スナメリ

スナメリ（Neophocaena phocaenoides）

スナメリは、ネズミイルカ科スナメリ属に分類される小型のイルカです。その愛らしい姿と人懐っこい性格から、多くの人々に親しまれています。

呼称

スナメリは、地域によって様々な名前で呼ばれています。

関東地方以北：スナメリ
愛知県沿岸：スザメ、スンコザメ
瀬戸内海～響灘：ゼゴ、ゼゴンドウ、ナメクジラ、ナミソ、デゴンドウ、デングイ
長崎県沿岸：ナミノウ、ナミウオ、ボウズウオ
中国：江豚（Jiangtun、「河の豚」の意）

分類

スナメリ属（Neophocaena）には、現在3つの亜種が認められています。

N. phocaenoides ssp. phocaenoides：中東などのインド洋沿岸から香港沖に分布
N. phocaenoides ssp. asiaeorientalis：長江（揚子江）一帯に分布
N. phocaenoides ssp. sunameri：東アジア沿岸に分布

ネズミイルカ科の中では、比較的早期に分岐したグループに属します。

形態

成体の体長は1.5-2m、体重は50-60kg程度で、現生のクジラ類の中では最も小型の種の一つです。口吻の突出はほとんどなく、背びれがないのが特徴的です。背中には、皮膚が盛り上がった隆起が尾びれまで続いています。首の骨は3つが癒合しており、頭部を大きく動かすことができます。

体色は全身が明るい灰色で、生まれた直後は背中が黒っぽいですが、成長とともに灰色に変化します。

生態と分布

スナメリは、魚類、甲殻類、頭足類などを食べます。雄は4歳半から9歳、雌は3歳から7歳で性成熟を迎えます。

生息域は広く、中東からアジアの沿岸海域、特にインド、中国、インドネシア、韓国、日本の沿岸に生息しています。海岸近くの浅い海域を好み、海底が滑らか、もしくは砂地になっている場所によく見られます。

日本では、仙台湾から銚子市沖、東京湾、伊勢湾・三河湾、瀬戸内海、長崎県沿岸などで生息が確認されています。大阪湾の関西国際空港周辺では、子育てをしている可能性も指摘されています。藤前干潟への定期的な出現も確認されており、干潟に進出するという珍しい生態を示しています。

生息数と保護

スナメリは、長江流域では絶滅が危惧されています。主な脅威は、魚網による混獲です。生息数に関する正確なデータはありませんが、過去の調査と比較すると、生息数も生息域も減少していると考えられています。

日本では、水産資源保護法に基づき保護されており、特別な理由がない限り捕獲は禁止されています。広島県竹原市には「スナメリクジラ回遊海面」という天然記念物がありましたが、現在ではスナメリの減少により伝統漁法は行われていません。

スナメリは、綺麗な海にしか生息できないため、東京湾や周防灘、大村湾など閉鎖的な海域の環境再生の指標とされています。

人間との関係

日本では、いくつかの水族館でスナメリが飼育・展示されています。鳥羽水族館では、世界で初めて水族館内での交尾から出産に成功しました。伊勢湾フェリーや有明フェリーなど、船上から自然のスナメリを観察できることもあります。

スナメリは、様々な分野でキャラクターのモチーフにもなっています。徳山競艇場では、マスコットキャラクターに採用され、スナメリに因んだレースも開催されています。

韓国では、スナメリは食用とされており、混獲されたものが取引されています。しかし、その価値はあまり高くないとされています。

まとめ

スナメリは、私たち人間と深い関わりを持つ愛らしい生き物です。しかし、生息数の減少や環境汚染など、多くの課題に直面しています。スナメリがこれからも豊かな海で生き続けるために、私たち一人ひとりが環境保護に関心を持ち、行動することが大切です。

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