ヨーロッパコマドリ

ヨーロッパコマドリ：イギリスを代表する赤い胸の小さな鳥

[ヨーロッパ]]コマドリ]は、[[スズメ目ヒタキ科に分類される、全長12～14cmほどの小型の鳥です。かつてはツグミ科に分類されていましたが、現在はヒタキ科に分類されるのが一般的です。

その愛らしい容姿と、人里近くでも観察できる親しみやすさから、特にイギリスでは国民的な人気を誇ります。公式な国鳥の指定はありませんが、国民の間では広く国鳥として認識されています。1960年代初頭には、ロンドン・タイムズの人気投票で1位を獲得するほど、イギリスの人々に愛されています。

特徴的な赤い胸と多彩な羽色

ヨーロッパコマドリの最も顕著な特徴は、その鮮やかな赤橙色の胸です。この赤い胸は、顔から胸にかけて広がり、周囲はやや青みがかった灰色で縁取られています。腹部は白色ですが、脇は褐色みを帯びています。頭部から背中にかけては灰色がかったオリーブ褐色で、腰から尾にかけては明るい茶褐色をしています。翼は黒褐色で、一部の羽にはオリーブ色がみられます。くちばしは黒く、足は暗肉色です。雌雄同色で、オスとメスを区別することは容易ではありません。

広い分布域と渡りの習性

ヨーロッパコマドリは、ヨーロッパ全域、シベリア西部、カフカース、北アフリカなどに広く分布しています。アゾレス諸島やマデイラ諸島といった大西洋上の島々にも生息が確認されています。

大部分の個体は留鳥ですが、スカンディナビア半島などの寒冷地では、厳しい冬を避けて、フランス、イベリア半島、北アフリカへと渡りを行います。渡りは主に夜間に行われ、秋には大規模な移動が見られることもあります。春の渡りは北海沿岸を経由して4月前半に集中します。古代ギリシャの哲学者アリストテレスは、渡りの概念を知らなかったため、ヨーロッパコマドリを別の鳥の冬姿だと考えていたとされています。

イギリスの個体群、特にオスの成鳥は留鳥としてイギリス国内にとどまりますが、メスの一部は冬の間南ヨーロッパへ、中にはスペインまで渡る個体もいます。

日本における記録

ヨーロッパコマドリは、日本では本来生息していません。しかし、まれに迷鳥として観察される記録があります。1990年11月には千葉県、1995年5月には山形県、1993年5月には奈良県などで目撃されています。これらの個体が野生個体なのか、飼い鳥の脱走個体なのかは断定できません。日本の鳥類目録には、迷鳥として正式に掲載されています。

生態：さえずりと縄張り争い

ヨーロッパコマドリは、繁殖期には活発にさえずります。日中から夕方まで、時には夜間もさえずる個体もおり、その声はサヨナキドリと間違えられることもあります。オスだけでなく、メスや幼鳥もさえずり、そのさえずりは個体によって様々で、標準的なさえずりパターンはありません。

イギリスでは、12月末から6月中旬、そして7月末から成鳥と幼鳥が再びさえずり始めます。6月中旬から7月中旬はさえずらず、初冬には鳴く頻度が減少します。地鳴きは高い声で「チィー」「チリリ…」といった音です。

繁殖期には、つがいを形成し、巣作り、産卵を行います。巣は地面のくぼみや木の洞などに作られ、材料には小枝、枯葉、根、草などを使用します。卵は通常5～6個で、メスのみが抱卵します。雛は2～3週間で巣立ちますが、成鳥の羽色になるまでには数ヶ月かかります。6月には2回目の繁殖を行うこともあります。

イギリスでは人家近くの林に生息し、警戒心が弱いため、人にも近づいてきます。ミミズなどの餌を探して、土を掘っている人の近くにもよく現れます。一方、大陸ヨーロッパの個体群は森の中に住み、警戒心が強いとされています。餌はミミズなどのほか、果実なども食べます。

冬の間は、オスとメスは別々の縄張りを持つため、縄張り争いが激しく、時には相手が死ぬまで攻撃を続けることもあります。生後1年間の死亡率が高く、平均寿命はわずか1.1年ですが、3年以上生きる個体も稀にいます。最長寿命記録は12年です。

分類と亜種

ヨーロッパコマドリには複数の亜種が知られています。それぞれの亜種は、分布域や形態に若干の違いがあります。特にカナリア諸島に生息する亜種は、遺伝的にも形態的にも基亜種と大きく異なるため、別種とする説もあります。

名前と伝承

ヨーロッパコマドリは、英語では古くから「ロビン」と呼ばれています。これは、特徴的な赤い胸に由来する名前です。多くの言語で、赤い胸を意味する名前がつけられています。日本語名は、コマドリに似ていることからつけられたと考えられます。

ヨーロッパコマドリは、多くの民話や童謡に登場します。「誰がこまどり殺したの？」や「森のふたりの幼い子ども」など、有名な童謡にも登場します。赤い胸の由来についても、様々な伝承があります。

ヨーロッパコマドリは、その愛らしい姿と、人々との親近感から、古くから人々に愛され、様々な文化の中で重要な役割を担ってきた鳥なのです。

もう一度検索