ヤマモモ

ヤマモモ：甘酸っぱい実と多様な用途を持つ常緑樹

ヤマモモ（学名: Morella rubra）は、ヤマモモ科ヤマモモ属に属する常緑樹です。初夏に熟す赤い果実は、甘酸っぱい独特の風味が特徴で、生食のほか、ジャムや果実酒など様々な加工食品として親しまれています。その名は、古くから日本で親しまれ、山に自生するモモという意味で「ヤマモモ」と呼ばれるようになったと考えられています。一方、中国では「楊梅（ようばい）」と呼ばれ、葉の形がヤナギに似ていることが由来とされています。

分布と生育環境

ヤマモモは、中国大陸と日本を原産とする植物で、温暖な気候を好みます。日本では関東地方以南、特に本州南部から九州、沖縄にかけての低地や山地に自生しています。海岸線や低山の乾燥した尾根など、養分の少ない痩せた土地でも生育できる強健な樹木です。そのため、痩せた土壌でも森林を形成する重要な樹種となっています。

海外においても、朝鮮半島南部、台湾、フィリピンなどに分布しており、中国では浙江省などが主要な産地として知られています。古くからヤマモモの栽培が盛んで、樹齢千年を超える老木も存在するほどです。日本でも、公園や庭園、街路樹として植栽されるなど、人里近くでも広く見ることができます。ただし、関東地方などでは、結実するまでには至らず、観賞用の花木として扱われる場合もあります。

形態と生態

ヤマモモは、高さ20メートルにも達する常緑広葉樹の大高木です。樹冠は丸みを帯び、成長は比較的遅いのが特徴です。幼木は日陰を好む性質がありますが、成長するにつれて日当たりの良い場所を好むようになります。樹皮は灰白色で滑らかですが、古くなると縦に裂け目が生じることがあります。

葉は革質で光沢があり、長さ5～12センチ[[メートル]]、幅1～2センチ[[メートル]]の倒披針形から長楕円形、あるいは倒卵形をしています。若木では葉の縁にぎざぎざがありますが、成長した木では滑らかな縁になります。葉の裏側には、芳香を放つ油点があります。

ヤマモモは雌雄異株で、3～4月頃に開花します。葉の付け根から穂状の花序を出し、小さな桃色の花を咲かせます。果実は6～7月頃に熟し、直径1.5～2センチ[[メートル]]のほぼ球形で、多数が集まって実ります。最初は黄紅色ですが、次第に鮮紅色を経て暗赤色に熟し、生食できます。表面には粒状の突起が密生し、光沢のある赤いビーズを敷き詰めたような見た目です。

ヤマモモは根粒に窒素固定を行う放線菌の一種であるフランキアを共生させており、栄養の乏しい土壌でも生育できるのが特徴です。

ホルトノキとの区別

ヤマモモは、ホルトノキと姿形が似ているため、特に本州南部以南では混同されることがあります。しかし、ホルトノキは落葉時に葉が赤く紅葉すること、そして常時、少数の葉が赤みを帯びていることから区別できます。

栽培と生産

ヤマモモは比較的日陰にも耐えますが、果実を収穫するためには、日当たりの良い場所に植えることが重要です。乾燥した土壌を好み、根は深く張ります。植栽の適期は6～7月上旬と9月中旬～10月中旬です。剪定は3～4月または6～7月に行い、伸びすぎた枝を切ることで樹形を整えます。施肥は2～3月と5月に行います。

病害虫としては、細菌性こぶ病にかかることがあります。この病気にかかると、枝や幹にごつごつしたこぶができます。

野生種以外にも、大粒で酸味が強い瑞光、大玉で酸味が弱い森口や秀光などの栽培品種があり、農作物としても栽培されています。中国では、浙江省の「丁嶴梅」や広東省の「烏酥楊梅」といった良質な品種が知られています。日本でも、赤色の実だけでなく、白や紅色の実をつける品種も開発されています。

日本では徳島県がヤマモモの栽培・生産が最も盛んで、主要な産地となっています。高知県や和歌山県も産地として知られていますが、果実は収穫後すぐに鮮度が低下するため、市場に出回る量は多くありません。

人間との関わり

ヤマモモは、大気汚染に強いことから、緑化目的の植樹に利用され、庭木や公園樹、街路樹として植えられています。葉が密生するため、建物の風よけや目隠しとしても効果があります。増やす方法は接木や取り木などがあります。雌雄異株のため結実には雄株が必要ですが、都市部では雄株も多く植栽されているため、雌株の結実率は比較的高いです。

果実は甘酸っぱく、生食できるほか、ジャム、缶詰、砂糖漬け、リキュールなどに加工されます。中国では、ヤマモモの実を使った楊梅酒が広く作られています。しかし、生の果実は日持ちが悪く、輸送が難しいという欠点もあります。

樹皮は染料として利用され、タンニンを含んでいるため、防腐、防水、防虫効果があります。古くは漁網を染めるのに用いられたほか、生薬としても利用されています。

高知県では、シイラ漬漁業にヤマモモの枝が利用されています。ヤマモモの枝を海中に垂らすことで小魚を誘い寄せ、シイラを捕獲する漁法です。

また、ヤマモモは高知県の県の花、徳島県の県木、そしていくつかの市町村の市木にも指定されています。花言葉は「教訓」と「一途」です。

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