マタイ受難曲

マタイ受難曲（Matthäus-Passion）

概要

バッハが作曲した「マタイ受難曲」は、新約聖書の「マタイによる福音書」の26章と27章に基づいており、イエス・キリストの受難を取り扱った壮大な音楽作品です。この曲は、聖句やレチタティーヴォ、アリア、コラールなどで構成されており、非常に高い音楽的価値を持っています。正式なタイトルは「福音史家聖マタイによる我らの主イェス・キリストの受難」です。

バッハの受難曲

バッハによる受難曲には、マタイ受難曲のほかに、ヨハネ受難曲やルカ受難曲、マルコ受難曲がありますが、ルカおよびマルコの作品は現存していません。特に、マタイ受難曲には二つの異なる版が存在するとされ、現在伝わっているのはその後の改訂版と考えられています。

初演と復活上演

マタイ受難曲の初演は1727年4月11日にライプツィヒの聖トーマス教会で行われました。また、この作品はその後、1829年のメンデルスゾーンによる復活上演によって再評価され、バッハの音楽が復興するきっかけとなりました。この復活上演では曲の一部がカットされ、現代的な楽器編成で演奏されました。

編成

マタイ受難曲は、オーケストラと二重合唱の形で構成されます。オーケストラはフラウト・トラヴェルソ、オーボエ、弦楽器、通奏低音が含まれ、合唱は四声部からなり、ソリストとリピエーノが混在します。バッハの時代には、女性は教会で歌うことができなかったため、すべての歌唱は男性によって行われました。

曲の構成

作品は二部構成で、通常68曲からなります。第一部では、イエスの受難が始まるまでを描き、第二部では捕縛から十字架上での死、そしてその後の出来事を扱います。作品全体は、物語性を持ちながらも、音楽的な技巧が随所に見られる精巧な構成が特徴です。

音楽的要素

「マタイ受難曲」では、聖句の唱和が非常に重要な役割を果たし、エヴァンゲリストやイエス、弟子たちの間に対話が交わされます。また、アリアや伴奏付きレチタティーヴォが用いられ、音楽的な対比や強調が巧妙に織り交ぜられています。特にイエスの言葉には、伴奏として弦楽器の和音が施され、聴衆に神聖な雰囲気を醸し出します。

重要なアリアとコラール

作品内には数多くのアリアがあり、各キャラクターの感情が豊かに表現されています。特に「憐れみ給え、わが神よ」というアルトのアリアは非常に有名で、冷静さを失ったペテロの心情を描写しています。コラールもいくつか存在し、合唱として交わされることで、作品全体のモチーフを織りなす重要な要素となっています。

現代への影響

「マタイ受難曲」は、バッハの生涯を超え、彼の音楽は後の世代においても多くの作曲家やアーティストに影響を与えてきました。現代においても、復興演奏や再演が行われ、バッハの音楽が生き続けています。本作品を通じて、音楽史の中でのバッハの位置付けを再確認することができるでしょう。

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