー (INZONE)

モニターメーカー系

BenQ (ZOWIE, MOBIUZ), LGエレクトロニクス (UltraGear), アイ・オー・データ機器 (GigaCrysta), INNOCN (Titan Army), Pixio USA (Pixio)

パソコンメーカー系

Acer (Predator, NITRO, SigmaLine), HP (OMEN, HyperX, Victus), DELL (Alienware, G Series), Lenovo (Legion, LOQ), マウスコンピューター (G-Tune, iiyama G-MASTER), KOUZIRO→インバースネット (FRONTIER), サイコム (G-Master)

パソコンショップ系

パソコン工房 (LEVEL∞), ドスパラ (GALLERIA), TSUKUMO (G-GEAR), パソコンショップアーク (arkhive Gaming)

商社・流通系

アイティーシー (STORM)

その他

駿河屋 (A2-Gaming)

完成品 / BTO / 自作

ゲーミングPCには、構築済みPCと自作PCがあります。構築済みPCには、完成品とBTO（ビルド・トゥ・オーダー）モデルがあります。自作PCは、パーツを自分で選択して組み立てるため、自由度が高いですが、相性問題やトラブルが発生する可能性があります。

構築済みゲーミングPC

構築済みゲーミングPCは、メーカーやショップが事前に組み立てたPCです。完成品は、選択肢が少ないですが、初期不良や故障時に保証が適用されます。BTOモデルは、パーツをユーザーが選択できますが、選択肢には限りがあります。

自作ゲーミングPC

自作ゲーミングPCは、パーツを自分で選んで組み立てるPCです。自由度が高いですが、パーツの知識が必要で、トラブル発生時に自分で対処する必要があります。

ゲーミングPCに使われるOS / 販売プラットフォーム

ゲーミングPCに使われるOSは主にWindowsで、PCゲームもWindows向けとして開発されているものが多いです。LinuxにはSteamOSが存在し、互換レイヤーのProtonでWindows向けゲームを動かすことができます。また、OSにはゲームモードがあり、ゲームの優先度を上げることができます。販売プラットフォームには、SteamやEpic Games Storeなどがあります。