ロバート・ブロック

ロバート・アルバート・ブロック：ホラー文学史に名を刻む巨匠

ロバート・アルバート・ブロック (1917年4月5日 - 1994年9月23日) は、アメリカ合衆国イリノイ州シカゴ出身の小説家、SF作家、脚本家である。銀行員と社会活動家の両親を持つドイツ系ユダヤ人家庭に生まれ、シカゴ郊外で幼少期を過ごす。8歳の頃、ロン・チェイニー・シニア主演の映画『オペラ座の怪人』に衝撃を受け、ホラー作品への関心を抱き始める。

10歳で読み始めたパルプ雑誌『ウィアード・テイルズ』は、彼の創作活動に多大な影響を与えた。特に、同誌に作品を発表していたハワード・フィリップス・ラヴクラフトの作品に魅せられ、1933年頃にはラヴクラフトにファンレターを送る。ラヴクラフトから小説執筆を勧められ、17歳で『ウィアード・テイルズ』に『修道院の饗宴』を発表し作家デビューを果たす。

ラヴクラフトとは27歳差もあったが、親交を深め、互いに作品の中で相手をモデルにした登場人物を殺し合うほどだったという。ラヴクラフト・サークルの一員として、クトゥルフ神話にも貢献し、「妖蛆の秘密」などの魔導書にも関与している。しかし1937年、ラヴクラフトの死はブロックに大きなショックを与え、その死を悼むとともに、ラヴクラフトの作品が正当に評価されていないことに落胆を覚えたという。

ラヴクラフトの死後、ブロックは『ウィアード・テイルズ』だけでなく、『アメージング・ストーリーズ』などにも作品を発表するようになり、作家としての活動を本格化させる。1939年には、ミルウォーキー市長選挙に出馬したカール・ザイドラーの選挙運動にも関与し、選挙広告やスピーチの作成に関わっていたという。

ブロックは、初期にはラヴクラフトの影響を強く受けたコズミック・ホラー作品を多く発表していたが、次第に独自の作風を確立していく。切り裂きジャックをモチーフにした作品も多く手がけ、『ウィアード・テイルズ』1943年7月号に発表された『切り裂きジャックはあなたの友』はその代表例である。

1959年、ブロックの代表作である『サイコ』が発表される。新聞記事で知った実話を基に、エド・ゲインを参考にキャラクター造形を行い、サイコパスの青年とシャワー殺人を融合させた衝撃的な作品となった。この作品はアルフレッド・ヒッチコックによって映画化され、大ヒットを記録。しかし、後のシリーズ作品には関与しておらず、ブロックが提出した脚本も却下されたという。

1960年代にはハリウッドに移住し、テレビや映画の脚本も手がけるようになるが、小説執筆の時間は減少していく。二度結婚し、1994年、77歳で癌によりロサンゼルスで死去。

ブロックの作品は、初期のコズミック・ホラーから、犯罪小説、心理的なアプローチの作品へと変化していく。短編、長編、脚本など幅広い分野で活躍し、数多くのアンソロジーに作品が収録されている。代表的なクトゥルフ神話作品には『星から訪れたもの』『無貌の神』『アーカム計画』などがある。パルプ時代を知る作家らしく、歯切れのよい文体と、視覚的にインパクトのある残酷描写が特徴的である。

数々の賞を受賞しており、1959年には『地獄行き列車』でヒューゴー賞短編小説部門を受賞、1975年には世界幻想文学大賞生涯功労賞を受賞、1995年にはブラム・ストーカー賞最優秀中編賞を受賞している。コリア・ヤングという筆名でテレビドラマ『鬼警部アイアンサイド』の原作も提供した。

ブロックの作品は、多くの言語に翻訳され、世界中で読まれている。彼の作品は、ホラー文学史に大きな足跡を残し、現代のホラー作家にも多大な影響を与え続けている。 彼の多作さと、ホラー小説、SF小説、そしてミステリ小説といった様々なジャンルへの挑戦は、後世の作家たちに刺激を与え続けている。彼の創造性は、今もなお人々の心を掴んで離さない。

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