ダンボールハウスガール

ダンボールハウスガール

2001年に日本で公開された映画『ダンボールハウスガール』は、主演に米倉涼子を迎え、彼女にとって記念すべき映画初主演作品となったことで注目を集めました。原作は萱野葵の同名小説です。

概要とあらすじ

物語の主人公は、平凡なOLとしての日々に耐えながら、愛する恋人とのアメリカ移住を夢見て懸命に貯蓄に励む一人の女性、桜井杏です。退屈ながらも希望を抱いていた日常から解放され、いよいよ長年の目標であった渡米が目前に迫った矢先、彼女は人生のどん底へと突き落とされます。

全てを整理し、旅立ちの準備を終えたその日に、自宅が空き巣の被害に遭い、銀行から引き出したばかりの渡航資金全額を盗まれてしまうのです。さらに追い打ちをかけるように、信頼していた恋人の裏切り、二股が発覚。一夜にして夢も希望も、そして住む家さえも失った杏は、都会の片隅でホームレス生活を余儀なくされます。

絶望と孤独の中、街をさまよう杏がたどり着いたのは、様々な事情を抱えた人々が集まるホームレスたちの共同体でした。そこで彼女が見たものは、社会の表舞台から隔絶されながらも、それぞれの人生を生き抜こうとする人々の姿、そして、これまでの自分の価値観とは全く異なる「人生」のあり方でした。

作品の特徴と背景

本作の大きなテーマは「全てを失くした女のサバイバル」です。単なる転落劇に終わらず、主人公が逆境の中でどのように立ち上がり、人間的な繋がりや自らの内面と向き合っていくかが描かれます。このテーマ性が、製作サイドにも影響を与え、「女性がすべてを失った状態から立ち上がる」という物語にちなんで、主要スタッフに女性が多く関わっている点をプロモーションで前面に打ち出しました。監督・脚本を務めた松浦雅子をはじめ、脚本の高橋美幸、美術の吉田悦子など、女性クリエイターたちの感性が作品に反映されています。

また、撮影には当時最新鋭であったデジタルシネマカメラ「CineAlta」が使用されており、そのクリアな映像が、主人公が見る現実の厳しさと、ホームレス村という特殊な空間のリアリティを際立たせています。

キャスト

桜井杏：米倉涼子
刑事：ブラザートム
ウォン：P・J
蘭々（ホームレス集団の頭領）：吉田日出子
杏のアパートの大家：樹木希林
あゆみ（杏の前職である教師時代の教え子）：伴杏里
山村美智
櫻田宗久
加瀬亮
有福正志
大倉孝二
鈴木一功
クリス：モニーク・ローズ
東海林愛美
平岩紙
黒沼弘己
本間しげる
森下能幸
川屋せっちん
朴本早紀子
ほか

個性豊かな俳優陣が脇を固め、特にホームレス集団のメンバーを演じるキャストが、作品世界に深みを与えています。

主なスタッフ

監督：松浦雅子
脚本：松浦雅子、高橋美幸
原作：萱野葵「段ボールハウスガール」（角川文庫）
製作：佐々木亜希
撮影監督：篠田昇
音楽：内山肇
美術：吉田悦子
* 録音：伊藤裕規

撮影監督の篠田昇は、岩井俊二監督作品などで知られ、本作でも独特の映像美を見せています。音楽の内山肇、美術の吉田悦子らも作品の雰囲気を構築する上で重要な役割を果たしています。

製作・配給

本作は、QFRONT、電通、シネカノン、クリーク・アンド・リバー社、サイブロ、Qムービー、東映ビデオなどが製作に名を連ね、チームオクヤマが企画製作を担当しました。配給はシネカノンとチームオクヤマが行いました。

『ダンボールハウスガール』は、多くのものを一度に失った主人公が、社会の底辺で出会う人々との交流を通じて、人間にとって本当に大切なものは何かを見つめ直し、自らの力で再び立ち上がっていく姿を描き、観る者に生きる上での普遍的な問いを投げかける作品と言えるでしょう。

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