バイアクヘー

バイアクヘー：クトゥルフ神話の宇宙飛行生物

クトゥルフ神話において、バイアクヘー（ビヤーキーとも呼ばれる）は、風の神ハスターの眷属であり、星間宇宙を自由に飛翔する異形の存在として知られています。その独特の生態、能力、そしてクトゥルフ神話における重要性について、詳細に解説します。

起源と初期設定

バイアクヘーの初出はオーガスト・ダーレスの『永劫の探究』五部作です。初期の設定では、黄金の蜂蜜酒を飲み干して魔法の石笛を奏で、ハスターへの呪文を唱えることで召喚されるとされています。一人乗りの乗り物として、星間宇宙空間を飛行しますが、人間の肉体は宇宙空間と超高速移動に耐えられないため、召喚者は黄金の蜂蜜酒の効果によって幽体離脱し、魂のみがバイアクヘーに乗り移るという特殊な方法が用いられます。肉体は、無名都市と呼ばれる場所に保管されるようです。

『永劫の探究』シリーズでは、ラバン・シュリュズベリイ博士らの人間たちが、邪神クトゥルフに対抗するために、皮肉にも別の邪神であるハスターの加護を求め、バイアクヘーを駆使します。物語では、謎を解き明かし、邪神と戦い、窮地に陥るとバイアクヘーで脱出するという展開が繰り返され、その動向が原稿に残されているという共通点が見られます。

バイアクヘーの生態と能力

派生設定では、バイアクヘーは体長2～3メートルの巨大な生物で、宇宙空間でも生存できる高い生命力を持ちます。外見は一見アリのような形状をしており、短い触角を持ちますが、人間のような皮膚と目、爬虫類のような耳と口、そして鋭い鉤爪を持つ手足を持ちます。尻部には「フーン」と呼ばれる器官があり、これを用いて磁気を操り飛行します。

地球の大気圏内では時速約70キロメートルで飛行可能ですが、気圧が低いほど速度が増し、宇宙空間では光速の約1/10に達すると言われています。さらに、「カイム」と呼ばれる空間を作り出し、その中で光速の約400倍という驚異的な速度で移動することも可能です。ただし、この高速移動の後には激しい空腹に見舞われます。背部にあるコウモリのような翼は、方向転換のみに使用されます。

高い知能を持ち、独自の言語を有する一方、人間の言語も理解し、会話することも可能です。そのため、人間と親しくなる場合もあるとされています。円卓の騎士ダゴニットがフランスで出会った空の騎士トリスタンはバイアクヘーに乗っており、トリスタンから贈られた雌のバイアクヘーを「ウイングドレディ（翼ある貴婦人）」と名付け、可愛がっていたという逸話も伝わっています。

クトゥルフ神話における位置づけ

バイアクヘーは、クトゥルフ神話において、ハスター神話を構成する重要な要素の一つであり、カルコサや黄衣の王といった存在と並んで、その神秘性と異形さで多くの作品に影響を与えています。その存在感は、クトゥルフ神話の世界観をさらに深みのあるものとしています。

バイアクヘーが登場する作品

永劫の探究（オーガスト・ダーレス）
邪神伝説シリーズ（渚事件簿シリーズ）（矢野健太郎）
Surery You Joust（パトリック・トーマス）
夜刀浦領異聞（朝松健）
五月二十七日（神野オキナ）

関連項目

ハスター：旧支配者、風の神。バイアクヘーの主。
* セラエノ断章

バイアクヘーは、その異形な姿と驚異的な能力、そしてクトゥルフ神話における独特の役割によって、多くの読者やゲームプレイヤーを魅了し続けている存在です。今後も、クトゥルフ神話において、その存在感は失われることはないでしょう。

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