中院通村

中院通村（なかのいん みちむら）

中院通村は、江戸時代前期に活躍した公卿であり、また優れた歌人でもありました。彼は権中納言・中院通勝を父に持ち、官位は正二位・内大臣にまで昇進しました。後水尾天皇のお気に入りの側近であり、幕府に対しては反幕府派の立場を取っていました。細川忠興とは義兄弟の関係にあります。通村は、その唐名から中院内府とも呼ばれています。

経歴

通村は慶長5年（1600年）にわずか13歳で叙爵を受け、その後、右近衛中将や参議を経て、元和3年（1617年）に正三位・権中納言に就任しました。その後も昇進を続け、元和6年（1620年）には従二位に昇叙され、元和9年（1623年）に武家伝奏に任命され、寛永6年（1629年）には権大納言にまで上り詰めました。

後水尾天皇の信任を受け、江戸に頻繁に出向いては朝幕間の調整に尽力しました。しかし、寛永7年（1630年）には、天皇が突如として興子内親王に譲位するという事件に関与し、武家伝奏としてこの事を幕府に報告しなかったために罷免されるという苦境に立たされました。

その後、寛永12年（1635年）には江戸で幽閉されたものの、天海の懇願によって赦免され、京へ戻ることができました。正保4年（1647年）には内大臣に就任しましたが、その後すぐに辞任し、承応2年（1653年）に66歳で亡くなりました。

歌人としての評価

通村は古今伝授を受けた歌人として非常に高い評価を受けており、特に後水尾天皇の御製に対する添削を任されるなど、その地位は確固たるものでした。彼が著した家集『後十輪院内府詠藻』には、1600余首もの歌が収められています。しばしば天皇や中和門院に対し『源氏物語』の進講を行うなど、父親の通勝から受け継いだ源氏学の知識も存分に生かしていました。

また、通村は世尊寺流の優れた書家としても知られ、絵画にも造詣を深めており、義父である細川幽斎に劣らない教養を持った人物でした。彼の記録として残る『中院通村日記』も、彼の多彩な才能を裏付けています。

逸話

一つの逸話として、徳川家光から古今伝授を受けるよう頼まれた際に、通村はこれを断わったことが挙げられます。強い信念を持った彼は、後水尾天皇の譲位を幕府に伝えなかった理由について、京都所司代の板倉重宗から問われた時に、「洩らすな」という天皇の勅命があったと答えました。重宗は「内々に知らせるべきだった」と主張しましたが、通村は「天子の臣である私たちが、関東の臣に知らせることはできない」と抗弁し、重宗はこれに言葉を失ったと言われています。

代表的な歌

通村の作品には以下のような代表的な歌があります：

• - 朝露も こぼさで匂ふ 花の上は 心おくべき 春風もなし
• - あつからぬ ほどとぞいそぐ のる駒の あゆみの塵も 雨のしめりも
• - 一夜あけて 四方の草木の めもはるに うるふ時しる 雨の長閑さ

系譜

• - 父：中院通勝（1556-1610）
• - 母：細川幽斎の養女（一色義次の娘）
• - 正室：瑞亭院（溝口秀勝の娘）
• - 男子：中院通純（1612-1653）
• - 女子：清閑寺共綱室

彼の生涯や詩における業績は、今なお多くの人々に評価され続けています。

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