ミリ波

ミリ波の概要と特徴

ミリ波とは、波長が1mmから10mm、つまり周波数にして30GHzから300GHzの範囲にある電波を指します。この帯域は英語で「extremely high frequency」（非常に高い周波数）と呼ばれ、略してEHFと知られています。

特徴

ミリ波の主な特徴は、データを大容量で送信できる能力と、直進性が高いことです。しかし、降雨などの気象条件が影響し、電波の減衰が起こりやすい点がデメリットといえます。日本では60GHzの頻度が無線通信に利用されており、極めて狭い指向性を持つため、さまざまな応用が期待されています。車載レーダーや、将来的に空港で使用が進む全身スキャナーなどがその一例です。

また、長野県に位置する国立天文台野辺山宇宙電波観測所では、宇宙からのミリ波を観測しており、星の誕生やブラックホールの研究において国際的な成果を上げています。ミリ波帯の伝送には、特にNRDガイドが有名で、光ファイバーも利用されています。鉄道技術では、ミリ波の伝送が見通しが良く、トンネル内でも問題なく機能するため、トンネル内不感対策が不要という利点があります。

今日では、列車のワンマン運転時にプラットフォーム上の監視カメラの映像をミリ波で伝送し、車両内のモニターで確認するシステムが導入されています。

歴史

ミリ波の開発は1960年代から1970年代にかけて、長距離中継電話回線の逼迫に対応するために進められました。当初は導波管を用いた伝送が期待されていましたが、光ファイバーの実用化により、ミリ波の長距離伝送は実現しませんでした。特に瀬戸大橋では、当初ミリ波の導波管を敷設する計画が存在し、そのための敷設路が確保されていましたが、次第に開発は下火となりました。

1980年代以降、技術者たちは移動体通信分野に転換し、次第にミリ波は忘れられていきました。しかし、化合物半導体技術の進展や周波数帯域の枯渇が影響し、再び注目を集めることとなりました。2000年代に入ると、モノリシックマイクロ波集積回路技術が進化し、ミリ波は車載レーダーや医療分野など多様な用途で利用され始めました。特に2010年代後半には、SiGeよりも低コストでCMOS技術を使った回路が生産可能になりました。

使用例

以下は、ミリ波が利用される具体的な例です。

1. 小電力無線局: ミリ波レーダー用特定小電力無線局は1995年に、画像伝送やデータ伝送用の無線局は2000年に制度化されました。これらは特定の周波数を用いています。

2. WirelessHD: 60GHz帯を用いたAV無線伝送規格です。2009年には、パナソニックが初の対応製品を発表しました。

3. IEEE802.11ad/ay: WiGigとして知られ、60GHz帯を利用した無線LAN規格です。家庭向けマルチバンドルーターの初製品がTP-LINK Technologies社によって発表されました。

4. アマチュア無線: 国際電気通信連合によって周波数が分配され、各国でアマチュア無線用の周波数が用意されています。

5. レーダー技術: ミリ波を使用することで高い解像度を持ったレーダーが実現可能です。

6. ミリ波イメージャー: ミリ波で画像を生成する装置が段階的に開発されています。

関連項目

• - マイクロ波
• - サブミリ波
• - テラヘルツ波
• - アクティブ・ディナイアル・システム
• - 5G新無線周波数帯

これらの技術は今後の通信や観測技術の発展に重要な役割を果たすと期待されています。

もう一度検索