大塚ギチ

大塚ギチ：ゲームとアニメを愛した編集者、デザイナー、ライター

大塚ギチ（1974年1月15日 - 2019年4月）は、ビデオゲームとアニメーションの世界で独自の足跡を残した編集者、デザイナー、ライターです。宝島社でゲーム雑誌の編集者としてキャリアをスタートさせ、その後独立。有限会社アンダーセルを設立し、代表取締役社長として活躍しました。また、自主出版レーベル〈bootleg! books〉を主宰し、独自の表現を追求しました。

生い立ちと初期のキャリア

北海道恵庭北高等学校出身の大塚は、幼少の頃からゲームに熱中し、札幌・すすきののゲームセンター「スガイディノス札幌中央」の常連でした。10代の頃にはケンタッキーフライドチキンでアルバイトをしており、店長代理を任されるほどでした。鶏肉の部位にも詳しく、調理済みのピースから鶏の形を再現できたというエピソードも残っています。

漫画家と編集者になることを夢見ていた大塚は、1991年にゲーム雑誌『HiPPON SUPER!』の編集者としてJICC出版局（後の宝島社）に入社。同誌では、中古ゲームソフトの流通価格を掲載するコーナーを担当し、全国規模で中古ゲームソフトの流通に携わっていた経験と知識が評価されての採用でした。3年後の1994年に宝島社を退職し、フリーランスとしての活動を開始します。

フリーランスとしての活躍

1995年11月には、アーケードゲーム『バーチャファイター』のムーブメントを追ったノンフィクション小説『トウキョウヘッド19931995』を出版。1999年7月から2000年3月にかけては、ラジオ関西（AM KOBE558）でラジオ番組『サブカルチャー倶楽部』の制作とパーソナリティを務めました。同時期に、西島大介やコヤマシゲトらと有限会社アンダーセルを設立し、活動の幅を広げていきます。

2004年2月からは、アニメーション作品について関係者と語るトークライブシリーズ『UNDERSELL presents "bootleg!"』を開始。2006年には、押井守監督の実写ドラマ『女立喰師列伝 ケツネコロッケのお銀』に、フリールポライター「大塚ギチ男」役で出演するなど、メディアを問わず活躍しました。

自主出版レーベル「bootleg! books」の設立と晩年

2012年8月、大塚は自主出版レーベル「bootleg! books」を設立し、17年ぶりとなる書き下ろし小説『THE END OF ARCADIA』をネットで連載。大手ゲームメディアが取り上げなくなったアーケードゲーム業界、特に『バーチャファイター』のプレイヤーたちの人間模様を描くことに情熱を注ぎ、ゲームセンターでの取材を続けました。

2015年3月には、『TOKYOHEAD RE:MASTERED』が上田誠（ヨーロッパ企画）の脚本・演出で舞台化され、『TOKYO HEAD 〜トウキョウヘッド〜』として上演されました。2016年8月には、三鷹市に事務所兼セレクトショップ「bootleg! store」をオープンしましたが、2018年8月に事務所移転に伴い閉店しました。

2018年7月13日、脳卒中に伴う転倒事故により頭蓋骨を骨折し、病院に緊急搬送されました。意識不明の状態が2週間続いた後、意識は回復しましたが、入院療養のため休業。2019年5月4日、死去が公表されました。検死の結果、死因は多臓器不全による病死と判明しました。45歳という若さでした。

人となりと功績

大塚ギチは、「編集者は執筆もデザインも編集も全部できなきゃダメ」という信念を持っていました。駆け出しだったイラストレーターのコヤマシゲトに印刷工程を任せるなど、人材育成にも力を注ぎました。

独特な運営で知られるゲームセンター・ミカドの店長・池田稔と親交が深く、同店のイベントやトークライブの企画・構成を数多く手がけました。大塚の訃報は、ミカドのTwitterで最初に伝えられました。

大塚ギチは、その独自の視点と深い知識、そして情熱を持って、ビデオゲームとアニメーションの世界に多大な影響を与えました。彼の作品と精神は、これからも多くの人々に影響を与え続けるでしょう。

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