ヒ71船団

ヒ71船団の概要

ヒ71船団（ヒ71せんだん）は、太平洋戦争の最中、1944年の8月から9月にかけて、日本からシンガポールへ向けて航行した護送船団です。この輸送船団は、高速タンカーを中心にした優れた輸送船20隻を空母などの艦隊が護衛する形で構成されており、日本の護送船団の中でも特に規模が大きかったものです。しかし、航海中にアメリカ海軍の潜水艦の攻撃を受け、大きな損失を被りました。日本側の兵士や乗組員の死者は約8000人に達しました。

背景

太平洋戦争の後半、日本は占領下にあったオランダ領東インドの油田から重要な石油を本土に確保するため、シンガポールと門司の間で「ヒ船団」と呼ばれる専用の護送船団を運航していました。この船団には、往路と復路で異なる船団番号が付けられ、ヒ71船団はその71番目の船団に該当します。

1944年4月、日本海軍の海上護衛総司令部はアメリカの潜水艦による通商破壊に対抗する方策として、大規模な護送船団の編成を進めていました。特に、ヒ船団には対潜哨戒用の空母までが投入され、その実運用が始まってからは、護衛体制も強固なものとなっていました。さらに、連合軍のフィリピンへの反攻に備え、陸軍部隊の追加輸送も行うようになりました。

ヒ71船団でも、ルソン島に配備予定の陸軍第26師団を運ぶため、シンガポールへの直行ではなく、マニラ経由の航路が選ばれました。しかし、これは往路の船舶にとっては遠回りとなり、敵軍の空襲や供給不足の危険も内包していました。

航海の経過

ヒ71船団は1944年8月8日に門司から出航し、伊万里湾に立ち寄った後、8月10日に再出航しました。船団の編成は、タンカー8隻、陸軍の特殊船3隻、客船・貨物船8隻、及び給糧艦の伊良湖を含むものであり、全体で20隻から成り立っていました。これらの船は最高時速15ノット以上での航行が可能で、多くの船には陸軍部隊と軍需物資が搭載されていました。

護衛には、軽空母大鷹や様々な護衛艦が配備され、船団指揮は第6護衛船団司令部が担いました。出航から半日後、陸軍特殊船のひとつが機関故障を起こして離脱するなど小さなトラブルはありましたが、船団は台湾と中国大陸の間の澎湖諸島に寄港しました。

その後、8月17日、ヒ71船団は馬公を出発し、アメリカ潜水艦に発見されてしまいます。最も危険な海域を通過する中で、輸送船の一隻が魚雷攻撃を受けました。これによって日本側は重大な損失を被り、船団の護衛任務はますます厳しさを増していきました。

ルソン海峡での戦闘

ヒ71船団はルソン海峡を通過する際、天候が急変し視界が悪化しました。この渦中に、アメリカ潜水艦が次々と攻撃を仕掛けてきました。命中したのは護衛艦や輸送船で、特に大鷹は大きな被害を受け、最終的には沈没しました。この事件は、船団全体に混乱をもたらし、次々と輸送船がアメリカの攻撃を受けることとなります。

結果と影響

ヒ71船団は、その名の通り日本の護送船団の中で最大規模を誇るものでしたが、アメリカ潜水艦により多くの損害を受けた結果、運営としては失敗に終わってしまいました。輸送船に搭載されていた陸軍部隊は大きな損失を被り、さらにこの失敗は日本軍にとって痛手となりました。特に、玉津丸に搭載されていた兵士たちの多くが戦死したことは痛ましい出来事でした。

本船団の教訓を受けて、日本海軍は航海計画の見直しを図り、以後の軍隊輸送には別の運用が試みられることになりました。

もう一度検索