ヨーロッパオオナマズ

ヨーロッパオオナマズ

ヨーロッパオオナマズ（学名：Silurus glanis）は、ナマズ目ナマズ科に属する大型の淡水魚です。ヨーロッパを中心に広範囲に分布しており、その生態と外来種としての問題が注目されています。

分布

本来は東ヨーロッパや中央ヨーロッパ、西アジアに生息していました。しかし、1970年代以降、釣り人によってスペインのエブロ川をはじめとする西ヨーロッパの河川に導入され、現在ではヨーロッパ各地、トルコ、シリア、北アフリカ、中国にまで分布を広げています。

生息域は、マイン川やクズルウルマク川などが特に有名で、チェルノブイリ原子力発電所事故の立ち入り禁止区域でも生息が確認されています。デンマークやフィンランドでは根絶されています。

外来種問題

ヨーロッパオオナマズは肉食性が強く、導入された地域では在来の魚類や水鳥などを捕食し、生態系に深刻な影響を与えています。例えば、タイセイヨウサケ、ウミヤツメ、アリスシャッドなどが被害に遭っています。

日本では、2023年2月に東京都内の公園で発見され、DNA鑑定の結果、ヨーロッパオオナマズであることが確認されました。本種は特定外来生物に指定されており、飼育や運搬などが禁止されています。

形態

ヨーロッパオオナマズは、口に多数の小さな歯を持ち、上顎に2本、下顎に4本のひげがあるのが特徴です。体色は緑茶色で、腹部は薄黄色または白色をしています。環境によって体色が変化し、透明な水では黒っぽく、濁った水では茶色っぽくなります。

尻びれは長く尾びれまで繋がっており、背びれは小さく鋭いです。胸びれを使って渦を作り、獲物の方向感覚を失わせて捕食します。皮膚は非常に滑りやすいです。

雌は体重1kgあたり約3万個の卵を産み、雄は孵化まで巣を守ります。水位が急激に下がる際には、雄は尾を使って卵を湿らせる行動が観察されます。

大きさ

最大で全長4m、体重394kgに達することが報告されており、世界最大級の淡水魚の一つとされています。しかし、これは極めて稀なケースで、ほとんどの個体は全長1.3mから1.6m程度です。2mを超える個体は非常に稀です。過去の記録には、体長5m、体重400kgに及ぶ個体の報告もありますが、物理的な証拠がなく、信憑性に疑問が残ります。

体長と体重の関係は、体長3mの個体で約150kg、体長5mの個体では700kg以上になると考えられています。近年確認された最大個体は、ポー川で捕獲された体長2.78m、体重144kgの個体です。

生態

ヨーロッパオオナマズは、淡水域から汽水域に生息し、幅広の頭と大きな口を持っています。夜行性で聴覚が優れており、寿命は80年ほどと考えられています。

本来は、湖や流れの緩やかな川の深みに生息し、川底や沈木の下などに身を隠します。食性は、環形動物、腹足綱、昆虫、甲殻類、魚など多岐にわたります。また、食用として池で養殖されることもあります。

人間との関係

幼魚は食用として価値があり、特に15kg以下の個体は味が良いとされています。大型個体は脂肪が多く食用には適しません。卵には毒があるため、食用には適しません。非常に大きな個体は、人間の子供を飲み込む危険性があると言われています。

ヨーロッパオオナマズが外来種として導入された地域では、生態系への影響が懸念されており、アフリカのビクトリア湖に導入されたナイルパーチの事例が参考にされています。日本では、2016年に特定外来生物に指定され、飼育や運搬などが規制されています。

出典

* Froese, Rainer and Pauly, Daniel, eds. (2006). "Silurus glanis" in FishBase. March 2006 version.

関連項目

魚類
外来種

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