中道善博

中道善博：水上の人間国宝、その軌跡

中道善博（なかみち よしひろ）は、1949年3月20日に徳島県三好市で生まれました。幼少期を過ごした祖谷は、大歩危小歩危で知られる渓谷地帯です。息子が山奥から高校へ通うことを案じた父の決断で、一家は中道が中学3年生の時に鳴門市へ移住しました。この移住が、後に中道が競艇選手となるきっかけだったと本人は語っています。

競艇選手への道

鳴門工業高校に進学するも、勉強嫌いだった中道は高校2年生で家出。大阪で競艇選手の高収入を知り、競艇選手を志すようになります。養成所の試験に合格した中道は、高校を中退して養成所に入所。厳しい訓練を乗り越え、1966年に選手登録を果たしました。養成所時代は、競艇場を転々としながら訓練を行う最後の世代でした。同期には黒明良光、村上一行など、後にSGタイトルを獲得する選手が多数おり、「花の22期生」と呼ばれました。

インコースへのこだわり

デビュー後、1年間C級に在籍した後、A級に特進した中道は、若手時代は麻雀に熱中していました。しかし、1975年、「1年だけ頑張ってみよう」と一念発起し、インコースに徹底的にこだわる戦略に転換します。当時、3コースや4コースを狙う選手が多い中、インコースにこだわり続けた結果、「インの中道」という異名を得るほどになりました。特に、インからの旋回技術は「天下一品」と評され、ファンを魅了しました。同年には、鳴門で行われた四国地区選でGI初優勝を遂げ、SG優勝への足がかりとしました。

SG制覇と伝説

1979年、中道は笹川賞競走（現在のボートレースオールスター）でSG初優勝を果たし、一躍トップレーサーの仲間入りを果たしました。翌年には同レースを連覇。その卓越した技術は「ゼンパク・マジック」と呼ばれ、競艇界にその名を轟かせました。1992年には、12年ぶりに笹川賞を制覇。1995年のモーターボート記念競走（現在のボートレースメモリアル）では、同郷の烏野賢太、濱村芳宏とのワンツーフィニッシュを飾るなど、数々の名勝負を繰り広げました。

特に語り継がれるのは、1995年の賞金王決定戦での植木通彦との激闘です。最終コーナーまで勝負が決しないという稀に見る大接戦を制しました。しかし、本人はこのレースを「ミスのしあい」と振り返っています。1996年の総理大臣杯競走では、完璧なイン速攻で7度目のSG制覇を達成。インタビューで引退を発表し、多くのファンを驚かせました。その後も、SG・GI戦線で活躍を続け、1998年には地元の鳴門で最後のGI制覇、賞金王シリーズ戦で最後のSG制覇を飾りました。

1999年、中道は現役を引退。通算1954勝という記録を残し、20世紀中に現役生活を終えました。

引退後

引退後は、JLC解説者やスポーツニッポン評論家として活動し、競艇界に貢献。また、ボートレース鳴門では、トークイベントや「中道善博記念館」と題したイベントも開催されました。2010年には、「中道善博杯争奪」が開催され、その初代優勝者となった茅原悠紀は、後にSGグランプリを制覇。中道は茅原を「忘れられないレーサーの一人」と語っています。2007年には、ボートレースの殿堂入りを果たしました。

競馬への造詣

中道は競馬ファンとしても知られ、1994年の賞金王決定戦で優勝した際には、翌日の有馬記念の予想を的中させたというエピソードもあります。競馬中継に夢中になって競艇誌の取材に遅刻したこともあるほどです。

まとめ

中道善博は、その卓越した技術とコース取り、そして人間味あふれる人柄で、多くの競艇ファンを魅了した伝説のレーサーです。引退後も、競艇界への貢献を続けており、その功績は永遠に語り継がれるでしょう。

獲得タイトル

※太字はSGレース

1975年 - 四国地区選手権競走（鳴門）
1976年 - 鳴門開設23周年記念競走
1977年 - 四国地区選手権競走（鳴門）
1979年 - 第6回笹川賞競走（住之江）、四国地区選手権競走（鳴門）、住之江開設23周年記念競走、蒲郡開設24周年記念競走
1980年 - 第7回笹川賞競走（住之江）、徳山開設27周年記念競走
1981年 - 大村開設29周年記念競走
1982年 - 鳴門開設29周年記念競走
1983年 - 福岡開設30周年記念競走
1985年 - びわこ開設33周年記念「秩父宮妃記念杯競走」
1986年 - 戸田開設30周年記念競走
1987年 - 鳴門開設34周年記念競走
1988年 - 児島開設36周年記念競走、蒲郡開設33周年記念競走
1989年 - 三国開設35周年記念競走、びわこ開設37周年記念「秩父宮妃記念杯競走」
1992年 - 第19回笹川賞競走（住之江）、第2回グランドチャンピオン決定戦競走（蒲郡）
1993年 - 第8回賞金王シリーズ戦（住之江）、鳴門開設40周年記念競走
1994年 - 第9回賞金王決定戦競走（住之江）、鳴門開設41周年記念競走、びわこ開設42周年記念「秩父宮妃記念杯競走」
1995年 - 第41回モーターボート記念競走（三国）
1996年 - 第31回総理大臣杯競走（平和島）、尼崎開設43周年記念競走、芦屋開設44周年記念競走
* 1998年 - 第13回賞金王シリーズ戦（住之江）、鳴門開設45周年記念競走

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